サイコパス殺人鬼に染まる『何もない女』の悲劇「メイヘム 殺人晩餐会」

メイヘム殺人晩餐会

2018年ブラジル映画「メイヘム 殺人晩餐会」。
レストランに強盗が入ったのをきっかけに、店主が突然サイコパス化。狂った店主に同調してしまうウェイトレススや、反発して監禁されるシェフと客たち。反抗する者は次々殺されていくが…。
非常に「鬱」なお話です。

登場人物

サラ:中年のウェイトレス。鬱々とした毎日に嫌気がさしている。
イナシオ:レストランを流行らせたいオーナー。強盗に突然暴力をふるい、殺してしまう。
シェフ:腕はいいが、ゲイというだけでイナシオからは疎まれている。長髪がトレードマーク。

客たち:金持ちのイヤミなカップル(男性は検事)、元警察官の老人
強盗たち:2人組。若いほうの強盗はイナシオに銃で撃たれてしまった。

ネタバレ

閉店寸前の深夜のレストラン。閉店間際に店に押しかけたカップルはしつこくイヤミを言い、ウェイトレスのサラをイラつかせる。その店に強盗が押しかけてきて、スタッフや客は凍りつく。しかし、強盗2人が言い争いをしている時に若いほうの男をイナシオが撃った。

彼は客足に影響があるような事件は封印したいと考えている(取材が入る予定があるから)。カップルの女の方は通報すべきだと思っているし、シェフはまだ若い強盗をかばっている。イナシオは全員がグルなのではないかと疑いだし、客たちやシェフも縛り上げてしまった。しかし、サラはイナシオに従い、通報しようとした客をチクりすらする。

逃げようとしたカップルの女のほうを殺したイナシオ。その女のアクセサリーを身に着け、イナシオとキスするサラ。
一方、シェフ、カップルの男のほう、元警察官、強盗の4人はなんとか逃げようと画策していた。
シェフに罪を着せようとするイナシオだが、強盗は「サラも自分たちの仲間だ」と嘘をつき、彼女に怒りの矛先が向くように仕向けた。しかし、イナシオは強盗を殺し、シェフの自慢の髪の毛を短く切って満足する。
そしてイナシオとサラは、血にまみれたまま獣のように絡み合う。

元警察官はひとりで逃げようとするが、見つかってしまう。彼自身も警官時代に人を殺した経験があるとカミングアウトするが、煽るような口調を受け、イナシオは彼を素手で殺す。
イナシオは殺した人を食肉にしてレストランで提供するつもりだ。取り残されたシェフは、落ち込んでいるカップルの男に祖母から伝わるレシピの話を聞かせ、気持ちを満たそうとする。

サラはだんだんと高揚していた気持ちが落ち着いてきて、ふと恐ろしくなる。シェフたちを助けようとするも、支配されていてとても手が動かない。
イナシオはサラを呼びつけ、カップルの男のほうを殺させようとする。サラは迷い、イナシオのほうに銃を向けて撃つ。しかし、それは空砲だった。イナシオはナイフを出して泣いているカップルの男のほうを殺し、サラのことも刺す。そしてシェフも殺そうとするが、買ったのはシェフだった。

切り落とされた髪の毛を拾い集め、店を出ていくシェフ。サラはイナシオの体に寄り添うも、彼はまだ死んでいない。しかし、サラは彼のことを刺して、キッチンで彼の解剖を始める。

感想

実はイナシオには嫁がいるのですが、サラはもともとイナシオのことが好きだったのか?それともごますりのつもりだったのか?など、細かい心理描写ははっきりとはわかりません。ただ、あまりパッとしない(映画内では「ブス」とやたらと言われているけど、そんなことないと思うんだけどな)女性として描かれているサラの孤独さが、私生活は出てこないのにすごく強く感じられます。
ラストはカニバリズム的な感じでいいですが、殺人晩餐会っていうのはやや大げさな気もする。イナシオとシェフのキャラクターはいいですね。レストランのセットも素敵でした。