ラスト1分はマジで衝撃。究極の「家にいりゃあよかった」映画『ステイ・ホーム』

イタリア映画『ステイ・ホーム』を見ました。2019年。

ラストが予想できた部分があるからこそ、アレなの?もしかしてラストはアレなのかしら?と見守ってしまいました。

ストーリー自体は、ラスト間際までは平坦な感じがあります。事件はいろいろあるんですけど、だいたいが会話で進行していくので、若干飽きてしまう。あと、ラストに全部わかるんですけど、「何言ってんだおめぇ?」と言いたくなるくらい乱暴に話が展開するところもあるし。そして、色味が抑えられているので(茶色と深緑が多い印象)画面が地味なのもある。

ストーリーはこんな感じ。

主人公の少年は車椅子。領主の跡取り息子として大事に育てられている。父は既に亡くなっており、母親は彼を溺愛して外に出そうとしない。しかし、その閉じられた世界に、突然美しい少女が現れて… 友達もいなかった少年の世界は突如広がり、色鮮やかなものに変わっていく。少女との恋の訪れは、母との蜜月の終焉へとつながっていき…

という感じ。まあ簡単に言えば、幽閉されているんですね。この時点で、車椅子にされているのはわざとで、薬のせい?家から外に出さないため?それともよくある誘拐からの監禁モノ?とも思うのですが、そうではありません。

伏線はいろいろあります。以下、ネタバレも含みます。

・すべてが古臭いため舞台が中世かと思いきや、マルボロのタバコ、音楽プレイヤー、ロックが流通している時代でもある(そもそも冒頭に出てくる少年のバースデーケーキも現代風で、昔っぽい雰囲気なのに色つきの生クリームとかあるの?など、最初から違和感があるっちゃある)

・外の世界の話を口にするのは厳禁であり、規則に反すると厳しい処罰を受ける

・使用人たちは強いストレスを抱えており、現領主である母親に強い忠誠心と反発心を抱いている。その影響か、途中で自死するものも登場する

・母親の世話をしてくれた老人が途中で登場するが、ケガらしきものが原因で亡くなる

そう、このケガだけがあからさまなんですけども。どう考えても“噛み跡”。こ、これってもしや噛まれて亡くなるのが確実…!?

そう、この世界はゾンビが蔓延しているのです。主人公の両親は新天地を探して家を捨てるかどうかで揉め、結果として母親だけが生き残り、家を守ることを選んだという設定があります。

だからこそ、母親は主人公を強く、たくましく育てるために厳しく躾けた。一方で、外に出ることを厳しく禁じていたんですね。ちなみに屋敷は川に囲まれている?ような、謎の立地。どうやって車出してんだろ。

ですが、突然そこに現れた少女(彼女はゾンビサバイバー)。屋敷に連れてきた老人はゾンビに噛まれて亡くなり、ひとりぼっちでは外の世界で生きられない。少年の住む屋敷に頼るしかない。しかし、使用人たちはこの世界の恐ろしさに次々圧し潰され、自死するもの、マッドサイエンティストとなるもの、家を後にするもの… と零れ落ちていきます。

少年の花嫁候補でもあった少女ですが、息子の心が自分から離れていくのを見て苦しむ母親。結局、少年のためにならない(勉強も努力もしなくなったから)と少女を追い出してしまいます。しかし使用人がいなくなったことで彼女を呼び戻さねばならず、その代わりにマッドサイエンティストの医師は少女に拷問を加え…(このあたりはよくわからなかった。ロボトミーしたのかと思いましたが、そうでもなかったわ)

最後、少年は少女と家を出ることを選びます。使用人は全滅し、母親は絶望。セクシーな部屋着で芝生にゴロンとして世を憂います。どういうこと?ここだけイタリア映画らしさを感じたが。たしかに息子に捨てられ、使用人もいなくなり、もうどうにもならないですよね。自分も終わるしかない。車も息子たちが乗ってったし。

そして少年は呑気に外の世界を楽しもうとしますが、その荒廃ぶりを目の当たりにして、絶望するのであります。

 

う~ん、なぜ隠しておいたのか?という点は共感できませんが、ラストのむくむく起き上がってくるゾンビを見て絶望するのほほん少年の顔を見るだけでも、この映画を視聴する価値はあると思います。『シックスセンス』以来よ。

そういえば、ブリッジしながらグニャグニャ歩く軟体ゾンビを演じている男性キャストがいたのですが、この人ってイッテQにも出ていた有名なホラー系俳優の人かな?(ブリッジをしたまま歩けたり、関節がぐにゃぐにゃに曲がる人)

そしてメイクがゾンビ映画にしては珍しく、目と口が黒く塗られてどろっとした感じにしてあり、それ以外のところを肌色で潰しているような、ものすごく特徴的なものでした。

途中はものすごく甘酸っぱいんです。初々しいキスシーンとかありますし。ただ、そういう展開は求めてないので、申し訳ないけど倍速で見てしまった…(気恥ずかしいのもある)。

もうひとつ、使用人のキャラクターが立っていたのも面白かった。マッドサイエンティストの医師は母親の言いなりで、人を始末するのもお手のもの(『ムカデ人間』の飼い主を思い出させる)。父親代わりのような使用人の男性(執事というほど上品ではないが、家の雑用を一気に引き受けている感じ)は、少年の淡い恋を応援し、銃の練習や家出も手助けしてくれます。ただ、彼は母親を慕いつつもそのやり方に呆れており、キチ医師を撃った後に自死。この終わり方はキツイですよ!!!いい人なのに!!!まあ、悪い人ならいいというわけではない。ただ、切なすぎる。

メイド長は母親に呆れて家を出て行ってしまうのですが、すごく誇り高い女性でカッコイイ。それだけに、彼女はどうなってしまったのか気になるところではある。他にもアホみたいに下品なコンビがいるのですが、この2人は母親を憎んでいます。というのも、母親に嫌われて拷問されて、1人が話せなくなっているから。こいつらは下品すぎて、15歳の少女に「ヤろうぜ~」とか言ってきたのが気持ち悪かった。ただ、その直後に少女に撃たれたので、溜飲が下がるどころかジェットコースターに飛び乗って去っていきました。呆然。

こういう、ゆるやかに終わっていく話がたまらなく好きな私には、余韻を反芻するだけで楽しい映画であります。

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