その少女を、助けるな。メキシコホラーの傑作「ドント・ヘルプ」

ドントヘルプ

2017年のメキシコ映画「ドント・ヘルプ」を見ました。「ドント…」とつければ何でもいいってものではないと思うんですけど、それくらいここ最近のホラー映画における「ドント…」流行ぶりはひどい。「…オブ・ザ・デッド」とつければいいというものではない、というのと同じくらいひどい。

メキシコのオカルト映画ですが、中身はなかなかに素晴らしい内容でした。

テレビでは教皇が死んだというニュースが伝えられている。妻のアンジェリカと夫のホセはなぜか暗く落ち込んでいた。その家に強盗に入ろうとしている女の子たち。マリア、カミラ、アニータ(マリアとカミラは姉妹、アニータは年の離れた妹みたいな感じ)。彼女たちは金をもってこないと殺すと脅されており、それでもマリアは人を傷つけたくないと思う。
見張りのアニータは、車の中で謎の影を目撃するが…?

金を探すマリアとカミラだが、地下には娘・タマラが換金されていた!カミラは彼女を助けるといい、部屋から連れ出す。実はマリアとカミラは虐待されており、カミラは父を殺して服役していた過去があった。しかし、タマラに対して異常によそよそしい態度をとる両親。夫婦はタマラが病気だったが、最近急に動けるようになったのだと嘘をつく。

マリアは虐待されていた頃に、自分が壊した十字架がこの家に飾られていることに気が付く。この家は何かがおかしい。マリアは混乱したアニータが家の中にいるのを見つけるが、カミラは同時刻にアニータがガレージで首吊りをしていたのを発見する(マリアの見つけたアニータは消えた)。

タマラは突然、祖父とカミラの子供がアニータだと本人にバラしたといい出す。さらにカミラはマリアを虐待から救うために父を殺したのだが、マリアが裁判で父親をかばう発言をしたことを初めてカミラは知り、ショックを受ける。
みんなの秘密を次々暴露していくタマラ。
カミラは部屋を飛び出すも、父親の幻覚を見て交通事故を起こしてしまう。
一方、タマラを部屋から出した責任を感じたマリアは夫婦の悪魔祓いに協力することになる。

だが、悪魔祓い当日、夫婦は娘に脅されてマリアと悪魔祓いのために訪れた枢機卿を殺そうとする。2人は病気の娘を救うために悪魔と契約してしまったのだ。しかし、最後はアンジェリカがホセを殺して自殺し、枢機卿とマリアだけで悪魔祓いを行うことになる。
それでも気が付けば、枢機卿までおかしくなりマリアは縛られている。悪魔と必死で戦う枢機卿は、マリアに「神を信じる力があれば大丈夫」と伝え(ここらへんはややトンデモ設定)、シロートの彼女に悪魔祓いを託す。その結果、タマラはもとに戻り、マリアは過去を乗り越えた。

母親のもとに戻って普通の生活に戻ったマリアだが、悪魔祓いで共闘した枢機卿が教皇に選ばれたというニュースが報道されている。しかし、枢機卿は誰にも気付かれぬように舌なめずりを繰り返している。悪魔の本当の狙いは、タマラではなく枢機卿を乗っ取ることだったのだ。

という、ラストの後味がとんでもなく悪い映画。ラストの枢機卿の舌ペロペロ具合もなかなかに病んでいてイイのですが、全体的に胸糞が悪い設定、悪魔憑きらしいおどろおどろしいメイク、陰鬱な印象のセットなど、よく作り込まれた映画でした。主人公のマリアのどことなくかわいらしさが残った感じ、カミラのはすっぱだけど愛情深い感じなど、キャラクターも立ってたし。
イーライ・ロス監督の「アフターショック」「ノック・ノック」「グリーン・インフェルノ」の脚本家が初監督したらしいですけど、そりゃあ後味悪いわね。