「残穢」

zane

2015年の「残穢【ざんえ】 -住んではいけない部屋-」を見ました。
原作は大好きな小野不由美さん。にしても、この仕上がりはなんでしょうか。
・呪怨にも似た、呪いのリンクが続く
・新しい登場人物が出てくるごとに、テロップで名前が表示(モキュメンタリー風?)
・ただ、昔の再現映像だけはめちゃくそ怖い。

あらすじ

人気作家・小野不由美の第26回山本周五郎賞受賞作『残穢』を竹内結子と橋本愛の主演で映画化したホラー・ミステリー。奇妙な音がするというマンションの住人からの投書をきっかけに、その原因究明に乗り出した主人公たちが繰り広げる調査の行方と、やがて明らかとなる驚愕の真実をミステリー・タッチで描き出す。共演は坂口健太郎、滝藤賢一、佐々木蔵之介。監督は「白ゆき姫殺人事件」「予告犯」の中村義洋。
怪談雑誌で読者の体験談をもとにした短編を連載している小説家の「私」。ある日、読者の女子大生・久保さんから“今住んでいる部屋で奇妙な音がする”という手紙を受け取る。興味を持った「私」は彼女と連絡をとり、一緒に調査を開始する。すると、そのマンションでは他にも不思議と人が居着かない部屋が存在した。しかも過去の住人たちが、引っ越し先で不可解な死に遭遇するケースがたびたび起こっていたことも分かってくる。そこで「私」と久保さんは、作家の平岡芳明や心霊マニアの三澤徹夫、「私」の夫でミステリー小説家の直人らの協力を得て、さらなる調査を進めていくのだったが…。

http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=353459

登場人物

私(竹内結子):雑誌で読者の投稿した体験を小説化した「鬼談百景」を執筆している。久保さんの投稿に興味を持ち、彼女とコンタクトをとる。
久保さん(橋本愛):家で起きる奇妙な現象に悩まされている大学生。
直人:「私」の夫。小説家。
平岡芳明:「私」と同じく、オカルトを生業とする小説家。平山夢明さんがモチーフなのかな(原作未読ですので推測です)。
三澤撤夫:福岡の怪奇現象に詳しい人。
田村さん:「私」の担当編集者
山本くん:平岡の担当編集者

ネタバレ

九州のMさんの話。子供時代、仏壇のある部屋で奇妙な黒い影を目撃する。辞めただれた手。それはカッパだと、彼は確信する。

これは「私」が書いた小説。「私」は、読者投稿の怖い話を小説にする連載を抱えていた。そんな彼女のもとに、久保さん(仮名)から手紙が届く。彼女は自宅で、何かがこすれるような奇妙な音を聞き、悩んでいた。

穢れ。不浄、汚れ。死・出産・疾病・失火・悪行などによって生じ、災いや罪をもたらすこととされる。

久保さんが住む202号室では、衣擦れの音が聞こえる。

「私」の夫も作家。だが、心霊現象は否定派である。

メールで「私」と久保さんは中を深める。彼女は、かつてこの部屋で自殺した女性が着物を着ていて、その着物の帯が擦れる音が部屋で聞こえているのでは、と推測する。

実は「私」のもとに、同じマンションの女性から2年前に手紙が届いていた。405号室の元住人は、子供が何かに反応しているというのだ。そこでも、何かが擦れる音が聞かれていた。

久保さんはマンションの住人に聞きこみをする。前の住人は引っ越した直後に、引っ越し先の部屋で自殺していた。大家の前に現れた前の住人の幽霊。
彼はまるで、前の部屋で赤ん坊の夜泣きに悩まされているかのようにやつれていた。

他の部屋では、いたずら電話があった。公衆電話からかかってくるので、犯人はわからない。マンション全体が、なんだかおかしい。

「私」は夫と土地を買い、家を建てることを決める。上棟式をする2人。

「私」と久保さんは初対面をする。彼女たちは、このマンションの前にどんな建物があり、誰が住んでいたのかを調べる。

マンションの前はゴミ屋敷だった。ゴミの中で主人は孤独死していたという。同じ敷地内にある別家の長男は、いたずら電話をかけまくっていたこともわかる。

その前に住んでいた夫婦は、母が自殺していた。娘が身ごもった子供を生まないほうを選んだのだ。その母親は娘の結婚式の日に死んだそうだが、その時に着物を着ていたことがわかる。

さらにその前の住人は、赤ちゃんの泣き声を聞いていた。そして「湧いて出る」という言葉を、友人に残していた。

久保さんは、衣擦れがする部屋を閉め切っている。そこに物を投げ込み、あまり過ごさないようにしているうちに、だんだんと部屋が乱雑になっていく。そのさまを見て、「前の住人がゴミ屋敷になったのは、こういう理由ではないか」と久保さんは呟く。

