あー、お腹いっぱいだよぉ!
と叫びたくなるくらい、いい。ものすごく、いい。
『死霊のはらわた』公開40周年記念。しかも製作総指揮はサム・ライミに加えてオリジナル主演のブルース・キャンベルという個人的豪華製作陣!
2023年『死霊のはらわた ライジング』。劇場未公開だと聞いて驚いた。
正直、この映画は「死霊のはらわた」を名乗らなくともいいのでは?とか、なんかゲームっぽいな…(ホラゲーみたいな脚本と展開)という気持ちにはなるのですが、猛スピードでゴア描写に突入するので「まっどうでもいいか!」というテンションに切り替わります。
いいなと思うところ。
- ホラーを見慣れた私でさえもめちゃくちゃ怖いシーンがある。痛い場面、残虐な場面、禍々しい場面など、魅せ方が素晴らしい。プロ!
- 血がたくさん出てくる(血糊をおよそ6500リットル使用したそうです)正統派スプラッター。後半は全員ずっと血をかぶっている
- 原作をリスペクトしている…というよりも(製作総指揮はオリジナルを作ったご本人たちですし)、ちゃんと設定を引き継いだものを作ろうという気概を感じる。
- ホラー映画においての最大の“背骨”となり得る「どうして私がこんな目に遭わなくちゃいけないの」という理不尽さが終始漂うのがたまらない。出てくるのがいい人ばかりなのもたまらない。
- タイトルが出てくるシーンカッケー
- マンションに(フロアごと)閉じ込められるの怖い。ゾクゾクします
残念なところ
- 主人公がアッシュじゃないのは仕方ないけど、バンギャ妊婦って唐突ですよね。死霊のはらわたの魅力のひとつに、「青年が主演のホラー映画」ってところもあったと思うんですけど…
- オープニングがオリジナルリスペクトの森ダッシュなんだけど、ドローンってやっぱり迫力ないですね。
- ムチャクチャにガンバル→ギャグにしか見えないという死霊のはらわた独特の雰囲気はほぼなし。怖くて陰鬱な場面ばかり。ちょっとくらいクスクスさせてほしい。
- 画面が暗いシーンが多いので自宅で昼間に鑑賞するのには向かないかも…
でも。ホント満足してるのよ!
ストーリーを振り返りながら解説しよう。
冒頭は山小屋でまったり過ごしている若者たち。
ジェシカと呼ばれる女の子がまず悪魔に憑依されます。親友のテレサが読む『嵐が丘』を暗唱しながら襲ってくるジェシカ(ちょっと怖く読めるようなシーンをおどろおどろしく暗唱してくる)。
知性がある悪魔だなあ。日本ならなんだろ。乱歩とか?
そして彼女の恋人を「脳みそがない(=頭が悪い)」とからかったテレサを、「ダーレが脳みそないだって~!?」と絶叫しながら頭蓋骨と髪の毛を頭からはぎとるジェシカ。直球のギャグに感じなくもない。脳みそが御開帳するテレサかわいそう。
こ、これは悪魔の所業…
ジェシカの恋人・ケイレブは湖に引きずり込まれてわざわざ生首を放られ、テレサはまだ微妙に生きてて(出血多量にならないのかしら…)、ジェシカは湖の上にふわふわ浮き上がり、その背景に映画のタイトルドーン!ですよ。
このタイトルの出方かっこいいんだよな。
ここで山小屋でなにか騒動があったのか~!?と思ったら、まさかの「1日前」。そう、本筋は別のストーリーなんです。
ここで満を持して主人公・ベスの登場であります。彼女はギターの調律師をしており(そんな仕事あるのか…)、筋金入りのバンギャ。そして子供を妊娠したばかり。どうするか悩んだ彼女は、姉家族のもとを訪ねるのですが、姉も少し前に離婚していたことを知り…
しかも、姉は妹を頼ろうと電話をしていたのに、妹は電話に出ず、留守電も聞かなかった。
ああ、気まずい…
そんななか、突然起こる地震。その地震のせいで地下から例の本(わりと見た目がマイルドになっている気がするけど気のせいですか?)やらレコードやらが噴出し、それを拾って持って帰ってきてしまう姉息子・ダニー。長女のブリジットはそれをいさめますが、ダニーは本にたまたま血をたらして、レコードも再生しちゃって、悪魔が蘇っちゃって… と、テンポよく話が進みます。
ダニーはDJプレイ好きのアホ青年、ブリジットはちょっと意識高い系で口が悪い女の子、末っ子のキャシーは無邪気でかわいい幼女です。ケンカばかりしてるけど仲がいいのが微笑ましい家族ですが…
まず憑依されたのが母親のエリーズ。落下するエレベーターの中で蔦にからまれるシーンはちょっとシュールですが、ブチギレながらたまごをぶち割るシーンやら、マンションのご近所さんを襲って目玉を食いちぎるシーンとか、浴室で天井に張り付くシーンとかはまだそこまで怖くはない。
そこよりも、憑依が転移していき、長女のブリジットが悪魔憑きになるシーンから怖さが加速していく。
彼女がガラスをバリバリ食べ、ベスを襲って首に棒が刺さって倒れるシーンでは、とりかえしのつかなさを感じさせてくれます。この女の子がまた演技がうまいのよ。
さらに、末っ子のキャシーをかばって兄のダニーが犠牲に。腕を刺されまくりながらも悪魔憑きのブリジットを燃やして対抗。しかし、これでダニーも悪魔憑きに…
そう、ゾンビになるよりも悪魔憑きになるほうが「悪意」がくっきり残るから怖い。
ベスとキャシーは部屋から出てマンション脱出を目指します。しかし、既にマンション全体が悪意に飲み込まれた後。散弾銃を持つベスの前に、悪魔に憑かれた家族と隣人たちが現れ「夜明け前にみんな死ぬ、夜明け前に…」と大合唱を始めます。このシーンが本当に怖い。さっきまで仲良くしていた人たちが全員、むきだしの悪意をこちらに向けてくるのですから。
さらにベスたちがエレベーターに乗り込むも、中には血がドバドバ入ってきます。階数ボタンの裏側に血がたまっていくのが見えるのが変な感じ。欽ちゃんの仮装大賞のボタンみたい。
目的の階に到着すると、扉が開いて血がドバー!!!『シャイニング』のあのシーンへのオマージュなんだろうか、とにかくすごい。ビジュアルが鮮烈なのである。
この間、本はひとりでぺらぺらめくれたり戻ったりと大忙しで迫真の演技を見せてくれます。
地下駐車場につくも、追いかけてきたエリーズ、ブリジット、ダニーはクモのように絡まり合って生存者を翻弄。伊藤潤二みがあります。『うずまき』でこんなの見た気がする。
ベスはたまたま入手したチェーンソーでかつての家族に立ち向かうことに。そして粉砕機(庭師が庭木を粉砕するため車に搭載している?)で悪魔憑きの家族を粉々にします。この女、躊躇しないのがすごい。
そしてマンションのなかで唯一のんびり生存していた女子が旅行に出かけようと地下駐車場に登場。彼女こそ、冒頭で大暴れしていたジェシカだということが明かされます。彼女ももちろん憑依され…ってところでエンド。
頑張っても良さがなかなか伝えられていない気がする… ほんとにすごいんだけど。
DVD買いたいな。それくらい好き。