「ジェーン・ドゥの解剖」

ジェーン・ドゥの解剖

2016年のアメリカ映画「ジェーン・ドゥの解剖」。突然運ばれてきた美女の死体には、秘密があった…という内容は一見ありふれているようにも思えますが、死体を検死する施設を舞台に、親子の検視医と死体だけのほぼ3人劇で進みます。舞台にしてもすごくおもしろそうだと思うほど、脚本が素晴らしい。しかし、この描写は映像でなければできない!と感じる点も多く、とにかく映画としての完成度が高い印象。監督は「トロール・ハンター」のアンドレ・ウーヴレダル。食わず嫌いしていたのですが、「トロール・ハンター」見ようかな。

ネタバレ

ジェーン・ドゥの解剖1

父のトミーと息子のオースティンは、家業である検死官の仕事に没頭していた。
オースティンの彼女であるエマは、デートの約束をすぐにすっぽかすオースティンに怒りながらも、興味本位でずかずかと検死用の部屋に入ってくる。父は快く、彼女に死体を見せる。その死体の手には鈴がある。それがなったら、まだ生きているという証拠なのだ。
息子はこの家を出ようと考えているが、それを父に言い出せないままだ。
そこに、ジェーン・ドゥ(※身元不明の女性のことを、アメリカではこう言います)が運ばれてくる。

彼女の遺体は目が白濁しているのに、死後硬直はない。ウエストが異常に細い。手首と足首が折れている。外傷はないが、舌がちぎられたようにない。泥炭が爪や髪についている。彼女は売春がらみで、手足を折られていたのだろうか?

その鼻からは血が出てきて、ハエが這い出す。口からは糸が出てくるし、膣には傷がある。

検死中、親子が流しているラジオに雑音が入る。解剖した瞬間、血が噴き出してくる死体。肺はタバコを毎日10箱吸わなければならないくらい、真っ黒だ。心臓も傷だらけだし、この死体はおかしい。

死体を入れておくロッカーの扉が、突然開く。

北部にしかない朝鮮朝顔のタネが検出されるし、体内からは抜いた歯を紙に包んで飲ませた痕がある。儀式なのか、生贄なのか。誰が彼女の手足を拘束し、舌を切り、毒を飲ませ、内臓をズタズタにしたのだろう。

突然、父がかわいがっていたネコが、死にかけdえ見つかる。父は、ネコを救うため、その首を折ってしまう。外では大雨が降り注ぎ、洪水警報もあったようだ。

親子は解剖を進めるが、停電に見舞われる。
外に出ようとしても、出ることができない。地響きが聞こえてくる。そして、死体が持っている鈴の音が響いてくる。
あの死体のせいだ。
父の手には、解剖中についた謎の傷もある。父のいる部屋の隅に、女の裸足が見える。1人だけ閉じ込められた父は、何かに転ばされる。

死体の腐敗が進んでいる。それだけではないが、火葬をしようとする2人。
しかし、ドアが閉じ、足がのぞく。死体がこっちを見ている。
目を縫い付けられた死体。口を開けると、それは粘っこく広がっていく。

しかも、死体が発火する。慌てて消し止めようとするが、勝手に火は消えていく。しかも、死体自体は燃えていない。

エレベーターに乗り、移動しようとする親子。しかし、鈴の音が近付いてくる。顔のない死体を倒す父だが、次の瞬間、それはエマの死体になっている!
妻のことを思い出して、後悔している父。

父が連れ去られそうになるが、それを助けるオースティン。ジェーン・ドゥの脳を調べるが、彼女が死んでいないとわかる父。心臓はないが、彼女を生かしている何かがある。
そして、歯を包んでいた布から、セーラムの魔女裁判の存在が浮かび上がってくる。

親子は推測する。子の死体は、無実の罪で殺されたのだ。
自分が受けた拷問や解剖の痛みを、他人に味合わせようとしている。だから、彼らを殺さない。復讐だから。これが彼女の儀式だから。
たまたま居合わせただけでも、彼女のターゲットになる。彼女は今も苦しんでいる。
「私は味方だ、息子を傷つけないでくれ。息子を助けたい」
死体に囁く父。

父は苦しみ出す。一方、ジェーン・ドゥの解剖の痕はなくなっていく。傷は閉じ、血も引いていく。父の手は砕かれ、関節が歪む。父の目が濁り、ジェーン・ドゥの目は元通りの色になっていく。父は息子に懇願し、オースティンは自分の手で苦しむ父を殺す。

オースティンは取り残されるが、外で保安官のバーグが木を切ってくれていることに気が付く。しかし、途中からバーグの声がおかしくなっていく。それは、ジェーン・ドゥからのメッセージのように、彼を脅しにかかる。気が付くと彼の背後には、死んだはずの父がいる。驚いたオースティンは、踊り場から落下して死亡する。

本物のバーグが取り調べをしている翌朝。その夜は雨なんて降っていなかった。
彼らは真相を突き止めようとするが、まったくわからない。ジェーン・ドゥだけ、大学病院に運ぶことになった。

死体を運ぶ車。カーラジオが、昨日、検死室で流れていた曲を流し始める。
そして、死体の足指がピクリと動く。

感想

最後、ジェーン・ドゥがエマを自分の死体としてすりかえたのかな?と思ったのですが、エマの死体がピクピク動く意味がわからないから、たぶん違うと思う。
(すみません、2人とも美人過ぎて裸になると見分けがつかないのよ)
このお父さんと息子の関係性、嫁を亡くしてすりへっている父、そこから巣立ちたい息子の関係もなんだか好き。

また、ジェーン・ドゥの思惑がまったくわからないところ、最後まで残酷なところもホラー映画らしくていいですね。