2017年イタリア/フランス/スイス映画『シシリアン・ゴースト・ストーリー』を見た。
ホラー映画かと思っていたのですが、純愛映画に近い感じ。
主人公のルナはボーイフレンドをマフィアに誘拐されてしまう(父親がマフィアに不義理を働いたため、彼を捕まえるための人質として連れ去られた)。大人たちはマフィアの恐怖に口をつぐみ、誰も探そうとしない。
ルナは友達の助けをかりながらビラをまき、声を上げる。しかし、彼女も手がかりを見つけることができなかった。
ボーイフレンドが見つからないまま時は流れ、彼女はとうとう彼が死んだのではないかと確信を得る。
死を選ぼうとするルナ。しかし、幽霊となっていたボーイフレンドが彼女の親友を呼び出し、命は助かった。
ルナは前を向いて生きていくことを誓う。
という、とってもシンプルなストーリー。ルナの反骨精神はものすごいものがあり、大人に反発して髪の毛をブルーに染めてみたり、それを親に咎められて丸坊主になったりします。このあたりはまだ何にも染まっていない若者らしさが強調されていてまるで青春映画のようでもあり、ルナの前に現れた新しいボーイフレンドの存在には見ているこちらも胸がチクチクしたり…
しかし!マフィアに誘拐されて命を落とし、さらには酸で溶かされて遺体を遺棄されたというボーイフレンドのエピソードがなんと、実話だったということに、イタリアンマフィアの脅威を感じざるを得ない。いや、日本でも似たようなことがあるのでしょうが(東京湾にコンクリ詰めにして沈めるっていうヤクザものの鉄板展開、あれはまだ若い子もわかるのでしょうか?)。何の罪もない少年にしていいことではない。いや、罪があったとしても、こんなことをされるべき人間なんてごくごくごく、わずかです。
それにしても本当にかわいそうなのである。もう、ボーイフレンドのジュゼッペくんの生きる気力が削げていく演技が凄まじすぎて、途中排泄物も垂れ流しのまま寝ていて反応もなくなっていて、ものすごい嫌な気持ちになりましたね。
それだけに、純粋に彼を探すルナの思いに心打たれたり…
2時間近くあるので、最初は「ん?どういう話?」となるのですが(幽霊の少年と知り合う話かと思っていた)、ラストのほうはぼんやり引き込まれてしまいました。
でもラストの「これは実話です」的なテロップに度肝を抜かれました。いや、映画で描かれているよりも2~3行で書かれている真実のほうが想像を凌駕する凄惨さなんですね。
現実のほうがよほど怖いというシンプルな定義が骨を凍らせるような作品でした。