「ネスト」

nest

2014年のスペイン/フランス映画「ネスト」を見ました。ケヴィン・コスナーのほうの「ネスト」とは全然別のお話。キャッチフレーズが「『エスター』を凌ぐ衝撃のラスト!!」「この女、狂ってる」というものなのですが、「エスター」とは全然別物の映画という印象なので、何言ってるんだコイツと思いました。もしかして「ミザリー」と間違えたのか?

・信仰心が強く、男性に免疫がない。そして、恐ろしい過去を抱えている姉
・姉とは正反対で、かわいらしく男性にモテるタイプの妹(現代っ子)
・ケガをした男性を家の中に入れるも、好意を持ってしまい、監禁するためにエスカレートしていく
・死んだ父がたびたび登場し、彼女の行動を激しく束縛する

姉の狂気はもちろん異常性に満ちたものなのですが、諸悪の根源は別なので、姉が全部悪い!とは思えないのであります。どちらかというとカニバリズム映画「肉」にも通じるものがありますね(姉妹の歪んだ愛情、父の逸脱した束縛など)。

あらすじ

年の離れた妹と、彼女の生活を厳しく管理する姉。だが、上階に住む男が助けを求めてきたことから、姉妹の生活は一変する。

ネタバレ

冒頭。

赤い本を姉に読み聞かされている幼い妹。その本をまったく楽しく感じられない妹だが、よく見るとその本は聖書である。母の死後、姉が妹を育てていたことが描かれる。

そして大人になった彼女たち。妹は外で仕事をしつつ、姉の仕立ての仕事を手伝っている。姉は広場恐怖症なのか、外に出ることができない。たびたび、父の亡霊(父も既に死んでいる)が彼女を脅かしている。

窓から、デート帰りの妹を目撃する姉。キスをされかけたのを見て激しく衝撃を受け、カーテンを破ってしまう。激しく妹を折檻する姉。妹は家から逃げ出し、踊り場で寝てしまう。
そこに、上の階に住むカルロスが2人連れで通りかかる。カルロスは何かにプレッシャーを感じているようで、逃げ出したいと思っていると話す。連れの男はその態度を激しく非難する。寝ている妹を見て、「かわいい」というカルロスである。
実は彼は結婚式を翌日に控えているのだが、逃げ出したいと思っているようだ。

次の日、ひとりきりの姉のところに、階段から落ちて足を折ったらしいカルロスが助けを求めてやってくる。拒否する姉だが、倒れたカルロスをとりあえず家の中に入れてしまう。荷物はほうきで引き寄せてかき集める。妹はまたデートをしているようだが、それどころではない姉。

目を覚ましたカルロスに「絶対安静」だと嘘を言い、電話もないという姉。妹にもカルロスの存在を隠す。

姉は帰ってきた妹と、信仰のことで口論になる。妹は十字架も聖書も好きではないが、姉がそれを押し付けている。

カルロスの看病を続ける姉。妹もその存在に気が付き、下着姿(パジャマがないのでこの姿のよう)で彼のいる部屋に忍び込む。

カルロスにときめいている姉。病気を克服するために外に出ようと訓練を始めるが、まったくうまくいかない。急にリハビリをしすぎて、吐き戻してしまう。だが、そのときめきを妹に告白し、化粧もしてみる。しかし、父の亡霊が現れ、その感情や行動を非難する。

妹は妹で、カルロスのもとにかわいいドレスを着て現れる。カルロスは妹のほうが好きだということを、彼女は敏感に感じ取って、ひそかに姉にあてつけているのだろうか?
カルロスの懺悔。彼女は結婚式から逃亡しようとしてたと妹に告げる。
姉から逃げるべきだ、電話もあるし自分の存在を隠していたじゃないかと説得しようとする妹。カルロスは姉が服用していたモルヒネを飲まされているようだ。カルロスはうわごとで「エリサ」と言う名前をつぶやく。

姉の持っていたカルロスの家の鍵を盗み、中に入る妹。しかし、そこで金髪の美しい女性と目が合う。それこそが、カルロスの結婚相手のエリサ。彼女は妹が止めるのも聞かず、姉妹の家に乗り込んでしまう。
そしてエリサと鉢合わせする姉。エリサに詰め寄られて、姉は彼女を殺してしまう。そしてカルロスのこともベッドの枠の部分に激しく頭を打ち付けさせ、気絶させる。その後、ノコギリを持ち出してエリサの解体を始める姉(後ろ姿しか描かれない)。意識を取り戻し、逃げようとするカルロスだが見つかってしまう。

それを知った妹は姉を激しく責める。しかし、姉は妹に恐ろしい事実を告白する。
父は妻を失ってから頭がおかしくなり、長女と妻をごっちゃにするようになった。そのせいで、姉は性的な虐待を受けるようになったという。
しかし、妹は妊娠していたエリサを殺した姉を恐ろしく思うしかない。カルロスを逃がそうとする妹だが、シーツに直接足を縫い付けられており、動くことができない。

仕立ての客が家にやってくるが、エリサの死体を見つけてしまう。トルソーのようになっているエルサの胴体と、帽子をかけてある生首に驚く客。姉は彼女たちも殺してしまう。
しかし、この客はいつも姉にモルヒネを持ってきてくれる人でもあった(夫が医者)。彼女から預かっていたモルヒネをたてに、姉を殴って閉じ込めようとする。しかし、カルロスの足を踏み砕き、壁にたたきつける姉。
姉妹が取っ組み合いで喧嘩をする。妹は姉のことを刺すが、姉はここで初めて「あなたとお母さんの写真を隠してある」と告白する。母の祭壇の下に隠されていた写真。小さい少女が赤子を抱いている。つまり、2人は姉妹ではなく、親子だったのだ。しかもおそらく、近親相姦で生まれたのだろう。

カルロスを外に運び出して、キスをする妹。だが彼女は家の中に入り、痙攣するカルロスを踊り場に置き去りにして扉を閉めてしまう。

というお話でした。さらっとスラッシャー要素が入ってきたり、それでいてグロ描写はあまりなく、でも暴力描写はたっぷりというアンバランスさがたまらないお話。息を飲むような恐怖はありませんが、じんわりと粘度高めなお話の印象です。