2019年の映画『ラビッド』を見ました。
クローネンバーグ監督のオリジナルをリメイクした作品。そのせいか？全体的にめちゃくちゃ古い感じの話です。よく見たら現代的なんですけど、メイクとかファッションを1970年代に寄せているのか？
そのせいか、映画自体の価値観もちょっと古い感じがしました。
ちなみに原題も同じなんですけど、なんとなく意味を調べたら「狂犬病」って意味なのか！
主人公であるローズの夢はファッションデザイナー。しかし、性格が控えめでなかなか前に出られない… といえば聞こえはいいんですが、とにかくネガティブ。あと菜食主義者（ベジタリアンはホラー映画における盛大なフラグとも言える。どう考えてものちに肉を欲するようになる）。デザイナーを目指しているわりに、自分の洋服には無頓着でいつもウジウジ。男性にも奥手… と、小学生向け少女漫画のヒロインみたいな性格をしております。
里親に育てられたという家庭環境、さらに顔に傷があるという要因のせいでネガティブになったらしいですが…
憧れの男性にデートに誘われるも、それは幼馴染の女の子（この子は美人でモデルをしており、本当にいい子）がお膳立てしたものだった。
彼女はその気になった自分を恥じてパーティを後にするも、その直後に交通事故に巻き込まれる。
ローズは顔がめちゃくちゃになり絶望。しかし、最新技術による再生医療の被験者になることで高額な医療費を大幅節約。美しく生まれ変わり、デザイナーとしても実力発揮する。
しかし、彼女は飢えて肉を求めるようになり、彼女にキスされた男たちからまた「感染」が広がっていく…
という流れなのであります。
ちょっと面白いなと思ったのが、手術中に肌に埋め込むのが近未来的なジェルパットみたいなものなんですけど、紫色にラメラメっと光っていて、絶望的に体に悪そうでした。青いライスと同じくらい体に悪そう。あとセーラームーンとかプリキュアの変身シーンの背景でしか見たことない色。
あと、手術をする時に医師や看護師たちが赤い装束に身を包むのですが、カルト教団？と思ったら単なる趣味でした。仰々しいというか、ちょっとアホっぽい。コスプレ感があるからか？
オチも鮮烈です。
ファッションショーのシーンがふんだんに取り込まれていますが、本格的でした。邦画でファッションショーが出てくると、大抵がチープなのが悲しい。こういう時によく使われる「学園祭レベル」というよりも、ホストクラブのナンバーワンホストを決めるコンテストみたいなレベルにしか見えないのはなぜなのでしょうか…
ローズはファッションショーのトリのドレスを担当し、いつも味方だった幼馴染女子がそのモデルを担当。しかし、既に感染していた他モデルたちによってショーはムチャクチャになり、幼馴染も感染・発症後に撃たれてしまう。
病院に運ばれたローズは担当医師と再会するが、彼は自分の妻を実験体にして不老不死の研究に明け暮れているマッドサイエンティストだった。
ブラッドは死を迎え、ローズはミイラ化している医師妻の息の根を止めた後に自死する。しかし、既に不老不死となっていたローズは蘇り、病院の地下室でモルモットとして生きることが確定する…
ヒロインの相手役であるブラッドは報道志望で、ローズに親切にするふりをして実は黒幕ドクターとつながっていたという展開もユニークではある。ホラー映画と相性の良いクズですね！しかも、本人がそれを認めないのもいい。実際、本当に彼女が好きで親切にしていたのか、したたかな男だったのかは明確にされません。まあ、クズですね！
しかし、やはり何より気になるのは異形の造形。クローネンバーグらしい。マッドサイエンティストの妻が地下室の壁に同化してぼろぼろになりながらも動いているさまや、ローズの脇の下から生えてくるのがどうみても男性器っぽい造形というのもインパクトがある。いや、脇からチ〇コってさあ、血を飲んだり人肉を欲したりするよりも絶望だよ。自分の脇見たらイチモツがあるんだぜ！？
それにくわえて、女性や弱者へのあたりが異常に強いのも怖かった。ローズが具合が悪くて路地裏で倒れるんですけど、「あっ、変な女がいるぞ」って言いながら男たちが近寄ってくるシーンは狂気を感じましたね。変な女ってなんなんだろう。治安が悪い地域だから倒れている人＝薬物中毒とか、そういう意味？心配しないの？すげーニヤニヤしながら嘲笑っている感じが本当に怖い。人の不幸を喜んでいる感じでしたね。
あと、マッドサイエンティストってけっこうな確率で死に至る病の妻を実験体にしたり、冷凍保存したり、無理やり生かしたりしてない？愛が人を狂わせるのか？技術さえあれば、人は愛するパートナーのために禁断の神の分野に手を伸ばそうとするのか？そのへんがドライならマッドサイエンティストにならないんですかね。
テレビ東京のお昼の時間帯にやっている映画みがありました。お好きな方はぜひ。