「ステイク・ランド 戦いの旅路」

ステイクランド戦いの果て

2010年「ステイク・ランド 戦いの旅路」の続編、2016年のアメリカ映画「ステイク・ランド 戦いの果て」。主演は「ゴシップ・ガール」のエリック役を演じていたコナー・パオロが続投しています。繊細な印象が強かったコナーくんですが、この映画では精悍な青年に変化。
もともとは吸血鬼たちの来襲で家族を失い、寄り添うように吸血鬼ハンターの老人と行動を共にすることになった少年のお話でしたが、今作では吸血鬼との対決をより深く描いています。といっても、戦いのシーンはさほど多いとも言えず、前作で終わっていても良かったのでは?という感じもしなくもないのですが、手練れの老人たちが銃を撃ちまくるシーンは面白い。

登場人物

マーティン:主人公。前作では家族を失い、ミスターと行動を共にするようになった。今では自身も有能なハンターになっている。
ミスター:前作でマーティンの父親代わりになった謎の男。吸血鬼ハンターだが、現在は行方不明になっている。
レディ:ミスターが助けた少女。孤児であり、心なき人たちにペットのように育てられたため、言葉がしゃべれない。ミスターになついている。

バット:ミスターの昔馴染み。とても強いおじさん。アールと恋人同士。
アール:元獣医、現在は医師として人を助ける。バットと恋人同士。

ネタバレ

たき火をしているマーティン。その向かいにはミスターが座っている。だが、その光景は現実なのかどうなのかわからない。マーティンはただ、呆然としている。

隔離地域の「ニューエデン」(カナダ)で、前作のラストで一緒に逃げた女の子と添い遂げ、女児が生まれている。幸せな家庭を作っているが、吸血鬼たちが来襲する。

たき火の前のマーティンとミスター。
「お前は生きている、だから生きろ」

吸血鬼たちは、娘と妻を刺し貫いて殺す。マーティンはそれを遠くから目撃し、唖然とする。
「もう忘れるんだ、過去はどうにもならん」

世界は即死しなかった
世界は何度も断末魔の悲鳴を上げ
俺は全て聞いた
後に残ったのは滅びかけの景色
人類は再建を諦め
滅びを傍観した

今は音もなく空っぽの世界
1人の人間も見ないまま
数週間が過ぎることも
そして俺たちは生き、または死ぬ
心の支えは思い出だけ
運が良ければ明日がやってくる

最後の砦だったニューエデン
それもあの女にすべて奪われた
マザーと呼ばれる女
ブラザーフッド(吸血鬼の信者)どもが手に入れた
地上の罪を一斉できる救世主(メシア)だ
連中は死の国(ステイク・ランド)に向かった

生きていればミスターはそこにいる
ミスター
彼は家族も同然だ
ミスターは吸血鬼ハンターとして名高い
彼は伝説であり、最後のハンターだ
あの女を倒すにはミスターの力が必要だ

歩き続け、吸血鬼を殺すマーティン。血に飢えた吸血鬼は昼間も体を焦がしながら移動している。
バイクで旅をしながら、アメリカに戻る。

老夫婦に偶然出くわすマーティン。夕食を食べさせてもらうが、女性は息子夫婦や孫が戻ってくると信じている。夜中、しんみり話し込んでいた男性とマーティンだが、突然眠気が彼を襲う。女性がマーティンを襲ってくる(食料にするため??)が、撃ち合いの末、男性が女性を撃って殺してしまう。妻を撃ったことに驚く夫だが、彼をマーティンが頭を割って殺す。

マーティンはある店に立ち寄る。物々交換で成り立っている店で、ミスターのことを尋ねる。あるエリアを紹介されるマーティン。だが、移動中にマーティンは突然現れた女の子に気をとられ、殴られて拘束されてしまう。

そこは紹介された隔離地域。人肉を食べ、捕獲された人間たちが並べられている。マーティンは試合場に引き出され、他の人間と戦わされることになる。
その相手こそ、ミスターだった。激しく殴り合う2人。だが、ミスターはマーティンの呼びかけに気付かない。自分があげたペンダントを見て、ようやくマーティンに気付いたミスターは、試合を仕切っていた男を殺し、ペットになっていた野生児の女の子を助け出す。

