一言も喋らないニコラス・ケイジ。やっぱり面白い俳優なのである『ウィリーズ・ワンダーランド』

2020年の『ウィリーズ・ワンダーランド』を見た。

ニコラス・ケイジの映画です。

そう聞くと「あー、もういいや。クソ映画だろ?」と言いたくなりますよね。近年、借金の返済のために映画に出まくっていたらしいですが、それにしてもひどかった。ニコラス・ケイジ自身がひどいんじゃないですよ、脚本がヒドイものが多くてねぇ…

『ペイ・ザ・ゴースト』とか『トカレフ』あたりで見るのを避けるようになりました。『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』が極めつけだった…

なので、これを見たのは完全に気まぐれ。

なお、レビューしてないけど『マッド・ダディ』は意外と面白かった。親世代が突然狂ってしまって、自分の子供を襲ってしまうという謎映画。ニコラス・ケイジとその妻も子供を襲うのですが、逆襲されて爆破に巻き込まれて焦げるという展開は新鮮でした。よ、よええ~!

あと、最後までず~っと狂っていて治らないというのも謎すぎる。正常な親の有難みを感じるべきか、ニコラス・ケイジの顔を面白がるべきか怖がるべきか、もうわかんねぇ!

そしてこの映画を見たのですが。いや、面白かったのよ。

何がすごいって、ひとっこともしゃべらないの。ニコラス・ケイジ。声優さんを呼ばなくていいから経費節減でいいね… とも思ったのですが、この謎の男のキャラクターが妙におかしい。

ストーリーはごりごりの遊園地ホラーです。殺人鬼が経営していて、キャストも全員犯罪者という設定の圧がもうすごい。彼らは遊園地(というよりも子供向けのプレイスポットですね。施設としてはマクドナルドにくっついているアミューズメントレベル)で人を殺しまくっていたが、逮捕寸前に自殺して遊園地の人形に魂を移したのだ!(チャイルド・プレイとかパペット・マスターを思い出しちゃう)

遊園地のある街の住民たちは人形たちに襲われるのを恐れ、生贄を差し出すかわりに自分たちの身の安全を求める。

そして今宵も生贄の旅行者が選ばれ、遊園地で一晩を過ごすことになる(こっそり車を壊しておいて、修理代の代わりに廃遊園地の清掃をしてもらうというめちゃくちゃな取引ではある)。

しかし選ばれた男は清掃を淡々と続け、殺しに現れた人形に逆襲してぶっ壊し、そして頑なに休憩時間には休む。休憩時間にはビールを飲み、ピンボールで遊ばなきゃダメ!というルールのもと行動し続けるのだ。

一方、保安官の娘(実は遊園地で殺された家族の生き残りである)とその仲間たちは、遊園地の破壊をもくろんでいた。彼らは人殺しに協力し続ける街に苛立っていたのだ。

男を助けようとする娘だが、逆に仲間は人形たちに殺され、男に助けられ…!?

と、怒涛の展開であります。

人形の造形がなかなか素晴らしい。気持ち悪いのよ。ティンカーベルのできそこないみたいな着ぐるみの目がイっちゃってるのが… そもそも、マジックで書いた目みたいなのがより怖い。精神が不安定な人が描いたイラストみたいな怖さがある。

この人形との戦いもアクション要素が高くて見どころがあるのですが、ニコラス・ケイジはセリフを話さないかわりに相当立ちまわっています。こんな動けるんだなぁと思ったり… いや、あんまり肉弾戦って見る機会がなくない?ニコラス・ケイジの肉弾戦よ?面白いに決まってるよ!

展開もダークファンタジーというか、世紀末の感じがする。人が消え続けている街とそれに抗おうとする若者たち、という構図もいい。

ラストは人形を殲滅、生き残った男は女の子を連れて街を出ていき、悪者は実は生きていた人形に爆破されて死亡!ボッカーン!きたねぇ花火だぜ!みたいな終わり方なんですけども。

逃げられるのに逃げずに、仕事をやりきる(なんと見張りに手を振る愛想もある)謎の男の律義さが妙におかしみを誘う。絶対に裏がありそうな男なのに、ちゃんとユニフォームのTシャツに着替えたり、ピンボールに夢中になったりするところも面白い。

こういうニコラス・ケイジならまた見たいな。スプラッター要素はつよめです。