「ランダム 存在の確率」

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2013年のアメリカ映画「ランダム 存在の確率」。難しい映画なのですが、このごちゃごちゃがたまらない。自分が自分でなくなるような、孤独感が強まっていく珍しいSFです。
・だんだんと仲が悪くなっていく友人たち
・でも、彼らはある恐ろしい「隙間」に迷い込んでいた
・彼らは自分たちの存在を守れるのか?

あらすじ

地球に接近する彗星をめぐる不可解な騒動を描くSFスリラー。数々の国際映画祭を席巻、多くの賞を受賞した話題作。監督はアニメ映画「ランゴ」の原案を手がけたジェームズ・ウォード・バーキット。2015年1月~2月開催の<未体験ゾーンの映画たち2015>にて上映。
エムは友人リーとマイクのホームパーティーに、恋人のケヴィンと一緒に参加する。おいしいお酒や料理に舌鼓を打ちながら、久々に顔を合わせた男女8人は不思議な彗星についての話題で盛り上がっていた。そんな中、突如として停電となり8人はパニック状態に陥る。エムたちは不安な気持ちを抑えられず、隣家の様子を見に行くことにするのだが、そこにいたのは全く同じ家にいる全く同じ自分たち8人の姿だった。次々と引き起こされる不可思議な現象に疑心暗鬼になる彼らだが、別世界の存在を知ることになり…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=351130

登場人物

エム:主人公。バレエダンサーだが、今は裏方に徹している。
ケヴィン:エムの恋人。
リー:ホームパーティの主催者。メガネでおとなしい性格
マイク:売れない俳優。偉そうな態度をとることもある
ベス:ショートカットのおばさま。破天荒な一面も。
ヒュー:ヒゲ面でおしゃべり好き。弟が物理学者。
アミール:ハゲな男性。
ローリー:イジワルな性格。ケヴィンと昔関係があったことから、エムに嫌われている。

ネタバレ

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静かな夜。リートマイクの家に、友人たちが集まってくる。彗星のせいで、携帯電話が壊れてしまう。が、お酒や食事で楽しく過ごす8人。しかし、突然停電となる。
彼らは電気がついている近くの家へ言ってみることにするが、その家のなかには自分たち8人がいるのが見える。なぜ?

ヒューがその家にあった箱を持って帰ってきてしまう。全員の写真があり、その裏にはなぜかナンバリングされている。卓球のラケットも入っている。そして、外には誰かがいる!
アミールの写真はあきらかにおかしい。今日買ったセーターを着て、この家の中で撮影している。

全員にせかされ、戻しに行くヒュー。ヒューとマイク、ケヴィン、ローリーが様子を見に行く。青いライトを持っている彼ら。だが、赤いライトを持っている自分たちに遭遇して、逃げ帰る。

ヒューの弟の本を引っ張りだし、この事態を分析する彼ら。「シュレディンガーの猫」をもとに、考えを深めている。世界が27つあり、あくまでその世界は並行しているのではないか。だが、あることをきっかけにその世界が混じりあってしまったのではないか。
だが、共存の崩壊後も2つの状態は別々に存在し続けるのか。
異なる結果は互いに独立した現実を生じさせるのではないか。
この状態は彗星が通り過ぎるまで続くだろう。

マイクは別の自分たちを殺すと言い出す。

しかし、既にあちらの世界とは何かが違う。それぞれの行動にズレが出てきているのだ。
そして、ベスがパーティのために薬を用意していたことが全員に知れわたる。もしかして、皆で薬でブッ飛んでいるのではないだろうか?

家の中と外では、流れる時間も違う。外にいる時には10分も経っていないのに、体感45分は経過している。

ヒューとアミールは出ていく。薬を飲むベス。ローリーとケヴィンに苛立ちを感じるエム。

と、せっかく動いた発電機も壊れる。

エムは車の中にいるが、違う世界のケヴィンに会う。彼は何かを探していた。
戻ってきたアミールとヒュー。だが、彼らは別の世界のアミールとヒューなのではないか?絆創膏が違うことから、エムはそう思う。

この停電の夜には、いったい何人の自分が存在するのだろうか。

彼らは箱の中に自分たちの写真を入れて置くことにする。アミールの写真も撮影する。メモも描く。これは先ほど、彼らが拾った箱の中身と酷似しているが、やはりどこか違う。

中身を照合していて、エムは気が付く。彼女は別の家からここに来たのか。彼らは外出するたびに、別の世界に迷い込んでいるのだ。闇の中、ある場所を通ったら、元の家には戻れない。彼らはどんどんいろんな家を移動して、混ざり合っているのだ。彗星が通るまでに何かをしなければ、エムはここに取り残されるだろう。

彼らは大喧嘩を続け、バラバラになる。マイクは、別の世界からやってきたマイクと遭遇し、彼に殴られてしまう。

エムは家を抜け出す。そして、いろいろな家を覗く。大喧嘩をしている彼ら。マイクを拘束している彼ら。ケヴィンとローリーが浮気している家もある。

そして、エムは自分の理想としていた世界を見つける。その世界では、エムはバレリーナをやめていない。理想的なキャリアを積んでいる。ケヴィンとも幸せそうだ。エムはその世界のエムを殺して、風呂場に隠す。そして、その世界に溶け込もうとする。
次の日の朝、エムはケヴィンに自分がこの世界のエムだと信じ込ませようとする(この世界では、争い事などは起きていない。皆裕福で幸せそうだ)。だが、ケヴィンに電話がかかってくる。それは、もうひとりのエムだ。
ケヴィンとエムの視線が絡みあう。

感想

・一緒にいた友人が、ルックスは一緒だけど、でもやっぱり自分の友人ではない。自分が誰なのか?本当にこの世界は、自分のいるべきところなのか?取り残されたら?と、不安が募る映画。なんとなく「ユニコ」を思い出しましたけど、中身は違います。
・最後、自分の名声とプライドのために行動するエム。ケヴィンよりも、自分のキャリアの方が大事だったのか?ラストもこれからどうなるのかまったくわからない恐怖を感じさせます。
・うまく説明できないほど難解だけど、面白い脚本。