悪人をひたすら手にかける「善人の血統」の狡猾さ『グッド・シリアルキラー』

悪い人間を(法的な権利もないのに)裁こうとするのは善なのか?それとも、悪なのか?

 

 

などともっともらしいひとことから始まりましたが、2018年のアメリカ映画『グッド・シリアルキラー』を見ました。製作はプラムハウス。『スプリット』(女子高生を監禁するソシオパス)、『パージ』(シリーズ化された超問題作)、『ハッピー・デス・デイ』(続編が完全にSFですき)など、手掛けた作品の顔ぶれはどれも“過激”。ユニークで衝撃的な設定に加え、わりとはっきりとしたホラー描写を挿入してくる印象(とはいえR指定にならないように気を遣っているような)が強い。

この作品は、タイトルのまま。家庭でも職場でも良き夫、良き社会人だが、実は悪人を手にかけまくっている殺人鬼が主人公。彼はスクールカウンセラーであり、その担当生徒たちの毒親がターゲット… という映画です。つまり、善人であり、シリアルキラーでもある主人公という意味。

 

原題は『BLOODLINE』。直訳すると「血統」「血筋」みたいな感じです。そう、原題からはまた違う印象― 要はネタバレがあります。

つまり、主人公のシリアルキラーぶりは「血筋」。彼の母親は息子と自分にとって有害な夫(主人公の父親)を手にかけて、遺体を埋めた過去を持つ女(しかも、おそらく犯行はそれに留まらない)。主人公はそれをばっちり見ていて、影響を受けてしまったというわけ。でも実際のところ、親も子供も連続○人犯ってパターン聞いたことがないですけどね。実在しないで欲しいものだが。

 

もともと主人公夫婦に子供が生まれ、夜泣きがひどいとか母乳を飲まないとかの子育てノイローゼで妻も疲弊。その影響で夫も寝不足でボロボロに。その結果、彼は生徒たちを苦しめる大人たち(DVもひどいが、強〇だってやっぱりひどすぎる)を罰するため殺人に走る… ということかと思ったら、実は前からごりごりに人を襲っていたらしいという過去も暴かれます。

 

そもそも、妻はわりと口と態度が悪い看護師の言うことを真に受けてずっと苦しんでいるのですが(母乳じゃないとダメとかいろいろ面倒くさくて時代錯誤なことを言ってくる)、この看護師もターゲットに…! でも、彼女を襲ったのは… 主人公ではなく、主人公の母親!

そう、主人公は思いつきでシリアルキラーになったのではなく思いっきり血筋!というところが強調されるのですが、「母親がマジもんのソシオパス」ってあまりホラー映画でも登場しませんね。『シリアル・ママ』とか懐かしいけど、有名な映画だとそのくらいか?

 

妻は夫の蛮行に気が付くのですが、主人公とその母はそのことも予測済み。妻が不幸な家庭の出身だからこそ幸せな家庭にこだわっていること、帰る実家もないことを逆手に取り、彼女すらその血筋に組み込んでしまうのです。

夫を逮捕させないために、自らの手を汚す妻(犯行に気付いた生徒に手をかけ、罪をなすりつけた)。そしてその妻を受け入れ、幸せな家庭の絆はより強固なものに。

2人はベビーベッドで寝ている息子をじーっと見下ろします。この見下ろしている感じ、幸せそうでめちゃくちゃ怖い。息子目線でベッドの中から大人たちを見上げているのですが、顔は笑っているのに目が笑ってないこの感じ。真顔でギンギンに見つめてくるのがすごい圧。

おそらく、息子にもこの“血筋”が受け継がれるのかもしれない… と想像させるところで映画は終わっています。

 

主人公を演じたショーン・ウィリアム・スコットって、『アメリカン・パイ』での端役が映画初出演だった模様。その後はコメディ作品の出演が多かったようですが、『ファイナル・デスティネーション』のオリジナルキャストでもあります。

最近はテレビシリーズの『リーサル・ウェポン』にメインキャストで出ているみたい。

この方、ハンサムなんだけど顔にアクがあって(濃いというのもあるけれど、ちょっとクセのあるイケメンって感じ)ホラー映画とは相性が良いと思います。またどこかでお見掛けしたいです。

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