「オオカミは嘘をつく」

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2013年のイスラエル映画「オオカミは嘘をつく」を見ました。
こちらの作品はタランティーノが絶賛していたのですが、この映画を撮影したイスラエル監督コンビは以前アメブロの方でも紹介した「ザ・マッドネス 狂乱の森」の監督でもあります。
自分のブログを読み返したけど、全然あらすじがわからねぇ!

※森の中で奇妙な人間たちが織り成す群像劇。
「近親相姦している兄妹」「テニスに行こうとしていた若者たち」「セクハラ変態警官と、離婚問題で急いで帰りたい警官」「キャンプ中の夫婦」「殺人鬼」が森のいろんなところで遭遇し、トラブルや殺し合いに発展していく。
ただ悪運で人が死に、殺人鬼に殺されるわけでもないのにむごい死に方をする人たちが続出する、ユニークなキチ映画。
また見たくなったなあ。

前作品も性描写がものすごかった(変態警官が助けてほしかったらパンツ脱げよ!とか言い出す)のですが、この作品は性的虐待やらなんやらが絡んでいるので、胸糞が悪い映画です。
そもそも、この胸糞の悪さをどうだ!どうだ!と鼻に押し付けられているような作風なのですが。

いかにも善良そうな容疑者。
怒り狂う被害者の父。
暴力ですべてを解決しようとする刑事。
本当の悪(オオカミ)は誰?とのことなので、もしかしたら裏の裏があるのかしら?と思ったら、最初から最後まで表しかなかった!という感じです。
ただ、面白いやりとりもありましたね。コントだったわあ。

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あらすじ

デビュー作「ザ・マッドネス 狂乱の森」で世界的に注目を集めたイスラエル人監督コンビ、アハロン・ケシャレス&ナヴォット・パプシャドが贈る戦慄のサスペンス・スリラー。ひとつの少女誘拐事件を巡り、容疑者を拘束した刑事と被害者の父親が暴走していくさまを、予測不能のストーリー展開と過激なバイオレンス描写で描き出す。

連続少女殺害事件を捜査する刑事のミッキ。教師のドロールに目星を付けた彼は、一向に自白しない容疑者にしびれを切らし、拷問まがいの取り調べを行った結果それが問題となり、彼は担当から外される。おまけに、その様子がネットで公開され、警察はもはや捜査どころではなくなってしまう。それでもなお、単独でドロールを追い回し続けるミッキ。ところが、そんな2人の前に殺された少女の父親ギディが現われ…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=349765

「赤ずきんちゃん」をモチーフにしているからオオカミなのでしょうが、映像はシンプルなのにすごくきれいです。
それだけに拷問シーンがアイタタタではあるのですが、ホラー映画耐性のせいで見る分には全然大丈夫でした。

登場人物

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※左から被疑者のドロール、刑事のミッキ、被害者の父のギディ。ギディのパパのファッションがオシャレですね。

ミッキ:容疑者を吐かせるのに暴力を使う乱暴な刑事。離婚してバツイチであり、娘がいる。
ギディ:被害者の父。性的暴行を加えられたうえ、生きたまま首を切られた娘のために、ドロールから真実を聞きだそうとする。
ドロール:学校の教師をしているが、幼女殺害・強姦の容疑者となり、肩身の狭い生活をしている。バツイチで離れて暮らす娘がいる。

ネタバレ

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女児連続殺人事件が続く、イスラエルのある都市。

被疑者のドロールを暴行して、自白を引き出そうとする刑事・ミッキ。
しかしその様子を署長に知られて交通課に異動になります。

一方、生徒のテストの答案に「レ○プ魔」「ロリコン」とか落書きされるドロール先生。

そし被害者の父・ギディはその頃、家を下見しています。
「大声を出しても声が聞こえないような地下室を探している」と言うこの人。 しかもソファを改造して、拘束用のベルトをつけています。

さらに新しい女の子の死体が見つかり、それを調査していたミッキですが、ドロールへの暴行の一部始終を、よくわからないけど知らない若者に盗撮されており、動画が拡散。署長まで知るところになります。彼はとうとう停職処分になってしまいます。

イライラするミッキはドロールから本当のことを聞きだすためにスタンガンで襲うことに。
逃げるドロール、でも車の隙間に挟まってしまい、そこから抜け出すことができません。どういう描写だよ。

