「サクラメント 死の楽園」

sakurament

非常に期待していた作品「サクラメント 死の楽園」を今さら見た。
・カルト教団の集団自殺事件に居合わせた取材クルーたち
・『楽園』には、恐ろしい裏があった
・信者たちは、死に飲み込まれていき……
結論から言いますと、物足りない。
タイ・ウェストとイーライ・ロスならもっとクドいくらいにキチっている映画かと思いきや、意外と助かる抜け道がちょこちょこと見えていて、カルトっていえばカルトだけど……と言いたくなるくらい、ぬるい。とはいえ、POV映画としてはよくできているし、リアルだなあという気持ちもあります。

あらすじ

イーライ・ロス製作、「キャビン・フィーバー2」のタイ・ウェスト監督・脚本で贈る戦慄のサスペンス・スリラー。カルト教団の大規模集団自殺事件として知られる“人民寺院事件”をベースに、謎のカルト教団に直撃取材を敢行したドキュメンタリー・クルーが目の当たりにする衝撃の顛末を、臨場感あふれるファウンドフッテージ・スタイルで描き出す。
過激を売りにするニューヨークのニュースメディア、VICE社の取材クルー、サムとジェイクは、連絡の途絶えていた妹から奇妙な手紙が届いたというパトリックの相談を受け、妹が暮らしているというコミュニティへの取材を敢行することに。こうして一行がやって来たのは、“エデン教区”と名付けられた場所。鬱蒼としたジャングルを切り開いたその土地で、パトリックの妹は他の人々と一緒に幸せそうな集団生活を営んでいた。妹をはじめ住民たちは誰もが彼らのリーダーである“ファーザー”を讃え、感謝を口にする。不信感を抱きつつ取材を進めるサムたちだったが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=354460

ネタバレ

冒頭、VICE社についての説明が入る。大手ニュース社が報じないようなニュースを、突撃潜入取材で報じるのがこの会社のやりくちだ。
ここの取材クルー、サム・ターナーのもとに、カメラマンのパトリック・カーターがある相談を持ち込む。彼の妹がドラッグの更生のためにあるサークルに参加。そしてそのまま、国外に脱出して失踪していたのだ。だが、彼女から連絡が来た。どうやら、彼女は「共同体」と共に国外にいるらしい。サムとその仲間のジェイクが、パトリックに同行すると申し出る。

ヘリで「教区」のそばにやってきて、中に入ろうとするサムたち。だが、カメラ持参なので当然揉めてしまう。銃を持った監視役の男たちが、サムたちを冷たく眺めている。パトリックが一所懸命に交渉するが、そこの妹のキャロラインがやってくる。
キャロラインは彼らを中に招き入れるが、この場所(森の奥深くを切り開いたコミュニティ)を「地上の楽園」と言い、教祖を「お父様」と呼んでいる。

サムとジェイクは、教区の人たちにインタビューを試みる。
ロレイン、通称ミス・ディーは、老婆だ。「私のいるべき場所はここ」と“お父様”に心酔する。
ヒッピーのようなサラは、アーティスト志望だったが、全てを捨ててここにいる。「家族は“ここ”にいる」と強調する。
看護師のウエンディと保母のフィービーもいる。初期メンバーは自分たちの家を売ってその金を投資している。そのことを知り、驚くサム。自らの妻が妊娠していることをぽろっと漏らしてしまう。
アメリカで貧しい暮らしをしていた黒人のロバートやアンドレは、白人と暮らすのに抵抗はないと笑いながら、元の生活には戻りたくないと言う。
ジェイクはロバートやアンドレとバスケットボールを始める。
サムは「お父様」にもインタビューをしたいとキャロラインに頼む。彼らの泊まるコテージには、サヴァンナという口のきけない少女が現れれる。彼女は何かを伝えたいようだ。

サムたちは、夜に「お父様」にインタビューをすることを許される。彼は信者から熱狂的に迎えられ、信者たちが見守る中、インタビューが始まる。しかし、「お父様」はサムの言うことに答えず、はぐらかしてばかりいる。
そのままサムたちのインタビューは流され、パーティが始まる。

音楽を遠くで聞きながら、サムとジェイクは「お父様」の態度についてこぼしている。だが、ところどころ気になるところはあるものの、信者にとってはたしかに楽園なのかもしれない、と彼らは結論を出しかけていた。
そこに、サヴァンナが来てメモを渡す。そこには「Please help us」と書かれていた。
銃を持った見張りが見守る中、信者たちはうっとりとしているのがサムたちにも見える。

姿の見えないパトリックを探すサムとジェイク。と、事務室で大量のパスポートを見つける。信者のパスポートを、彼らはなぜまとめて保管しているのか?
と、キャロラインが現れ、サムは信者の女性と3Pをしていると笑いながら伝える。その異常性に、サムとジェイクは違和感を覚える。キャロラインは、パトリックに残ってもらい、両親に寄付を求めるつもりらしい。「お父様」に呼ばれ、彼女は彼のコテージに消える。「お父様」はサムたちに警告する。

