「ジェサベル」

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2014年のアメリカ映画「ジェサベル」。もうオカルト映画はお腹いっぱい!と言いたいところではあったのですが、なかなかの良作だったのが嬉しい。製作陣が手掛けた「インシディアス」も「パラノーマル」シリーズもさほどハマっていない私でも楽しめたのは、POV要素もあからさまなオカルト要素(悪魔召喚の儀式やら、悪魔に魅入られた少女やら)も排除したからでしょうか。
監督は「ソウ6」と「ソウ ザ・ファイナル」の人なんだそう!見る前から嫌な予感がビンビン来ておりました。

・自分が生まれる前に死んだ母親からのビデオを発見する娘。そのビデオを通じて、おかしなことが主人公の周辺で起こりだす
・親子関係も悪く、恋人とも死別。孤独な主人公
・主人公自身は事故の後遺症で足が悪く、動くことができない
・たびたび姿を現す謎の女幽霊。彼女の正体とは…?

ビデオテープがキーアイテムとして出てくるところは「リング」を思わせてすごくぞくぞくするし(やはり、ビデオテープの怖さは別格です)、物語の真相はともかくとして人の「悪意」を何の罪もないのにぶつけられ続ける運の悪い主人公の姿には、ホラーの概念そのものを感じられる。
金髪でかわいくて胸が大きいというタイプの主人公ではなく、ただひたすら孤独で、親とも関係性が悪く、故郷でも居心地が悪い。そう感じているところは「キャリー」的でもありますね。

しかしながら、
・吹き替えがあまり良くない(声優さんには申し訳ないのですが、主人公の声が甘ったるすぎて大人だと感じられない)
・ややストーリーがムチャクチャである
・とりあえず、ジャケットとストーリーは無関係(髪の毛に関係がある話でも幽霊でもない)
という欠点もありますが、それをもってしてもコワイ。「V/H/S」シリーズを思い出した。

あらすじ

「パラノーマル・アクティビティ」「インシディアス」のスタッフが贈るオカルト・ホラー。事故で車椅子生活を余儀なくされたヒロインに、次々と謎の恐怖が襲いかかる。主演は「プリデスティネーション」で注目されたオーストラリア期待の若手女優セーラ・スヌーク。監督は「ソウ6」「ソウ ザ・ファイナル 3D」のケヴィン・グルタート。事故で夫とお腹の子を失い、自身も車椅子生活を余儀なくされたジェシー。失意の中、父が暮らす古びた一軒家に身を寄せる。そこで亡き母が遺したビデオレターを発見したジェシー。ところがビデオの中の母は、あまりにも不吉な予言をしていて…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=351628

ネタバレ

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何と冒頭は、「ババドッグ」と同じく車の横転シーンから始まります。ホラー映画では、車の横転事故がある場合にだいたい、横転する車の中で見せるスローモーション演出やら、運転席を横から撮影して車がぶつかる瞬間を見せる演出やらがありますね。飽きないのか。ごろんごろん転がる車。

とりあえず、主人公のジェシーはカレと同棲寸前で引っ越しをしている時に交通事故に巻き込まれ、カレ死亡。自身も車イスでリハビリすることになります。手術中のシーンでは「(相手の)頭蓋骨が体に刺さってる!」という医師のセリフもあります。恋人の骨が自分に刺さって致命傷になりかけるっていうのも、なかなか切ないですね。

恋人を失い、連絡を絶っていた父に迎えに来てもらうジェシー。母とは死別しており、粗野な父とは疎遠になっていた彼女ですが、生家に戻るしかありません。母親が使っていた部屋を使うことになるジェシー。元恋人のプレストンとも再会します。

母の部屋を漁っていて、ジェシーはビデオテープを発見。なんと、母が生前に娘に向けて撮影したビデオテープでした。 「お誕生日おめでとう」と言う言葉で始まるテープは、「私はあなたを見守っている。いつまでもよ」という言葉で続きます。モーセという知人に教わったというタロットカードで娘の運命を占う母。
・転換期である
・生涯、街を離れないだろう
・大量の水が見える。(ちなみにジェシーは泳げませんが、家のすぐそばに湖があります)
・あなたは1人ではない
このあたりで父親が戻ってきてビデオを割ってしまい、「二度と嗅ぎまわるな!」と車イスまで湖に投げられます。