小説の打ち合わせでは、「子供が床から湧いてくる」ことの意味が推測される。

久保さんは引っ越し、「私」も新居に引っ越す。

この事件を知った平岡は、マンションができる前の土地の住人の嬰児殺しの犯人の記事を送ってくる。
娘の結婚式で死んだ女性は、赤子の声に悩まされて死んだのか。彼女もまた、穢れに触れたのか。

久保さんはさらに前の住人について探す。
そして江戸時代、マンションの敷地に立っていた家では精神病者が閉じ込められていたことがわかる。この患者は、床下を這いずりながら徘徊していた。
嬰児殺しの女性は、「床下から聞こえてくる声に命じられた」と言っていた。

「私」の家では、勝手にセンサーが作動して電気がつくというささいな出来事がある。

かつての住人のおばあちゃんは、猫とお話するのが趣味だった。でも、それは猫ではなく、床下の誰かだったのではないか?

「私」と久保さんは、江戸時代にそこに住んでいた大きな家にお嫁入りした女性が持って来た幽霊画が、すべての発端ではないかと思う。
その絵を見ると、ごうごうと風の音が響き、たくさんの人の声が聞こえてくる。そして、女性の顔が歪むという。

歪んだ顔を見た者は呪われる。これは、九州の炭鉱で火事が起きた時、社長が労働者を見殺しにした報いだという。
だが、その呪いで炭鉱の投手は子どもを皆殺しにした。
冒頭の「河童のミイラ」の話は、この呪いとリンクした話だった。
(オカルトマニアの某コレクターが、呪いの影響で集めていた日本刀で自分を刺して死んだエピソードも出てくる)

「私」、久保さん、平岡、三澤は福岡の当主の家を訪れる。「私」は首の痛みが強く、コルセットをはめている。これも呪いなのか?
締切になっている部屋に入る彼ら。

奥山家は呪いの家だ。関わった人間は、どんどん呪われていく。
そして、久保さんと同じマンションに住んでいて、聞きこみに協力した家族が無理心中をしたとニュースで見かける「私」。父親が妻と娘を殺害し、自殺したのだ。

「私」と久保さんは、これ以上関わるのをやめる。
「私」の首の痛みは、奥山家とは関係ない、ただの病気だった。
久保さんも引っ越し先で滞りなく生活している。
久保さんの前の住人が引っ越して自殺した部屋に住んでいる新住人(事故物件だと承知して住んでいる)も、無事だ。
元405号室の住人も、元気に暮らしている(だが、誕生日祝いをしている子供の背後に幽霊が映り込む)。
何も感じておらず、マンションに住み続けている人たちもいる(だが、彼女たちの子どもは一様に天井を見上げている)

「私」は原稿を書き終わる。だが、そこに電話がかかってくる。公衆電話からだ。
「…………エヘヘ……今、何時ですかぁ?」

編集部では、田村さんと山本君が仕事をしている。田村さんは先に帰るが、山本君は仕事を続ける。しかし山本君の見ている原稿が突然乱れだして、「話しても祟られ」「聞いても祟られる」と文字が表示され、書き換えられていく。
いつの間にか、パソコンのキーボードも手も炭で汚れている。たくさんの黒い塊のような人影が彼を囲み、彼はどこかに引きずり込まれていく。

久保さんの前の住人が自殺した部屋。そこに住む新住人は、ふと目を覚ます。その目の前で、自殺した女性の足と、着物の帯が揺れている。
彼は絶叫する。

幽霊画を供養し、預かっているはずの住職は、幽霊画を広げている。その掛け軸を見ている住職の顔は、笑っているようにも見える。
そして、掛け軸の中の女性の目がぎょろりと動く。

感想

・モキュメンタリー風に登場人物の横に名前が入るのですが、なんだか「噂の東京マガジン」の噂の現場に見えてくるのはなぜでしょう。
・現実に自分の身に起きたら怖い……かも?くらいの気持ち。誰もイライラしないのがすごいな。ずっと誰かの声が聞こえるって「不快」だと思うんだけど、キチ系の住人のひとはいなかったです。
・マンション自体がけっこうキレイで部屋も広くていいなあと思いました。いいなって気持ちが先に来る。
・昔の場面はビデオの再生みたいな画素の粗さで、それが一番怖い。「リング」とか「らせん」の怖さ?もともとの小説は面白そうなのに、幽霊の見せ方にだいたい既視感あるのが哀しい……。