「チャイルド44」

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2014年のアメリカ映画「チャイルド44 森に消えた子供たち」を見ました。
・主演はトム・ハーディ!さすがの演技
・時代や運命に翻弄されながら、自分の正しいと思ったことを成し遂げる男
・妻との関係にも、ある秘密がある。それが切なさを増強させる。

※ミステリーですので、未見の方は先に映画をご覧になることを強くおすすめします。

あらすじ

2009年版『このミステリーがすごい!』で1位に輝くなど日本でも話題を集めたトム・ロブ・スミスの『チャイルド44』を「インセプション」「ダークナイト ライジング」のトム・ハーディ主演で映画化したクライム・ミステリー。スターリン独裁政権下のソ連を舞台に、国家が揉み消した連続猟奇殺人事件を巡り、一人のエリート捜査官が全体主義国家の恐るべき不条理に立ち向かって真相究明に奔走するさまをスリリングに描く。共演はゲイリー・オールドマン、ノオミ・ラパス。監督は「デンジャラス・ラン」のダニエル・エスピノーサ。
1953年、スターリン政権下のソ連。ある夜、国家保安省(MGB)のエリート捜査官レオは、変死体となって発見された戦友の息子の亡骸と対面する。事件性は明白だったが、上司は“理想国家のソ連にこのような犯罪は存在しない”との理由で事故死として処理するよう命じる。疑念が拭えない中、今度は最愛の妻ライーサにあらぬスパイの容疑がかけられ、レオに妻を告発するよう圧力がかかる。これを拒否したため、レオは地方の警察署に飛ばされてしまう。するとそこで、再び少年が被害者の猟奇殺人事件に出くわす。犯人を野放しにするわけにはいかないと、署長のネステロフに協力を仰ぐレオだったが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=352642

ネタバレ

「楽園に殺人は存在しない」

スターリンのせいで、1日2万5千人が餓死した時代。多くの子どもが孤児となった。

孤児院でのリンチを目撃した孤児が逃げていく。彼はストリートチルドレンになるが、親切な大人が彼に話しかける。「名前は?」「いらないから、捨てた」
彼はレオと名付けられる。

1945年、ベルリン。
兵士として優れた才能を示したレオは、ベルリンの国会議事堂を陥落させ、その上で旗を振る写真を撮影される。彼の写真は「ソ連の英雄」として報じられる。

1953年、モスクワ。
レオは女の子や仲間たちと食事をしている。彼はある女の子を口説いているようだ。

国家保安省の捜査官になったレオは軍の命令で、スパイを匿っているらしい家を捜索する。男は見つかるが、逃げようとしたところを殺される。彼を匿った家の両親は殺され、子どもも殺されそうになる。だが、レオがそれを見つけて激昂する。「子どもは関係ない!」殴られた部下・ワシーリーはイライラするが、レオは子どもたちにできるだけ親切にしようとする。
レオは帰宅して、嫁を抱きしめる。

その頃、モスクワの街には子どもに声をかける謎の男の姿が目撃される。

レオの嫁・ライーサは体操の教師をしている。

レオの仲間のアレクセイの息子が、列車にひかれたという話を耳にするレオ。だが、アレクセイは事件だと思っていない。見つかった時に息子は裸だったこと、証人もいることがわかる。

その一方で、ライーサの働く学校で教師が次々逮捕される。レオは彼女と怪しい男の関係を疑い、自分を拾ってくれた父親的存在(冒頭でレオに名前を付けてくれた人)に、嫁について相談する。しかし、その日の夜にライーサが妊娠していることが判明する。

またライーサの同僚がつかまる。彼女について調査するレオだが、もちろん彼女はスパイではない。

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アレクセイの息子が死んだのと同じような事件が、また起きる。溺死した少年。だが、近くに水辺などない。窒息させられた跡もある。その事件について調べるレオだが、彼は逆にハメられてしまい、ライーサのスパイ容疑を拭うことができずに左遷される。

田舎で警官をすることになったレオと、学校に赴任したものの掃除婦をさせられるライーサ。住まいも汚く、狭苦しいものしか与えられない。しかし、赴任先でまた子どもの死体が見つかる。溺死、絞殺と条件も揃いすぎている。
しかし、証人がゲイだったことから、事態は変なほうにと転がってしまう。同性愛が禁止されていた当時、この証人をきっかけに同性愛者狩りが始まったのだ。