ドロールを追い詰めるミッキですが、そこに現れたのが被疑者のパパであるギディ。
彼はミッキと共謀してドロールから真実を引き出すことを提案します。
そのためにはどんな手段も厭わないことを誓うギディですが、彼が怒るのも当然。
ギディは娘の遺体の頭部を探しています。
犯人は被害者の女の子たちに鎮静剤入りのケーキを食べさせられ、下半身を両方ともレイプされ(あまりにもひどいから詳細が書けない……お察しください)、眠ったままで頭部を切断されたというおぞましい犯行をしているのです。それを絵本形式でドロールに語るギディ。

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まずはドロールの指を折ることにした彼ら。
ミッキが引くほど、ギディはノリノリです。トンカチでゴンゴンドロールの手の甲を打つギディを窘めようとするミッキはですが、ブン殴られて気絶。
実はギディはドロールを殺すまで痛めつけるつもりで、その罪を着せるためにミッキを選んだのです。並んで監禁される二人。

ギディは鎮静剤入りのケーキ作りを始めます。
「同じことを全部してやる」という約束を守るためなのですが、几帳面なギディの性格がよくわかる、美味しそうなケーキです。
しかし、ドロールは犯行を認めません。

そこにギディの父親がやってきます。
見た目は同じじいさんにしか見えねぇ……。じいさん(自分の父)に犯行を隠しておこうとしたギディですが、あっさりバレちゃいます。
「俺だって孫を殺されて怒っている!」
じいさんも立ち上がります。

ここからのやり取りが少しコントっぽい。
・ドロールと間違ってミッキ刑事にすごむじいさん
・バーナーを使って、ドロールの胸元を焦がすギディ
じいさん「ずっとこの匂いに飢えていたんだ、ばあさんに肉を制限されているからのう」
・何も告白しないドロールの股間をバーナーで焼こうとするじじい 「急所を責めれば誰でも口をわるぞい」

しかし、ミッキとドロールは示し合わせて偽の頭部の場所を教え、ギディを外出させます。時間稼ぎをして逃げるためです。
娘の頭を探しに、偽情報に踊らされて出かけるギディ。
見張りのじじいは「おっと、薬の時間じゃ。その前に何か食べないといけないんじゃ」と鎮痛剤入りのケーキをもぐもぐ。そのまま寝ちゃいます。かわいい。

刑事はなんとか自分だけ拘束を解き、懇願するドロールを置いて逃げます。
ドロールはケガをしているから足手まといだ、自分がまずは助けを呼んでくる!というわけ。ず、ずるいなあ。
ガレージの子ども用自転車に乗り、ひたすら森を走るミッキ。
途中でこのあたりに住む馬に乗るアラブ人に出会い、電話を借りて警察に連絡します(このあたり、イスラエル人とアラブ人の微妙な力関係をも描いているようであります)。
しかし、そこで衝撃的な事実が判明。

「奥さんが話があるんだって」と言われ、電話を変わられるミッキ。すると憔悴した奥さんが言い出すのです。
「あなた、娘が行方不明なの」と。
ミッキの娘は彼が購入した携帯電話を持っているのですが、連絡がとれなくなっています。
娘はバレエ教室の帰りに行方不明になった様子。

ミッキはすべてを悟り、ダッシュでギディの家に戻ります。
しかし先に帰ったギディが激怒し、ドロールの首を切り落とそうとしています。
それを止めるミッキ。しかし、ドロールは死んでしまいます。
もうこれで永久に子どもの行方が分からない。
その頃ミッキの同僚は、ドロールの家を捜索して「収穫ゼロ」という結論を出しています。
しかしこの家ドロールの家の壁の裏側では、女の子がベッドの上に乗って倒れているのです。

バレエの稽古着を着た少女の姿が……!

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(ドロール先生のド・変態極まれりシーン)

途中で、ドロールが妻に電話をかけて娘の誕生日の話をするというシーンがあるのですが、そこで女の子のバレエ教室のレッスン風景を見つめながら話しているので、てっきり「ああ、娘をこっそり見ているのかしら」と思っていたのですが、獲物を物色していただけだったというわけ。

また、その直後に誕生日ケーキを女の子に差し出して吹き消させるシーンもあるのですが、それは彼の子どもではなくミッキの娘だったのであろうことも推測できます。

つまりドロールはもう、まぎれもないド・変態の犯人だったという事実がじんわりと残り、大変に後味が悪い。
てっきり実は犯人は裏の裏をかいてという話かと思いきや、直球のストーリーでした。

ただ、タランティーノ監督がすっごく褒めてたそうですが、それだけにハードル上がりまくりだとは思いました。それさえなければ、もっと楽しめたような気もする。