「プリズン・エクスペリメント」

プリズンエクスペリメント

2015年のアメリカ映画「プリズン・エクスペリメント」。
スタンフォード大の監獄実験をモチーフにした映画は、私は少なくとも3本目です。
ドイツ映画「es〔エス〕」と、エイドリアン・ブロディ主演の「エクスペリメント」、そしてこの「プリズン・エクスペリメント」。エズラ・ミラーが出演しているし、かなりキャスティングに力が入っています。
そして、この映画は今まで囚人・看守側からしか描かれていなかったこの実験を、初めて主催者側からも描いているのです。その点では意欲作なのでしょう。ただ、いわゆる「こんな過激ないじめがあったんだよ」的ビジュアルのインパクトみたいなものは薄れていました。

ネタバレ

プリズンエクスペリメント1

スタンフォード大が募集した実験に応募してきた大学生たち。
心理学の研究のために刑務所生活を送ることになる。全員が、楽そうだからと囚人を希望した。教授たちは、テキトーに割り当てを決め、実験をスタートさせる。

大学内の部屋を改造して、刑務所を作る教授たち。
教授の恋人も研究者(元教え子?)であり、別大学に研究に行くらしい。

実際に、囚人役の者たちは家に看守が赴き、そのまま連れ去られる。お互いにニヤニヤしながら、収監される囚人とそれを見ている看守。

教授のアドバイザーとして、元囚人がチームに加わる。
チームの中には、囚人にワンピースを着せ、ストッキングを帽子代わりにかぶせる(これで尊厳を失わせる)ことについて異議を唱える者もいる。

囚人たちには私語禁止、飲食は食事時間以外禁止、看守を「殿」付けで呼ぶ(たけし軍団みたいな翻訳だな)などのルールが伝えられる。
だが、看守たちは横暴さを募らせていく。

特に反抗的なダニエルは、看守たちにいじめられ続けている。
(しかし、それに不本意な看守もいる)
ダニエルと同室のピーターも、独房に入れられてしまう。

2日目。
メガネが必要なのに与えられない囚人の訴えをきっかけに、囚人たちもさらに反抗心を燃やしていく。しかし、教授は彼らのことに介入しないと明言する。
ダニエルとピーターは別室にされ、看守たちは囚人の寝具を奪う。しかし、看守に加担した囚人にだけは食事が与えられ、特別待遇が待っていた。

ダニエルは脱獄を諦めていない。実際に逃げようとするが、捕まってしまう。
彼は裸で隔離され、独房に入れられる。反抗して立てこもっていた囚人たちも、外に引きずり出される。

ダニエルは外に出たいと教授に申し出る。元囚人でアドバイザーをしているジェシーは、かつて自分がされたようなことを、囚人役の生徒たちにしたことを恥じ、悔いている。

3日目。
演技では?と思われたダニエルが暴れ回ったことで、結局、彼は3日で帰宅する。

囚人たちの家族が面会に来るが、彼らは強がり、真実を話さない。しかし、面会人たちは不審に思っている。

他の教授から実験内容について問われ、批判していると思ってキレる教授。
チームからは脱落者もチラホラ出てきている。教授のやり方は間違っているのか?

4日目。
ダニエルが消え、ピーターもおかしくなってくる。
実験の一環で来た神父も、囚人たちの様子のおかしさに驚く。彼らは何もしてないのに、常に怯えているのだ。

看守たちが、囚人仲間から攻撃させたことで、ピーターはどんどん病んでいく。
彼も帰宅することになる。限界だからだ。

5日目。
教授の恋人が手伝いに来る。
しかし、トイレを与えられず、バケツで用を足し、その横で食事をさせられる劣悪な環境や、「食事をするまで独房から外に出さない」と命令される異常な状態に、恋人も驚く。
(ちなみに、ウン○を見ながらソーセージを食べるのがつらかった模様)

囚人たちも洗脳されていく。彼らは、本当に囚人のようになる。

仮出所できるなら、報酬を放棄してもいい。囚人たちはそう明言するようになる。
ジェシーは、自分のトラウマを囚人にやり返してしまったことをまだ悔いている。
それを辞めたいと思っても、既に自分たちは実験の一部になっている。ここは、本当の刑務所と何も変わらない。

ソーセージが食べられない囚人は、独房に入れられる。

紙袋をかぶせられ、トイレに連れていかれる囚人を見て、教授は「素晴らしい」と感嘆する。
異常な心理実験にのめり込む恋人の姿に、教授の彼女はぞっとする。彼女は教授から離れていく。

看守たちはエスカレートし続け、なかにはその異常行動に参加しない者も出てくる。
ムリヤリ汚い言葉を使わせ、四つん這いにさせて背中に足を乗せたり、さらに囚人をその上に座らせたりもする。これには教授も頭を抱える。

さらに、囚人同士で性行為のマネをさせつつ、歌わせる看守たち(もう無茶苦茶)。

教授は実験の終了を宣言する。開始から6日後のことだった。

教授はその後も心理学を続け、恋人と結婚した。

感想

ラストは囚人役と看守役の生徒が対談しているというていの映像が流れます。
しかし、この映画の怖さは「自分の中に隠れていた狂気に気が付いてしまった」ところにあるのですが(「es」や「エクスペリメント」はそういう内容だった)、この映画についてはだんだんと皆が狂気に飲み込まれていくという点でリアルかも。
囚人たちが、怖くて他の人に告発できない・自分たちが罰されて当然だと信じ込んでいるのもなかなかに怖いものです。