笑顔に殺される…!?死の連鎖よりも「誰からも信じてもらえない」ことが怖い『SMILE/スマイル』

低予算映画として公開されつつもスマッシュヒットを記録したという話題作ホラー『SMILE/スマイル』。

まあなんといっても注目を集めたのは主演がケヴィン・ベーコンの娘、ソシー・ベーコンだというところなのか?ネトフリのドラマは未視聴なので何とも言えないんですけども、わりと面白い女優さんですね。ギャッ!という顔をしているとお父さんっぽく見えるのが味わい深い。

 

精神科医をしている主人公・ローズは、目の前で女性患者が自死してしまいショックを受ける。彼女はとびきりの笑顔を浮かべたまま自分の首をかききった―。

しかしその事件をきっかけに、彼女は奇妙な現象に悩まされるようになる。ペットの変死、周囲の親しい人々が向ける謎の「笑顔」… 死の連鎖に巻き込まれた彼女だが、“それ”は彼女に乗り移ってじわじわと苦しめる…

 

など、意味ありげにストーリーを書いてしまいました。

この映画がつらくて悲しい理由はただひとつ。ローズが誰からも愛されていないということがひたすら描かれるから。完璧な恋人もローズを疑い、彼女をおかしいと思って距離を置きます。その過程で、「こいつ全然完璧な恋人じゃないじゃん」とイライラさせられるというか。

ローズの姉(こいつがマジクソ女は彼女を息子の誕生日会に呼びますが、ローズが購入したプレゼントは彼女のペットの遺体と差し替えられていて…!?という、すごくむごたらしい展開もありました。

甥っ子がローズからの誕生日プレゼントとして取り出したものが猫の遺体だったところは、思わずヒーッとなりました。その後、取り乱したローズが転んだ拍子にガラスのテーブルに突っ込んでケガしちゃってパーティがめちゃくちゃになるのもつらすぎる。

こういう「周囲の人に誤解される」系のホラーって本当につらい。この手の場面だけ早送りしちゃうくらい嫌いです。みんな味方でよくない!?(味方になったらそれはそれで、全員退場するんだろうけど…)

 

精神疾患と思いきや、悪霊に憑りつかれて狂気をはらんでしまった人々を辿るうちに、ローズは「タイムリミット」の存在を知ります。早く事態を解決しなければ、自分も死を選んでしまうだろうことを把握…

周囲の人々は、ローズが精神疾患になったと勘違いしたまま。彼女と距離を取り遠ざけるなかで、おそらく元カレ(明言はされない)の刑事だけがローズを助けてくれます。

生き残る手段はあるのですが、それは悪霊よりもむごたらしく自分の手で他の人間を殺めること。そして、それを誰かに目撃させること―(基本的に、被害者は悪霊によって自死させられるのですが、その笑顔の死を目撃した人が次のターゲットとなる)。ローズは患者を殺して同僚にそれを目撃されるか悩みますが、自分の考えていることの恐ろしさに気付き、断念。改めて悪霊と対決する決意を固めます。

このあたりの展開もうまい。身寄りもおそらくない、重い精神病の患者なら罪悪感がないんじゃ?と考えたであろうローズですが、悪夢に悩まされるなか、殺しても良い人なんていないということに改めて気付きます。「私には無理!」という結論に至るまでの流れが、非常に共感できる。そりゃあ無理だよ! 具合が悪い時に見る悪夢のような感じがします。

 

 

死の連鎖を辿るうち、自分の生家に辿り着いたローズ。ローズは悪霊と対峙するのですが…

この悪霊がめちゃくちゃデカい。八尺様みたいな身長で、全体的に白っぽくてぼんやりしたシルエット。VRホラーみたいなのっぺりした造形に見えるけど、絶妙に怖いサイズと質感ではある。「呪怨」のゲームみたいな感じ… wiiの頃のグラフィックのようなのっぺりがさがさした感じ…(いや、陳腐だと言ってるんじゃないですよ!)

廃屋でこいつとしばきあうのはいかにもキツそうです。

 

結局この映画はバッドエンド(助かったと思ったら彼女の夢で、ローズは乗っ取られた後に元カレ刑事にとびきりの笑顔を向けてターゲットを定めている)なのですが、続編の製作が決定したというニュースを耳にしたような…?

次はキャストが一新されるのかな。

 

この映画はもしかして都市伝説の「THIS MAN」をイメージしているところもあるのだろうか、と妄想したりもする。はりついたような笑顔、いろんな悪夢に何度も登場するという特徴。都市伝説的な広まり方をして恐れられるところも同じ。まあ、そもそも性別が違うのでまったく同じである!とは言えないのですが…

ちなみに、邦画史上最も怖い女性の笑顔は『20世紀少年』に出てきた小池栄子の笑みだと思っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>