家族を侵食したのは、失踪していた妹だった…その驚きの正体とは『食われる家族』

食われる家族

2020年の韓国映画『食われる家族』。てっきり『肉』みたいなカニバリズム映画かとワクワクしながら見たら、家族を乗っ取られる系のお話でした。

この手のストーリーはわりと目新しいものではないのですが、けっこうビビる展開もあったので未見の方はご覧になってもいいかもしれない。ただ、実際に起きた事件(日本でもいくつかこういう事件がありましたね…)と比べると、現実のほうが壮絶だというのはイヤなものです。そういや、「ウシジマくん」とか「善悪の屑」でも実際の事件をモチーフにした家族への寄生の話がありました。

主人公・ソジンは嫁をひき逃げで失い、実家に身を寄せる父親。実家は金持ちで、ソジン自身も建築事務所の代表をしているやり手であります。

しかし、幼いころに遊園地で行方不明になった妹のユジンが名乗り出てきて、家族は一変。両親も明るくなり、娘のイェナもユジンに懐いていい感じに。でも何かがおかしい…

ソジンは家政婦のファンを味方につけるが、ファンはソジンがある男性に絡まれているところを目撃してしまい(彼はその後殺された!)、口封じで消されてしまいます。

単独で調査を始めたソジンは、ユジンの嘘を暴くことに成功。しかし、すっかり洗脳された家族はソジンのほうを責め始めて… このあたりでユジンが両親の世話係として引き込んだ謎の男女も共同生活を送るようになっており、この2人も本当に怖い。お母さんを男が、お父さんを女が世話してて、両親自身には活力がなくなっていきます。

それでも調査を続けたソジンはユジンの共犯者と接触。なんと彼は、嫁をひき逃げした張本人!嫁の死にもユジンが関わっている…??

しかし、家に帰るとすっかり悪者にされていたソジン。彼の精神科医もグル(ユジンに王子様のようなかっこいい会釈をするシーンもなんだか気持ち悪い)であり、諸悪の根源はソジンであることにされてしまいます。

そもそもユジンはなんなのか?

ここで初めて正体がわかるのですが、なんと彼女はカルト教団の(おそらく)教祖であり、儀式に子供が必要だったため、イェナに目をつけたことが判明。死んだソジンの嫁は仕事人間のソジンに頼れずワンオペ育児を続け、その結果カルトにのめり込んでしまい、イェナを捧げるように教団に要求されてようやく目を覚ましたのです。で、真実を明かそうとしていた嫁ですが、カルト教団に気付かれてひき逃げされてしまったというわけ。

いや~、失踪した妹がカルトの教祖ってスゴイなあ。非常にイヤですね。ユジンにくってかかっていた謎の男(ファンが目撃した男)は、前に子供をさらわれた家のお父さんだったという後味の悪い伏線回収もありました。

そして家族はイェナも含め、薬物を使用されていて洗脳状態だったことがわかります。家はリフォームしてキレイになっているのですが、父親の威厳がどんどん失われてちょっとみすぼらしくなっていたりする演出にはびっくり。セットや衣装の使い方がうまいですね。

イェナを諦めていないユジンを追い、ソジンは警察の追手もカルト教団の追手も振り切って車を走らせます。今作の警察も意外と頼りにならないのよね。

唐突に森のなかで対決することになったソジンとユジン。さらに唐突に崖から落ちたユジンを助けるソジンですが、ユジンとソジンは本当の兄妹だったのか?それとも?という迷いに終止符を打つソジン!「本当の妹であってもこんなの許せない」と思うのは当然ですね。結局手が滑り、ユジンは崖下に転落します。

結局、ユジンが偽物だったのか?それとも、本当に失踪した妹だったのか?真相はわからないまま、両親もソジンも奇妙な喪失感に悩まされるのです…

しかし、大人が幼いころのソジンに対して「手を離すなっていったよねぇ!?」と責め立てるのはさすがにかわいそう。その後、嫁をひき逃げされたのもかわいそう。仕事人間でいたとしても、身に起きることがひどすぎる。いやー、ワンオペ育児でもカルトに走るのはやめましょう。こわいこわい。