季節外れの通り雨がやってくる時、消えた子どもたちが戻ってくる「雨の町」

雨の町

2006年の邦画ホラー「雨の町」を見ました。原作は菊地秀行のSF小説で、未読ですが面白そう。読みたい。と思わせる映画。とはいえ、映画も負けてはいません。Jホラーが明らかに息切れしてきたであろう2006年頃であってもなお、なかなかどうして怖い作品です。つっこみどころが適度にあるのも好ましい。

「季節外れの通り雨の日、死んだ子が家に戻ってくる」という設定はキング原作の吸血鬼映画を思わせますが、ここでポイントなのが通り雨。雨の日の夜、というわけではなく昼にもどんどんやってくるし、白昼堂々村の中をウロウロしているのがなんだかシュールであります。

ネタバレは以下。
死んだはずの子供(シン)が家に戻ってきてしまい、それを始末するために村唯一の青年・サダヒロが彼を森の中に誘拐して殺そうとする。しかし、シンは橋から落ちて頭が割れたものの、姿を消してしまった。

母から捨てられた過去を持つ記者の荘太は、ゴシップ記事の取材のために内臓がないまま見つかった少年の遺体を調べにある田舎に足を運ぶ。すると、なぜかその少年(もちろんこれがシン)の遺体が動き出して走り去ってしまう。
…と、このシーンは文字だけでも怖いですが、実際は白塗りの全裸の少年(もちろんバックショットだけだけど)が全速力で走って消えてしまうシーンなので、ちょっとおもしろい。白塗りの少年って怖いんだけど、ホラー的表現として少し間が抜けているのはなんでなのでしょうか。

荘太は昔、ある村の子どもたちが一斉に失踪した事件があったと知り、その失踪者の中にさきほどの内臓がない死体として見つかったシンもいたことを知る。しかし、彼はなぜ年をとっていないのか?子どもたちは知らない小学生たちに誘われて消えたというが…?
そしてその頃、シンの父は自宅で息絶えていたところを見つけられていた。

調査を続ける荘太は、森の中に大量の墓があるのを発見する。どうみても手作りの墓には、つい最近作られたものもあるようで…??そして荘太は、森の中でカズヒロとアヤコという子どもたちに出会う。迷ったという2人を村まで送り届けることにした荘太。しかし、村で唯一残っている?家に住む老夫婦は荘太に冷たく、日が暮れるまえに村を出るように命じてくる。しかし、村の出口でカズヒロと出会った荘太は、その老夫婦(実はカズヒロの両親)の家に送り届けてやる。しかし、カズヒロは突然鬼と化し、サダヒロ青年を襲ってしまった。

実は子どもたちは毎年この季節、通り雨が降ると家に還ってきていたのだ。しかし、その正体は得体のしれない化け物であり、家に入れたら殺される。サダヒロは子どもたちの中で唯一の生き残り(みそっかすのため、子どもたちに置いていかれたおかげで命が助かった)だった(ただ、彼がどうして村に残って同級生たちを殺し続けているのかについて細かい説明はない)。子どもたちは頭を潰さないと死なない。自分たちの子供を殺して村を去ったものもいるが、殺さずに出ていった家も多い。アヤコの両親も彼女を捨てて出ていったので、彼女には帰る家がない。

荘太は村役場で知り合ったフミオ(これが真木よう子)が迎えに来ることを思い出して彼女を探しに行く。
しかし、彼に執着するアヤコに追われることになってしまう。荘太はフミオと合流するが、村の外ではなくカズヒロの両親の家に戻ってしまった(フミオの車があるんだから車で逃げろよ!)。

サダヒロはカズヒロを殺そうとするが逆襲されて死亡し、カズヒロは両親の待つ家に忍び込む。母は彼を殺そうとするも、どうしても殺せず、殺されるほうを選ぶ。カズヒロの父は息子を殺すことに成功するが、自らも命を絶ってしまった。

荘太を待ち受けていたアヤコは、態度を硬化させた彼に髪の毛を逆立たせて怒る(この描写もよくわからない。「うずまき」で髪の毛に支配された女の子みたいに、髪の毛だけがウネウネ成長する描写。「エクステ」でもいい)。
しかしなぜかアヤコは諦める。

事件は隠蔽され(なんでだよ)、荘太は仕事をやめてフミオと交際を始める(なんでだよ)。
しかし、消えたシンと新宿で遭遇する荘太。シンとアヤコは彼の家にやってくるが、荘太はアヤコの頭を潰して殺してしまう。アヤコの手の中には、荘太に渡そうとしていたらしいドングリが握られていた。(小学5年生の女の子が大人の男性にドングリを渡すものなのでしょうか…???)

荘太とフミオはショックを引きずりながら街を彷徨っているが、そこに新しい親=寄生先を見つけたらしいシンが、両親と手をつないで歩いている姿があった。

という話。
主演の和田聰宏の演技もスマートだし、脇を固める老いた親たちの演技も素晴らしい。ロケ場所の雰囲気も好き。今のカメラの画質だと同じように映るのかはわかりませんが…綺麗すぎないほうが怖いですよね。ざらっとした質感が残っている映像のほうが怖いもの。

子どもたちの演技やメイクはどことなく「光る眼」を意識しているのでしょうか。あと、ストーリーは「屍鬼」とかキングとかそのあたりを想起しました。ただ、アヤコに荘太がドキッとするような描写はいらなかったなあ。ラストは「ごんぎつね」みたいだったし。個人的にはカズヒロくんがテツandトモのトモさんにそっくりだったのが気になりました。