夜、夢を見えるジェシー。
「いい子ね、早く寝なさい」という母。
手術室で寝かされているジェシー。
母が布団をかけにやってくる。
握りこぶしのなかに入れた砂を床に落として、絵を描いている男(顔がやけどでただれている)が登場する。
ジェシーにかけられた酸素マスクの中から、血があふれでる。
※伏線ぽいですが、男の存在以外はイメージ映像みたいなもんでした

翌朝。
車イスが戻ってきています。謝るパパ。

湖の向こうでチカチカしている何かが気になるジェシー。もう1本ビデオを発見しますが、「教会のそばにいる友人モーセ」の存在が語られ、母は「死が見える」と口走ります。

理学士のロザウラが登場。ジェシーのリハビリを手伝いに来ますが、彼女を風呂に入れたところで「ちょっと席を外します」とか言い出して姿を消します(危なくないか?)。お風呂に入っているジェシーの浴槽の中に、現れる女の幽霊。彼女はジェシーのブレスレットを掴もうとしますが、彼女の鼻歌で驚いてひるみます。

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しかし、ギャーーーー!という女幽霊の叫び声から、唐突に泥レスがスタート。足が悪いジェシーは逃げられず、いつの間にか茶色く変化している浴槽の水で滑りながら女幽霊にボコボコにされます。しかも、女幽霊に黒いゲロを大量にぶっかけられるというすさまじい展開。
と、気が付いたらそこはいつもの浴室で、父が彼女を揺さぶっています。理学士を追い返す父(当然か)。

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実は、母親は死ぬ前に脳に癌ができていた。そのせいで、以前の母親とは違う行動をたくさんするようになり、ビデオにもそんな姿が映っている。だから見てほしくないという父ですが、それでも納得できないジェシーを戒めるため、ビデオを燃やそうとする父であります。しかし、外のドラム缶にビデオをくべたものの、火事に巻き込まれ、自分が燃えてしまった父。ジェシーはやはり、父を助けに行くことができません(足が動かないから)。

父の葬式で、元カレプレストンと改めて会話をするジェシーです。
しかし、夢の中で登場した男(顔にやけどを負った男)が葬式に来ているのを見つけ、倒れてしまいます! 彼女を家まで運んだプレストンですが、彼にも何か迫る影が……しかし、目を覚ましてそれを回避します。

お出かけする2人。同級生の噂話をしながら、自身たちの話へ。実はプレストンとジェシーは以前恋人同士だったのですが、故郷を捨てたジェシーは彼とも自然消滅。既にプレストンには妻子がいることもわかります。しかし、彼の心の中には相変わらずジェシーがいるようで……??

ジェシーに、ビデオを見ることをとめるプレストン。たしかに彼女はひとりきりですし、精神が不安定になっても容易に助けてもらうことはできない状況です。

お酒を飲もうとするも、コップにゴキブリがいて思わず割ってしまったり、ひとりきりの夜を持て余したりとつまらない夜。

やはり、彼女はビデオを再生してしまいます。しかしそこには、若かりしパパとママの幸せな日々が映っていました。新婚時代の映像やラブラブのピクニック、そして妊娠発表。しかし、タロットの結果を見ながら母が泣いている映像が挿入されます。「あなたは死んでる……あなたはもう、死んでるのよ……」 という不吉な言葉と共に、ドーン!と大きい音がするのでさすがにびっくり。
その夜、湖の向かい側で何かが燃えているように光っています。

さらに、誰もいないのに足音が聞こえたり、車イスが勝手に動いたり、真っ黒な髪の毛の少女幽霊が現れたりと、もうおおっぴらにオカルト現象が起き始めます。
そして、割れたカガミの中からもう1本、ビデオが出てきます。

翌朝やってきたプレストンの力を借り、ボートで向こう岸に渡るジェシーたち。湖の中から手が浮かび上がってきますが、それは単なる人形(とはいえ、それは明らかに人間の手ではあるのですが……)。
ジェシーが見つけたのは、お墓でした。しかもそこには「ジェサベルの墓」という、彼女と同名のお墓!周囲にはニワトリの死骸と花が供えてあります。棺桶を暴くと、そこには大量の水と小さな骸骨が。これは彼女の双子の姉妹なのか?それとも……??

