1年に12時間だけ、殺人を含むすべての犯罪が合法化される―
そんな夢のような(悪夢)設定で我々を賑わせてきたパージですが、とうとうアメリカがぶっ壊れるという驚異の設定を見せつけてきたのが今作。『フォーエバー・パージ』。2022年製作。
メキシコのマフィアに追われてアメリカに逃げてきたメキシコ移民が、パージのターゲットとなりつつも逃亡するお話。しかも、自分たちにほんのり悪意がある白人たちと一緒に…!
裕福な白人たちは鉄壁の要塞を築いて、貧乏人はほったらかし。ガス抜きにもなりゃしない!パージがあっても何が変わるわけでもない!そんな現状に嫌気がさした白人たちが暴れまわる、というどうしようもない展開であります。
とはいえ、「金持ちを襲うぜヒャッハー」ではなく、あくまで悪として描かれるのは白人至上主義の差別者たち。彼らは白人以外の人物を執拗に攻撃してくるのです。これがめちゃしつこい。
最終的にはアメリカ原住民たちの助けを借り、メキシコへの逃亡に成功するという流れなのですが。アメリカ人=白人!それ以外の奴らは出ていけ!と思っていた人たちがメキシコに亡命するわけですから、まぁ皮肉な展開でもあるでしょうが、ラストで出産シーンがあったんでそんなんぶっ飛びましたね。無事に子供産まれてよかったねぇ的なほっこりニコニコエンド。悪人、ゼロ。えっ、これ「パージ」シリーズでしょ?
オリジナル(第一作)は、恵まれた白人一家をパージしにくる集団が黒幕でした。顔は見えない。誰かわからない。もしかして彼らを水面下で妬む近隣住民?それとも彼らを嫌っている他の誰か? みたいな、得体のしれない者に襲われる恐怖が上乗せされて、より怖かった気がする。
二作目の人間狩りのシーンもちょっとコテコテだけどすき。
でも、政治的な展開が挿入されるようになり、主義・主張が張り巡らされるようになり… 怖さは急減して、ドンパチアクションとカーアクションがもりもりてんこもり、という感じですね。
何にもゾッとしない。もうホラーじゃないのよ。
よかったところももちろんあって、ヒロインのアデラを演じたアナ・デ・ラ・レゲラは本当にかっこよかった。麻薬カルテルと戦う自警団にいたという設定もいい。
ただ、ほんとに感じるものがない。二作目、三作目あたりでごり押ししていたファッショナブルさ、奇抜さみたいなものももうないし。
といいつつ、このシリーズはまだたらたらと続くと思います。
パージされた後のアメリカでどう生き残るか、かな。それとも、パージされた後だからこそ、新しいアメリカを建国するんだ!という展開かな。まあ、もう飽食しましたけども。