実はまだまだアッサリな共依存…?精神病棟からの逃亡劇とその愛を描くフランス映画『依存魔』

精神が病んでしまった人を愛することはたやすくはない。

そのことを教えてくれる映画『依存魔』。ベルギー/フランス映画。2019年製作。

 

精神的に不安定で病院に収容された少女・グロリアと仲良くなる少年・ポール。彼は精神病棟で働く母に依存され、管理され続ける日々を送っていた。彼にとって、美しくかわいらしいグロリアは魅力的に映る。

グロリアとの接触を禁止されるも、ポールは少しずつ彼女に近付く。しかし、女医にそれを見つかり、諍いの末に彼女を階下に突き落としてしまう。

そのまま病院を飛び出し、グロリアの祖父の持つ別荘に逃げることにした彼ら。

しかし徐々にグロリアの衝動的で暴力的な一面が露わになっていく。親切な夫婦の船を焼き、彼らを助けようとした男性・ヒンケルの首を絞め、彼らはそれでも愛を確かめようとし続ける。

 

本筋とは関係ないですが、ヒンケルとポール2人のシーンはとてもよかった。ヒンケルは亡くなった奥さんのことをずっと恋しく思っていて、自分たち夫婦のことを「一度つがいになった相手とは離れず、そのまま添い遂げる」習性のある鳥になぞらえ、その鳥の鳴き声を聞くたびに涙を流す。その鳥のタトゥーを背中に入れているヒンケル。ポールは大人びたしぐさで、彼の肩を抱き寄せる。

この場面はすごくしみましたね。年齢差がある友人たちって感じで。ヒンケルはポールの良き理解者になってくれそうだった(旅のなかで、唯一ポールの抱えている闇を察知してくれた大人でもある)のに、まさかあんなことになるとは…!

 

まず、グロリアについて。

誰もポールやグロリアに害を加えようとしていないのに、グロリアは暴走してしまう。鶏の首輪の番号を見て、勝手に暗号だとこじつけてしまう精神的にアレレな面が中盤に出てくるあたりで「あっ、これは…」と察してしまいます。性的な魅力でポールを魅了しようとするあたりも然り(早熟なのか、そういう手段で今まで成功した例があるからなのか?)。

彼女は自分はまともであり、精神病院に入れられたのは遺産目当ての親戚のせいだと主張していました。

※そもそも映画を見ている側としては、逃亡し始めの時に知らない人の家から食べ物や毛布を盗んだ時点で「この女…」という気持ちにはなっていた

でも、ポールとの喧嘩の延長線で親切な夫婦の船を突然燃やしだすので、もうわけがわからない。ひとりでキーッとなって、そのまま放火しちゃうのです。ヒステリーを起こして、ヒンケルの殺害命令まで出すんだよ。10代の彼氏に。

そしてポールに対し、何度も「愛してる」「離さないで」みたいなことを言い続け、自分のそばに置こうとするところもすごい重たさであります。

 

しかし、それよりもポールの置かれている環境のほうが興味深くはある。ポールの母も異常に息子を溺愛していて、自分が眠るまで本を読ませたり、グロリアの話をするポールに怒ったりするんですね。もう、依存されるエリートを養成する環境。ポールもそれに疑問を抱かず、趣味は小鳥と遊ぶことっていう… 妖精なのアナタ?と言いたくなる優しい青年。

当初、ポールの母親は自分が病棟で働いているスタッフだと信じる患者なのか?と思ったくらい。

メンタル不安定女子の取り扱いが異常にうまいからこそ、おかしいぞ?となるまで時間がかかったのでしょうか。

それにフランス人カップルらしい情熱的な愛情表現も絡み合い、もうネチョネチョグチョグチョの関係がひたすら展開するのであります。

でも、想像よりは依存してなかったですね。金銭的な依存とか、アルコールや薬物への依存とか、そういうものが描かれていなかったからでしょうか?

私は好きなんだけど、ファンなんだけど!坂口○里ちゃんの元旦那さんに対する依存ともろもろのトラブルを思い起こしてしまうと、事実のほうがよほど奇なりと思ってしまう。

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