ジェシーをここにおいておけない!と、警察に骸骨を渡した後に自分の家に連れ帰るプレストン。しかし激おこの嫁・サムがおり、ソファに寝かせてもらうものの、居場所はない感じです。

さらに翌朝。昔、家のお手伝いさんだったデイヴィスさんのもとを訪れるジェシーとプレストン。しかし、彼女はパニックを起こし(もともとアルツハイマーっぽい)「ジェサベルは報いを受けるとモーセに伝えて!」と絶叫します。

どうやらこのあたりの黒人はブードゥ教の信者であり(という設定もどうなのでしょうか)、プレストンは「ブードゥによると、憑依は悪いことではないんだ」「このあたりでは常識さ」とキリッキリッと語りだします。

そして、モーセを探すも彼は既に亡き人であり、河部にある祭壇には写真が飾られています。そこに、ジェシーの父の葬儀にも顔を出していた黒人男性たちが5人くらい登場し、「失せろ」と怒りだします。プレストンが歯向かいますが、ボコボコにされて終了。

傷だらけのプレストンはジェシーに「今でも君のことを忘れられない」ととうとう言ってしまい、2人は手を握り合います。
逃げるために荷物をまとめるジェシーを、早々と家から連れ出すプレストン。しかし、プレストンが車の中にお姫さまだっこで連れてきたのは件の女幽霊!女幽霊の猛アタックにタジタジのプレストンは、車から逃げようとしますが、ケガをしてしまいます。プレストンはこの後救急車で運ばれた模様。

まさにひとりきりになったジェサベルに、女幽霊が話しかけます。「私は生まれてきて、殺された」。そして警察から骸骨のDNA鑑定の結果が届きます。骸骨は「黒人の赤ん坊」のものだったことがわかった瞬間、また新しいビデオがこれ見よがしに見つかります。

「あなたが誰か教えてあげる」

そしてジェシーは真実を知るのであります。

・ママは子どもを産むために化学療法を拒んだ
・ママはモーセと浮気していた。子どもはモーセの子どもだった
・出産したら、黒人の赤ちゃんが生まれた
・モーセにタロットを習ったと言ったのも「パパにばれたら殺されちゃうかも」と発言したのも、浮気を暗示していた(パパは占いとか嫌いなのよね、という意味ではなかった)
・ママもそのせいで自殺する
・パパ、赤ちゃんを殺してしまう。そしてその死体を埋葬する
・罪を隠すために、白人の養子をもらってきた。これがジェシー
・死んだ子供は、モーセの属していた宗教により、ハイチのしきたりで埋葬された
(だからニワトリの死骸があった)
・タロット占いで占われたのは死んだ娘のことだった。
「生涯この地を離れない」⇒死んでるから。「大量の水が見える」⇒湖にひたって死んでるから。

つまり、彼女の夢に出てきた顔のただれた男はモーセだったのだ。だが、彼女の母が幽霊となって出てくる目的がわからないジェシー。
「私は悪くない!」そう主張するも「すべてのジェサベルは、報いを受けるのよ」としか言わないママ。そして、モーセの幽霊も登場します。

車イスに固定され、そのまま湖に突き落とされるジェシー。ガボガボしていると、そこに女幽霊(つまり、殺された黒人少女。モーセとママの間に生まれ、幽霊だけれど年を取った姿で登場していた)が泳いでやってきます。
助けてくれるのか!と思う気や、ジェシーのアクセサリー(ママのもの)をとり、額にキスをして浮かび上がっていく女幽霊。ジェシーはそのまま、湖の中で死んでしまいます。水面に浮かび上がった瞬間、女幽霊はジェシーの姿に変化しています。

そこにプレストンがやってきて、2人は熱烈なキス。「家の中に連れて行って」とねだります。「ミス・ロラン」と警察に呼び掛けられるジェシー(中身は幽霊)ですが、微笑みながら「私はジェサベル」と呟きます。

ジェシー本人は悪くないのに、「すべてのジェサベルは報いを受ける」(つまり、最後の生者として父の犯した罪を償えということなのか?)と贖罪を求められるのはおや?と思いつつも、ホラーらしいのでいいかという気持ちになる。
幽霊が生者に対して抱いている悪意の強さでいえば、昨今のオカルト映画のなかでも随一ではないでしょうか。しかしジェシー(とプレストンの嫁)以外、皆ダメ人間すぎないか。