ホラーミュージカルってあるようで、ない。
実は『死霊のはらわた』のホラーミュージカルは見に行ったことがあるのですが(主演が光ゲンジのカーくんだったなぁ、スゲー企画だ)、もちろん舞台ならたくさんありますよね。ミュージカルにホラー要素が入っているもの、ホラー映画をミュージカルにしたもの。有名なのはロッキーホラーショーあたりか。
ただ、ホラー映画のなかにミュージカル要素を落とし込んだものはなかなかない。単純に「歌えて演技ができるキャスト探すの大変」「歌を作れる人を(お手軽な値段で引き受けてくれるという条件付き)探すの大変」なのでしょうが。
そういう意味ではディズニープラスで配信されている『ゾンビーズ』には期待していたのですが… 見てビックリ。
ロミオとジュリエットじゃん。ゾンビの男の子と人間の女の子が差別や偏見を乗り越えて恋をする、っていう構図だった。当たり前だけど人をもりもり食べたりはしない。ディズニーだもんな。
(ただ、続編でオオカミ族が出てきたり、ヒロインが人間じゃなくて選ばれし特別な存在だと判明したり、わりとムチャクチャなのは純粋に迷走していてすごい)
なぜこんな話をしたかというとですね。
イギリス映画『アナと世界の終わり』が想像以上によかったからなんですね。
ゾンビサバイバル×青春高校生×ミュージカル。ヘタしたらすげーZ級映画になりそうですが、これがねぇ、いいのよ。
- 展開はベタなゾンビドラマではあるが、後半は意外な展開が多く驚かされる。ラストは予想できなかった
- がっつりゾンビがたくさん出てきて楽しい
- 楽曲もいいんだけど、歌の入るタイミングが気持ちいい
- 意味のない下品なギャグも多いけど不快にならない。アホらしすぎて
- キャラクターがキャストとよく合っていた。歌もうまい
ちょっとほめてみました。
そう、登場人物がいいんですよね。田舎町を出ていきたい主人公のアナ。彼女に恋する男友達のジョン。LGBTで常に居心地の悪さを感じているステフ(女の子が好きな、見た目男性寄りの子)。そのまわりをアホの子・クリス、その彼女のリサ(とはいえあんまり出番がない)、ワルガキ・ニックが固めるのですが。
アナとジョンはくっつくのかな~と思ってみていたら… なんと、中盤でジョンはアナを守って死亡。そして途中でめちゃくちゃイヤな出方をしてきた学園ヒエラルキーの頂点・いじめっこのニックこそアナと付き合っていた彼氏で… と、すごく嫌な人間関係が露わになるのがいいのよ!(なお、「アナはニックの家にお泊りした」という噂をばらまかれたせいで距離ができたものの、アナとニックは今も両想いというのもエグイ。本当に肉体関係があるのもエグイ。ジョンの脳大丈夫か?破壊されてない??)
桐島、部活やめるってよみたいな展開を不意打ちでやられると、他人事でもすごく暴力的ですね(桐島だっけ?)。なんでジョンじゃだめなんだよぉ!と思うけど、そりゃ「親友」だからなんだよな… あと、ジョンはさっさと告白しなかったのが悪いな…
世界が終わっていく様子も、まず停電して、町の重要な施設が爆発して、それを呆然と見ている… みたいな感じが刹那的。で、美しい。
ストーリーをまとめると
- アナとジョンはゾンビパンデミックにまきこまれバイト先へ。たまたまステフとクリスと合流。学校に避難してる家族を探しに移動。
- 途中でニックとその子分に会う。ジョンと子分たちが襲われて脱落。
- 学校に着くも、陰湿な校長のせいで大人たちはゾンビ化。彼女のリサと再会したクリスだが、祖母を亡くし、2人してゾンビに噛まれてしまう。
- 校長を殺し、噛まれているパパを置いて、アナ、ニック、ステフは学校を脱出する。
校長が敵ってところはネットフリックスで配信されていた『デイブレイク』に似てる(こっちのほうが前だと思うが。たぶん)。
ゾンビが出てくるまではちょっと飽きちゃうのですが、そこからはぐっと面白くなります。ゾンビのおばあちゃんが主人公たちが隠れているビニールプールをトイレと勘違いして用を足しだすという謎展開には思わず胸が熱くなりました。どういうゾンビだよ。史上初じゃないか、放尿するゾンビ…