3人で逃げ、ミスターにマザーのことを話すマーティン。彼はすっかり復讐にとりつかれており、ミスターはそれをたしなめられる。そして、連れてきた少女に「レディ」と名付けるミスター。
(くっつけるとミスターレディですね)
しかし、ミスターは追手に捕まってしまい、十字架にくくりつけられて放置される。夜、吸血鬼が彼にむらがるが、十字架を折り、腕をしばっている丸太で吸血鬼をブン殴るミスター(「彼岸島」みたい)。太ももに吸血鬼を挟んで、そのまま殺しすらする。しかし、吸血鬼の爪が腹に刺さったミスター。マーティンとレディは彼を救出して、腹の傷を焼く。

逃げた先にも、吸血鬼の信者=ブラザーフッドが追いかけてくるが、次々と彼らを殺すミスターとマーティン。その一方で、そのうちの1人が少年であることを見抜き、ミスターは彼を生かしておくことを選ぶ。彼もマーティンとミスターを手助けすると約束する。
途中で、じいさんたちに出会うマーティン。彼はミスターと昔馴染みだった。そのまま、彼らの拠点へと連れて行ってもらう。

封鎖地区はこう少ない
残っている地区でも人間らしくは暮らせない
中にはまともな場所もあるのだろうが
見つけた時には遅い
街には壁と武器があった
きっと希望も
久々に身の安全を感じたが
安らぎはない
宿敵を倒すまでは

ミスターの昔馴染みのバットとアールは、4人を助けてくれる。その一方で、監禁されるブラザーフッドの少年・ジェダ。ビリーという名の少女が彼の世話をする。
ミスターは夢の中で、「マザー」の子供を殺したことを思い出し、うなされている。

ジェダの様子がおかしいと気付いたビリーは、部屋を覗く。そこには、首吊りをしたような脚が見える。慌てて部屋を開けるビリー!
だが、ジェダは彼女を裏切ったのだ。ビリーは囮の死体を見つけ、慌てて扉を開けたところを彼に殺されたのだろうか。そして吸血鬼が来襲するが、彼らはそれをなんとか撃退する。6人が殺される。生きていたジェダは拘束される。

ミスターは自分のせいでマザーがこの拠点を狙っていると告白する。迷うミスターだが、マーティンは彼の代わりにジェダを殺してしまう。

ミスターとマーティンはマザーと戦うと決める。ミスターはレディを縛り、拠点から逃げる人たちに預ける。バットとアールもミスターたちと戦うことを選び、ミスターは「娘の名はローズだった」と呟く。

敵襲。発電機を狙われ、スポットライト(これも吸血鬼向けの武器)が壊されてしまう。レディはこっそり戻ってきて、吸血鬼たちと戦う。
ミスターとマーティンは、マザーと戦う。2人は協力して、マザーを殺す!

だが、襲われたバットとアールは追い詰められ、自爆する道を選ぶ。キスをして自爆する2人(それにしても、リアルな感じのゲイカップルで演技にも好感が持てます)。

逃げる2人だが、レディがそこに立っている。吸血鬼と化したように見えるレディだが、彼女が殺したのはミスターの後ろの吸血鬼だった。だが、深手を負った彼女はそのまま死んでしまう。
ミスターはマーティンのため、追ってくる吸血鬼を足止めすると申し出る。「息子には父親を超えてほしいから」という言葉に、彼もそれを受け入れざるを得ない。

「でもきっとまた会える、どんな未来であっても……」

拠点から逃げた人たちに追いつけているマーティンは、自分の娘に似た少女と手をつなぎ、歩き続ける。

感想

・吸血鬼が全然怖くない、ブラザーフッドの描写が中二病みたい(麻袋みたいなローブとしょぼい十字架のワッペンみたいなのでキメてます)、吸血鬼に噛まれたら感染するというような設定もおざなりであり、怖さは半減しているような気もする。ロードムービー要素は消えてしまい、とびとびで移動している感じしかしません(バイクもすぐ出てこなくなるし)。前作のほうが孤独感は強かったし、子供が主演なのもよかったのに……。
・マザーの造形も地味だし、「すべてを統べる吸血鬼」のわりには能力が発揮される瞬間もない。
・と不満もありますが、それは前作が素晴らしすぎるから。マーティンの繊細な表情は健在だし、ミスターのしぶとさもカッコイイ。おじいちゃんたちがカッコイイのもステキです。
・あと、風景がキレイ。続編はそういう映画になりました。