とにかく働きたくない!そんなダメ大人たちの決死の脱出劇『ブラック・フライデー!』

ブラックフライデー

宇宙人襲来! でもそれに立ち向かうのはしみったれた大人たち!どうする??

ティーンエイジャーだとか大学生だとかが男女入り交じり、キャーキャー言いながら宇宙人から逃げ惑ったり攫われたりする映画もよいですが、こういうホラーコメディもいいと思う。

2021年の映画『ブラック・フライデー!』を見た。

とにかく、全体的に登場人物たちが閉塞感を抱えており、「あー、働きたくねぇな!」という顔で働いているのが生々しい。それだけに、そのぬる~い現実を(ある意味)大きく変えてしまう宇宙人襲来サバイバルが刺さるのかもしれません。

登場キャラクターがまず面白い。

イケてるクールな古株店員・ケンと、潔癖症のマジメ青年・クリスが主人公です。

ケンはこの手の映画では本当に珍しい「離婚して娘がいるけど、その娘たちからめちゃくちゃ好かれている(その代わり、嫁の新しい彼氏はめちゃ嫌われている)」という設定。そのうえ、同じ店のマーニーとイチャイチャする仲ではあるが、イマイチ彼氏とは認められていない(ケンはマーニーの父親と同い年らしいが、それよりもお昼のデート・店外でのデートに誘っていないことを根に持たれている)。仕事嫌い。酒と娘が好き。

クリスは実家に住みながらも家族に疎まれ、若くして家賃を請求されるほどの関係性です(おそらく20歳前後で、しかも薄給激務)。マジメに仕事をしていても、別の要領のいい店員が表彰されるのが悔しくてたまらない。

他の店員もキャラが濃い。店員のボーナス支給なし・さらには解雇をもくろむおじいのオーナー・ブライアン。どう見ても性格の悪いドラァグクイーンにしか見えない副店長(だったかな)のブライアン。気持ちも優しく仲間思いのアーチー。ベテランおばちゃん店員のルース。表彰され続ける気の強い女性店員・アニータ。そして新人店員のエメット。

この店員たちがとにかく戦いまくる。

と、ふと気付いてひっくり返ったのですが、おじいちゃんオーナーのブライアンがブルース・キャンベルじゃないですか!!!(死霊のはらわたのアッシュでおなじみ)

そして調べたら、製作にも関わっているんですね。そう考えるとバカバカしさには納得できる。

舞台はブラックフライデーのおもちゃ屋さん。シュワルツェネッガーの主演映画で、クリスマスシーズンのおもちゃ屋さんでおもちゃを取り合う話ありましたね。あれもブラックフライデーだったのかな。

ちなみに、映画内でもブラックフライデーのなりたちについて説明セリフがあります。思わず笑った。ホラーで「そもそもブラックフライデーとは…」という話が出てくるとは思わなかったし。

の、ですが…

惜しむべきは、敵の魅力がよくわからないところ。全体的に画面が暗いので、せっかく?宇宙人に寄生された人間たち(姿はボロボロだが)がよく見えないのよ。クレーマーおばあちゃんが洋服はビリビリになって消失しているのに、「グランマ」というネックレスで判別できるところはちょっと面白かったですけど。

そもそも、隕石についてきた宇宙人のたまご?のようなものが孵化して、人間を栄養にして巨大化していく… ような設定があるのですが、一方で寄生された人間の一部はさらに感染を広げるためにウロウロしているという設定もあり、人間は吸収されている側なんだか拡大する側なんだか、謎すぎる。ある程度したら栄養素になるのか?

時間が経つと顔がけわしくなり、皮膚が削れてぐずぐずになるのは怖いけど。

なお、登場人物たちも次々脱落。最初に感染したエメット、そしてうつされたアニータ。

頼りになりそうなアーチーは仲間を守るため早々と脱落。ルースもドサクサに紛れて脱落。

生存者たちは「こんな大人になりたいわけじゃなかった」と悔いながらも、とりあえずは店の中から脱出するために力を合わせることに。

しかし、ケンは宇宙人に噛まれたせいで脱落(このあたり、ゾンビ映画っぽい)。かと思いきや、それはジョナサンの罠で…? そう、真っ暗な中で彼に噛みついたのは宇宙人ではなくジョナサン。えっ、ぽっちゃりしたおじさん(しかも知り合い)に噛みつかれたらさすがにわかるのでは…??

とは思いつつも、ブライアンがみんなの犠牲になって死に、突然ジョナサンが「ケンを死ぬように仕向けたのはアタシ」とワルい女ぶって言い出すところはなんだか面白い。理由は偉そうで憎かったからだそうです。

怒ったマーニーとクリスはジョナサンを置き去りにして脱出することに(悲しいかな、デブだから追いつけず…)。途中で生存していたケンとも合流し、ハッピーエンド。

しかし膨れ上がった宇宙人ザウルス(ピンクの肉人形のようなビジュアル)は、去っていく車のほうをたしかに向いており…

えっ、もしかして追いかけるの?下半身おもちゃ屋さんにハマったままでは?そもそも足あるの?徒歩で追いかけるのか?

などなど気になることはありましたが、ケンとマーニーもほんのり仲が進んでカップルになったし、喧嘩したクリスとも仲直りできたし… とすっきり。

ただ、惜しむべきはほんっと、画面が暗すぎるんだよぉ!

暗いほうが怖い気もするけれど、メリハリをくれよ。照明にメリハリくれよぉ!

映画のラストは『ミスト』っぽいのですが、悲壮感皆無なのがいいですね。同僚ほぼ全滅しているうえに職場もなくなったんですがね。まぁいいか!