コテージに戻った2人。ジェイクはキャロラインがまだジャンキーであり、教祖に求められるがままに体を許しているのだと言う。サムも同意するが、そこにまたサヴァンナが現れる。
彼女の後を追うと、そこにはサヴァンナの母親や別の信者たちもいる。
サムたちが昼間にインタビューしたのは洗脳されている人たちであり、多くの信者がここに不満を抱いている。だが、それを口に出せはしない。キャロラインはサヴァンナに暴力をふるっていると母は主張し、その傷が体に残っているのが見える。ここは作られた「楽園」なのだ。信者たちは、一緒に逃げたいと主張する。
サムはサヴァンナだけでも連れ出すべきだと主張するが、ジェイクは後から通報したほうがいいと主張する。

朝。彼らはまんじりとしないまま、起き上がる。
礼拝堂(と名付けられているが、屋根だけしかない)がザワついている。出て行きたい信者たちが騒いでいるのだ。キャロラインは激怒している。サムたちを迎え入れたせいで、信者が混乱したと思っているのだ。
サムは礼拝堂に残り、危機を感じたジェイクは、先にヘリに向かうことにする。

ジェイクはヘリのもとに向かい、パイロットに乗せる人数を増やせないか交渉する。だが、パイロットは嫌がる。と、それを銃撃されるジェイク!パイロットは撃たれてしまう。
カメラを意地でも捨てず、走りながら撮影を続けるジェイク。

礼拝堂には「お父様」が現れ、演説を始める。「殺されるより、皆で旅立つ方がいい」と、薬をコップに入れて振る舞う「お父様」とその手下たち。
「これが最後のサクラメント(聖戦)である」
薬が配られていく。

ジェイクのカメラに、銃を持った男が迫る。だが、そこにあるのはカメラだけだった。
そこにまた、ジェイクが戻ってくる。彼はヘリに戻るが、パイロットは生きていた。彼に命じられ、ジェイクはサムを連れ出しに走り出す!

信者たちは薬を飲んでいる。無邪気に飲み下す子供もいれば、震えながら飲む者もいる。赤ちゃんには注射がなされる。

ジェイクは戻ってくる。

信者たちは皆、薬のせいで苦しんでいる。

パトリックは拘束されている。キャロラインは彼の言葉を聞き入れず、薬を注射して殺してしまう。

逃げる信者は撃たれ、無理やり薬を飲まされている人もいる。
ジェイクとバスケをした若者も、「死にたくない」と彼にすがりながら事切れる。
サヴァンナと彼女の母は小さなコテージに立てこもっているが、そこに銃を持った男が来る。ジェイクは隠れるように説得するが、母親はサヴァンナをナイフで殺し、彼女自身も撃たれて死亡する(どうでもいいが、ジェイクが隠れているところは追っ手から丸見えだと思うのですが……見つかりません)。
保育所では「罪をお許しください」というメモと共に、フィービーが赤ちゃんを抱きしめて死んでいる。
キャロラインは自分にガソリンをぶっかけ、「あなたのせいよ」と言い捨てて火をつける。

ジェイクはサムを見つけるが、彼は拘束され、「お父様」の目の前にいる。
残っているのは3人だけ。だが、駆け引きをすることもなく、「お父様」は自殺して死んでしまう。ジェイクはサムを助け出し、逃げる。

見回りの男たちに見つかるが、その男を別の見回りが撃ち殺す。彼もウンザリしているのだろうか。「早く逃げろ、ここは焼き払う!」
サムとジェイクはヘリに逃げ、彼らは助かる。この集団自殺事件で、生き残ったのはこの2人だけである。

感想

・キャロラインのマジキチぶりはすごくよかったのですが、カルトと言えるのはここくらい。「洗脳されている」人たちも、さほど何かをするわけでもなく……。ただ、夜の信者陶酔シーン(なんのことはなく、音楽でうっとりしているだけなのですが)はすごく怖い。
・逃げたいのに逃げられない、という信者の焦りがよくわからない。キャロラインがサヴァンナに暴力をふるっていた、というのも描写がないから、ホントはサヴァンナのママが頭おかしいのかも?と思ってしまった(まあ、頭おかしいけど)。
・ジェイクが隠れたところがスカスカすぎて丸見え!ホラーなのに誰もそこに気付かないのかよ!とは思いました。あと、見張りも死体撃ちしてない(ように見える)ので、死んだふりすればなんとか逃げられそうな気もするけど……このへんの「逃げられない」「絶対に死ぬ」恐怖が薄いので、なんとかなりそうと思ってしまう。
・「V/H/S シンドローム」のほうが怖かった気がする……。
(そちらもカルト教団の話ですが、ジャンルが違います)

※こちらのブログではコメント欄をあけないつもりなのですが、「ウェイワード・パインズ」についてご指摘いただいた内容はもうひとつのブログで触れさせていただきました。ありがとうございました。