バカしかいない!ゾンビ映画じゃないけどゾンビサバイバル?『テリトリー・オブ・ザ・デッド』

テリトリーオブザデッド

ホラー映画で生き残れる条件といえば、いくつかある。

たとえば“純潔”。あるいは“子供”。

両方とも“無垢”であることから殺される対象になりにくい…ということなのでしょうが、もうひとつ生き残る手段はある。

“バカ”であること。

もちろん、集団でゾンビに襲われた時にピュアなバカはみんなの犠牲になりがちではあります。

でも、バカしかいないホラー映画ならば?

より熱くてまっすぐなバカが生き残る。

イギリスのホラーコメディ『テリトリー・オブ・ザ・デッド』を見ました。2018年製作。

こちら、ゾンビ映画として紹介されている(DVDのジャケットにもゾンビ映画界のニューウェイブと書かれている)のですが、ゾンビ映画じゃないっす!

バチェラーパーティーに参加したおバカなグループ。彼らはゾンビの潜む森に潜入するサバイバルゲームに挑戦しますが、気が付けば運営スタッフをひとり殺してしまい…??

おバカグループは、元軍人含む運営グループと本当の殺し合いになってしまう!

という感じ。

ゾンビが出てくる!とかないです。

10年くらい前に流行した「バチェラーパーティで酔いすぎて記憶失って二日酔いで、なんだかよくわからないけれど花婿が消えたから探しに行こう」系の映画に、申し訳程度にゾンビ要素を足した感じ。

 

結婚を控えたサム、その義父のジェラルドを中心に、サムの友達のマイルズ(チャラい弁護士)、息子大好きなトビー、アーミーオタクでちょっとおかしいエリックが主要メンバーという感じ。

そこに、アホでドラッグ中毒だけど気のいいチーズ、自分はサムの親友だと信じ込んでいるアル、サムの妹の彼氏(って言われてたけど結婚しているっぽいから旦那か?)でクールなブランドンが加わります。

キャラクターの見た目がわかりやすくバラバラなのが助かります。それぞれのキャラをしっかり外見でもわからせてくれるのはもちろん、サムが臆病でウジウジしがちな情けない男(ただ、わりと態度はデカい)っていうのも演技でよく表現されています。

 

ストーリーは前半少し停滞している印象がありますが、後半になるとのめり込むようにみてしまった。

噛みあわなさそうなジェラルドとチーズがすぐに意気投合するのはなんだか微笑ましいし、ずーっとアホな会話ばかりしてる主人公たちもバカらしくてよろしい。『ショーン・オブ・ザ・デッド』を思わせる。

サムは襲ってきたスタッフから身を守ろうとして木の枝で貫いてしまい、現実とゾンビ設定を混同しているエリックが「ゾンビだから殺さなきゃ」という理由でスタッフの後頭部を射撃。隠蔽しようとするが、やっぱりエリックのせいで運営側にそれがバレてしまう。

さらに、サバゲーのフィールド内にある民家に住んでいた(この時点で運営の杜撰さがわかる)おじいを殺してしまい、スタッフもさらに殺してしまい、それもバレ…(自殺に見せかけて車を池につっこませたが、浅くて沈まなかった)

ごりごりに武装した運営スタッフ VS よくわからないがやる気満々の主人公グループ の戦いが始まる!

ゾンビ映画のセオリーを踏襲しながら(ゾンビメイクした運営スタッフに追われて狭い部屋に逃げ込む主人公たち、でも敵はドアの隙間から顔だけ出して攻撃してくる… みたいな展開)、「俺は噛まれたからもうだめだ!」と死を選ぶアルの姿も(※相手はメイクをしているだけで普通の人間です)非常にバカバカしい。

唯一サムを見下しているブランドンは仲間を裏切ろうとして死亡(この特殊メイクが非常にクオリティが高く、映画としての潜在能力の高さもうかがえる)。

あとは全員ボロボロになりつつも運営スタッフをやっつけて、ジ・エンド。

義父に嫌われていることを悩んでいたサムも「結婚の許しを得ていない」という理由を聞き出し、改めて許諾を得ます。

ハッピーエンドなんだけどどことなく渋い終わり方(全員で並んでタバコを吸って終わり。もしかしたらドラッグかもしれんが)なのも好き。

展開がバカだなぁ~というところもたくさんあるのですが(身を隠すために全員で同じ棚に入ろうとするとか)、会話自体もバカクオリティが高いのもポイント高いのよ。息子の話ばっかりするトビーに「息子の話禁止!」となったら「じゃあ…何話そうか」「何話していいかわかんねぇな」と急に全員がモジモジと手探りになり、結果「女の話しかねーな!」となるのもいいですね。

途中でバチェラーパーティらしくストリッパーが出てくるのですが、ほんっとうにしょぼいストリッパーのしょっぱいショーが見られるのもおすすめです。