元夫婦を介在するギクシャク人間関係は悪霊を凌駕する『フッテージ ~惨劇までの13日間~』

フッテージ

いわゆるPOV映画は、ホラー映画の定番となって久しいですね。『ブレアウィッチ・プロジェクト』から始まったこのブーム、やはり低予算でとれるってところが魅力的なのでしょうか。

増産された結果、「またこういうやつかぁ」とホラーファンに飽き飽きされてスルーされるほどになりました。とはいえ、定期的に「いいなぁ」という映画は出てきているんですけどね。

で。

2016年のアメリカ映画『フッテージ ~惨劇までの13日間~』。

この映画は低予算ホラー映画を撮影する途中で撮影陣が本当に悪霊に呪われてしまい、襲われて殺されるというシンプルなストーリー。

しかし、なんだかスゲーもん見たなという気持ちにさせられるのも事実です。

というのも、低予算ホラー映画、フッテージ・ファウンドを撮影するにあたってのあるあるがめちゃくちゃ詰め込まれているから。つまり、メタ発言・メタ行動が異常に多いんですね。

まるでメイキングを覗いているような不思議な気持ちになります。

あと、グロい。まあまあ久しぶりにああグロいと思いました。

登場人物の関係性がもう面白い。

主人公は映像作家を目指しているものの停滞中の青年。その兄が俳優兼脚本家なのですが、んもぅメチャメチャクソ。えばりんぼ。そもそもDV野郎。

そしてヒロインが兄貴の元嫁。ラブラブ中に契約書を交わし、離婚した今も訴訟を恐れて起用せざるを得ない状況に。でも、現場では喧嘩しっぱなし。

気の弱い監督は兄貴に脚本や演出を次々に変えられ、兄貴に金を借りている音響スタッフは呆れつつ付き合い、新人AD(若くてかわいい女の子)はセクハラを交わしながら顔を引きつらせ何でも屋と化す。

常にギクシャクギクシャクしているんです。兄貴のせいで。

「俺はラストで死にたくない!」とか「今までにない新しい映画を作るぞ!よし、3Dにしよう!(どうして登場人物が3Dのカメラで家族旅行を撮影するのかつじつま合わせが必要なのにノリでやりゃいいじゃん!みたいなことを言い出す)」とか、わがまま放題。

撮影中もずっとピリピリしているのですが、アメとムチを使いわける兄貴、元嫁をほだして交尾している(撮影に支障をきたさないようにらしいが、気遣いがズレていないか)ところをスタッフたちに目撃されてしまうのだ!

この目撃シーンが異常に生々しい。「あっ…」というスタッフたちのピクつきが伝わってきます。

途中で音響スタッフが降りてしまい、主人公もクビにされかけるも兄の元嫁がかわいそうすぎて残ることに。有名な映画評論家も来てルンルンする兄貴ですが!もちろん天罰は下るわけで!

悪霊が憑依した元嫁にボッコボコにボコられて肉片となり、評論家のおじさんはブッ飛んできた扉にプレスされてグシャ死、監督はお腹から悪霊が湧いてきてうめき死、ADちゃんは森に引きずり込まれ死(ちなみに音響スタッフも森の中で亡くなっていた)とわりと派手なシーンが続きます。

扉プレスはびっくりしましたね。ふっとばされるおじさんって普通に面白いなぁ(※映画やコントに限るけど)。

結局兄の元嫁を救おうとするも、憑依された彼女に殺されて壊滅というラスト。

怖くはないけど、ファミレスの隣の席で喧嘩しているカップルをチラチラ見ている時みたいな面白さはある。気まずさは恐怖を凌駕するんでしょうか。