ライーサは彼の部下・ワシーリー(以前スパイの男の捜索をした時、子どもの両親を彼女たちの芽の前で殺した男)から電話を受ける。レオを捨てて、自分と付き合えと言うのだ。彼はレオから大切なものを奪いたいのだろう。だが、ライーサはこれを断る。

しかし、ライーサは姿を消そうとする。レオは彼女を追っていくが、そこで恐ろしい事実を知る。ライーサはレオを愛していたのではない。怖かったから結婚したのだ。国家保安省のエリート捜査官である彼を拒否したら、それだけで殺されるかもしれない。
妊娠ももちろん、嘘だった。妊娠していると言えば、乱暴されないと思ったのだ。
彼はその事実を知って愕然とする。

ゲイの告発が続き、証人だった駅員の男は電車に飛び込み自殺してしまう。レオは深真相に迫るため、署長のネステロフに強力を求める。彼にも子どもがいる。もしも、殺されたのが自分の子どもだったとしたら……?

その頃、切手を買いに来た少年に声をかける謎のメガネの男。彼は切手を少年に譲ると言い、自作のお菓子を食べさせる。

署長はレオに協力を決め、事件を調べ始める。

メガネの男はひとりでお菓子に薬を混ぜつつ、泣き出し、暴れる。子供の頃の記憶を反芻しているようだ。

9歳から14歳の子どもで溺死、かつ線路のそばで死んでいた子どもは44人も見つかっている。
署長の入れ知恵により、レオとライーサはモスクワに戻ることにする。登山したフリをして、変装して電車に乗り、モスクワに潜りこむ。多くの人が彼らに協力するどころか、自分の安全のために拒む。

殺人鬼の男にも、息子や妻がいる。普通の家庭の普通の父親として、仮面をかぶる殺人鬼。

殺人犯はナチスの男かもしれない。彼らのなかには、薬の影響で子どもの血を欲している者もいるそうだ。

ライーサの同僚だったイワンのもとへ助けを求めて行くレオたち。イワンは反政府活動をしており、そのせいで同僚が巻き込まれて逮捕されたことを知ったライーサは、彼をビンタする。

彼らは追っ手から無事に逃げおおせ、駅もすり抜ける。文字が読めない兵士がなかにおり、彼に旅券を見せて逃げようとしたのだ。
だが、彼らはうまくいかない。相変わらず危機にさらわれる。列車に乗せられてからも変な男にも絡まれ、強姦されそうになるライーサ。夫の代わりにナイフを振り回し、列車から飛び降りて逃げる。

国家保安省のワシーリは、アンドレイからレオがモスクワに来たのかどうか、必要な情報を引き出そうとする。用済みになったら、彼は殺されてしまう。

レオは手がかりを頼りに、殺人犯に迫る。男が働く工場の上司を脅し、犯人を捜すレオ。ようやく男を見つけ出す。男はもともと軍に所属していた外科医であり、その知識をもって子どもを殺し続けていた。

男は逃げる。レオとライーサは追いかけるが、そこにワシーリーも現れる。レオとワシーリーも壮絶な戦いを強いられる。ワシーリーはレオに殺され、そこにたくさんの軍人がやってくる。
だが、追っ手に「男を見つけて逮捕したのはワシーリー。彼は英雄だ」と説明する(つまり、殺人鬼を見つけたのはワシーリーであり、彼を殺したのは殺人鬼であると偽装した)。

黒幕のクズミン少佐は逮捕され、惨めな姿で左遷されている。レオは元の部署に戻っているが、「新体制」になったという組織はまったく中身が変わっていない。ネストロフを引き抜き、殺人課を作りたいと申し出るレオ。それは受理され、田舎で一生を過ごすと思っていたネストロフは、淡々と地元で荷造りを始めている。

レオは、ある決意をする。スパイの男を匿った罪で両親が殺された姉妹を、引き取ることにしたのだ。彼女たちに、一緒に住むか問いかけるライーサ。幼い姉妹は、彼らの家に行くことを選ぶ。
レオは呟く。
「今でも俺のことを、恐ろしい男だと思うか?」
「いいえ」
ライーサは微笑み、彼らは子どもの手を引き、荷物を持って施設を後にする。

感想

・殺人鬼はもちろんのこと、ライーサの「あなたを愛しているのではなく、恐怖で結婚した」というカミングアウトがもっとも悲しく、恐ろしい。
・スリリングな展開が多く、ミステリーとしては飽きない映画でした。