イヤな女が生き残るために手段を選ばないという凄まじい映画『グラウンド・デス』

グラウンド・デス

イヤな女が出てくるホラー映画。

もう、ぶっちぎりで『スペル』しか出てこないのですが、ホラー映画で自己中心的な女性として描かれがちな職業があります。

マスコミ。しかも、アナウンサー(リポーターでも可)。

思えば『スクリーム』シリーズに出てくるレポーターもそんな役割をふられていますが(途中から変化していったが)、「選民意識が高い」「自己中心的で高慢」からパニックをかき乱す役、増長させる役割をあてこまれることが多いですね。それにしてもなかなかの偏見です。

とはいえ、ゲーム『SIERN』に登場したリポーターは厚顔無恥すぎる自分大好きキャラからユーザーに愛されているし(愛されてるよね??)。

『REC』のように「何も知らないで巻き込まれてしまう」という展開を簡単に作り出せますし。

最近ではこのポジションにユーチューバー、動画配信者がはめこまれるのでしょうが。

そんなこんなで2018年のデンマーク映画『グラウンド・デス』を見ました。主人公はリポーターではないけれど、おそらく事業の広報なんですね。調べたらPRコーディネーターという職業だったけど。

この主人公のリーという女、非常にイヤーな女であります。

自分が求める答えを押し付けて誘導インタビューをしたり、好意でもらったコーヒーをこっそり捨てたり。悪い人じゃないんでしょうけど、ナチュラルに無神経というか、身に着いた処世術がそつなさすぎてエグいというのか。

パニックに巻き込まれた後も他の作業員に「避難経路なんてわからない、あなたも来て!」とごねたり(当然作業員は現場を離れられない)、食事を最初に食べさせてもらっても(作業員のランチのサンドイッチを分けてもらった)当然という顔。ありがとうとか言わない。

基本的には終始イヤ~な感じの主人公がイヤ~な感じの雰囲気を作って気まずくなるだけなので、スッキリしません!

ただ、製作陣はあえてこういう女性を主人公にしようとしたのだろうし、そう考えるとなんだか味わい深いですね。

ストーリーは、3人の男女がトンネル工事の気圧作業室に閉じ込められるというもの。有毒ガスが発生しているし、酸素がなくなりかけているし…

助けが来ず、呼吸器をこっそり独占しようとして他の作業員2人に白い目で見られるリー。助けが来るものの、爆発で救助員が死亡。

なんとか作業室から出られたものの、上司にあたるイーヴォは転落死、貧しい青年・バランと協力して脱出しようとするリーですが…

バランは以前誘拐された過去があり、そのせいで借金を抱えていると知ったリー。その借金を肩代わりしてあげると中盤に言っていた彼女ですが、ラストでは「借金返してやるんだから呼吸器を使わせろ」とゴネるなど、すんごい性格の悪さを見せる。

殴られたり殺されたりしたらどうすんだという気持ちもあるし、人間の尊厳を捨てたくなるまでギリギリなのか…?という恐ろしさもあるし… イーヴォとバランはずっとまともなので、この女だけがおかしいのか…?

ラスト、救助されるもののバランはリーのことを白い目でじろじろ見まくっていて気まずいエンドです。

ちなみにリーは娘がいるのですが「(騒動に巻き込まれたせいで)お迎えを知らせるアラームがなるまで娘のことを忘れてたわ…」と言ってイーヴォを呆れさせていました。えっ、何時間も経っていて娘のこと忘れられる?そわそわしないの?という謎もあるけど。

導入部分のほうが面白く(主人公がイヤな奴ムーブを次々繰り出すのでびびる)、ラストがちょっと散漫(呼吸器をひたすら吸い合っているところとか、極限状態なんだけど若干地味でボーッとしてしまった)という珍しい映画でした。