こんな目に遭いたくない、よし引きこもろう!友達も彼氏もいらん!「FALL/フォール」

FALL

極限系のホラーは好きでよく見ます。一時期流行していたのが海の中に取り残される系。サメに襲われる、船に上がれない、海上に上がれない、水中の檻の中に閉じ込められた…なんてものもありました。

でも、こういった類の映画は低予算でも作りやすいためか量産されやすく、まさに玉石混合状態。しかも、「石」のほうがめちゃくちゃ多いのよね。

極限状態でさまざまな困難に見舞われる。その困難を克服してサバイバルする。というのがこういうホラーを楽しむポイントですけれども、既視感のある困難ばかりだとほんっとにつまらない。

せめて、既視感があってもめちゃくちゃお金がかかっているか、俳優が豪華であってほしい。

でも、最高なのは脚本が面白い映画。

その点、この映画は成し遂げている。オリジナリティだけじゃない。人間の悲しみ、怒り、苦しみ、葛藤、生への執着が詰まっている。あと、ついでにニーガンも!

上600メートル、Lサイズのピザぐらいの足場の上で立ち往生。2022年のアメリカ映画『FALL/フォール』。王様のブランチで紹介してたくらいだから、広報にも意欲的な作品だったんだろうか。

(王様のブランチで取り上げられていると萎えるのってなんでだろうね)

そうそう、前述しましたが、主人公のパパ役でウォーキング・デッドのニーガンを演じていたジェフリー・ディーン・モーガンが出ています。堅物だけど優しいパパを演じているのをみると、もともとこういう役が多い役者さんなのかな?と思ったりもしました。

主人公は婚約者を亡くしたベッキー。目の前で滑落事故が起こり、夫を死なせてしまったことで自暴自棄になり、父親とも仲違いしてしまいます。

そこで親友のハンター(度胸試し系ユーチューバー)に誘われ、600メートル高のテレビ塔にクライミングすることに。しかし皆さんご存じ、降りられなくなってしまいました。

伏線がわかりやすく登場するので、推測するのも楽しい。

・ハンターには恋人がいないが、近しい男性がいた模様。だが、ベッキーにその話をしたがらない→どう考えても、ベッキーの死んだ恋人と付き合っていたのでは…?それかまさかのパパ…??

・充電裏技(充電器に刺さなくても電気が通っている部分にコンセントを当てると充電できる)→極限状態でこの裏技使うんだろうなあ

・ハゲタカ?ハゲワシ?が動物の死体を食べている→こいつら襲ってくるんだろうなあ

と考えていたら、全部当たりました。

それにしても、この映画で楽しいのは極限状態にも、それを脱出する方法にも、そしてストーリー展開にも裏切りが散りばめられているところにある。すべては偶然ではなく、必然なのかもしれないとも思わされる。

そもそも、塔の上ではしごが落下し、スマホも通じなくなり(ただし地上に降りれば電波は通っていると聞いて驚愕。アメリカの高大な砂漠だぜ!?)、水も食料もない。

ハンターのスマホに助けを求めるメッセージを打ち込み、ブラで包んで靴に入れて投げ落としてみるが、スマホは壊れてしまった模様。

設備として残されていたフレアガンで助けを求めて他人に気付いてもらうも、車を盗まれてしまう(すごい人でなしですけど、こんな奴いるんですね)。

しかも、ハンターが自分の死んだ彼氏と浮気していたことに気付いてしまうベッキー。盲目的に彼氏を愛し続けていたベッキーにとっては晴天の霹靂。しかも、ハンターは彼を本気で愛し、本気で苦しんでいた。でも、彼氏のダンはどうだろうか?ハンターを弄んでおきながら自分に嘘をついていたクソ男だったんじゃないか?と気付くわけです。

父親はダンのことをあまり好きではなく、そのことでベッキーは傷付いて疎遠になっていたのですが、父親が正しかったのか… と娘はがっくり。

その後、アンテナにひっかかった荷物を超絶クライミング技術で取りに行くハンター。水だけでなくドローンも回収できましたが、今度は充電不足。テレビ塔の最先端までよじ登り、なんとか充電に成功。しかし、鳥に何度も襲われてボロボロです。

しかし、ここらへんであれ?うーん?おかしくない?と気付き始めるんですよ。

途中からハンターはベッキーに指示を出しても、何もしてないんです。口だけ女?いえいえ、そうではなく… 水分やドローンの入ったカバンを取りに行く際、彼女は事故でアンテナの上に落下し、そのまま亡くなっていたのです。途中からは、すべてベッキーの幻覚だったのです。

現実から目をそらしていたベッキー。正気を取り戻すと、鳥がハンターを食べてる… ギャー!600メートルの高さの絶望よりもエグい!!!

頼みの綱のドローンでの救助要請も失敗し(最寄りのモーテルまで飛ばしたが、発見されなかった)、ベッキーはどうするのか?

まず、ベッキーを食べに来たデカ鳥を襲い返して、生のままむさぼり体力をつける。

そして、ハンターの遺体のそばに降りて、自分のスマホに助けを求めるメールを入れて、ハンターの靴にスマホを入れ(自身の靴は冒頭で落としている)、それを鳥がついばんで開けたハンターの腹の傷口の中に押し込み、遺体を下に投げ落とすのであります。

ほんとに、ほんとにこんなオチ考えられる人いる?

鳥は心無い襲撃者としての象徴かと思いきや、主人公の命を繋ぐ“食料”となるのも驚いた。

でもでもしかし、ここで注目すべきはハンターの処遇であります。親友の遺体の腹にスマホを押し込むのもすごいし、投げ落とすのもすごい(※こういう状況ならば仕方ないが、行動としてのインパクトはものすごいものがある)。

何より、結局のところ、ベッキーはハンターを憎んだり傷つけたりしたいのではなく、生きるために仕方なしに選択したというのも重みがある。彼女が亡くなっていなかったら、おそらく共倒れだったのだろう。どちらか片方の死が、片方の生存には欠かせない条件だったとも言える。

そう考えると切ないですね。

ラストはメールを受信したパパと警察がテレビ塔に到着、無事に救出されます。

とりあえず、観た後は家に引きこもりたくなる映画でした。あと、親の言うことは聞くもんだな…と思ったりもした…

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