「パージ」

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2013年の映画「パージ」です。待ちわびたこの作品、待っただけの価値があったよなあ。とシミジミしております。「パージ:アナーキー」という続編のほうがやや好みですが、この映画も好き。ただ、ホラー好きにはわかりやすい展開が続きます。イーサン・ホークの熱演も素晴らしい。

あらすじ

社会安定のための過激な特効薬として、1年に1晩だけ殺人を含むすべての犯罪が合法となる制度が導入された近未来のアメリカを舞台に、図らずも残忍な殺人集団の標的になってしまった一家の決死のサバイバルの行方を描くバイオレンス・スリラー。主演は「フッテージ」「ビフォア・ミッドナイト」のイーサン・ホーク、共演に「300 <スリーハンドレッド>」のレナ・ヘディ。監督は「ニューヨーク、狼たちの野望」のジェームズ・デモナコ。

1年に1晩だけ犯罪を合法とするパージ法。その施行により犯罪率も失業率も劇的に改善し、アメリカはかつてない平和な時代を迎えていた。セキュリティ・システムを販売する会社のセールスマン、ジェームズ・サンディンは、売り上げも好調で、妻メアリーと2人の子どもと幸せな日々を送っていた。そんな中、今年も“パージ”の日を迎える。それでもサンディン家には、ジェームズ自慢の堅牢な防犯システムが備わっており、なんの心配も必要ないはずだった。ところが、息子のチャーリーが、家の前で助けを求める見知らぬ男性を家の中に入れてしまう。やがて男性を標的にしていた暴徒たちが玄関前に現われ、男性を引き渡すようジェームズに迫ってくるのだったが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=353045

ネタバレ

2022年のアメリカ。失業率は1パーセント(どういうことじゃ!)、犯罪発生率はほぼゼロという世界。アメリカは「パージによって浄化された」。
パージとは、1年のうち1日だけなんでもありの日。人を殺しても、強姦しても、誰も罪に問われない。
国民は家の前に同じ花を飾っている。それこそが、パージを推奨する国民の務めなのだ(国旗を出すのと同じノリでしょうか)。

セキュリティシステムで営業1位を獲得したやり手セールスマンのジェームズは、いわゆる富裕層。美人の妻と、これまた美人の娘。ちょっと変わっているけれど賢い息子に囲まれて、幸せに暮らしている。ジェームズは高級住宅地に住み、周辺の人とにこやかに会話を交わしている。

娘のゾーイはご機嫌ななめだ。18歳のボーイフレンド・ヘンリーとの仲を、父が認めないから。しかし、ヘンリーは家の中に忍び込み、彼女とキスを繰り返している。

息子のチャーリーは、小型マイクを搭載したラジコンで遊ぶ。彼の部屋のクローゼットには隠し扉があり、そこが彼の秘密基地になっているのだ。

妻のメアリーも、近所の人とにこやかに会話を交わす。仲良しの近所の奥さんが、この住宅地でも特に羽振りがいいジェームズ一家に気を付けるように忠告する。周辺住民たち全員がセキュリティ・システムを導入したことで「自分たちの金でいい暮らしをして」とひがんでいる者もいるというのだ。

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パージについてのおさらい。
・クラス4以下の武器しか持つことができない。
(おそらく、ロケットランチャーとか戦車とか威力がありすぎるものは禁止?)
・一部の政府職員はパージ対象外
(大統領や重要人物は対象外)
・サイレンがなったら、12時間殺人を含めて何でもあり。
夜7時から朝7時までを指す。

7時。彼らはセキュリティシステムを起動する。
自分の部屋に戻ったゾーイは、そこにいたヘンリーに驚く。イチャイチャする2人。

ニュースでは、パージの目的は病人や社会貢献できない者、貧乏人を切り捨てるための制度ではないかと指摘する声が報道されている。
ジェームズは仕事、メアリーはロードランナー、息子はラジコン、娘はイチャこいている。

近所で銃声が聞こえる。誰かが走ってくるのが、ラジコンのカメラ越しに見えて息子は息をのむ。黒人の男が、誰かに追われている。怯えている彼を、息子はつい中に入れてしまう。両親は大慌てだ。

ヘンリーは、ゾーイに「お父さんを説得しにきた」と告げる。パージ中に外に出られないのだから、その間に話し合いたいというのだ。

慌ててゾーイを捜しに行くジェームズ。そこに、ヘンリーが現れる。親しげに話しかけた彼は、急にジェームズを撃つ!驚いたジェームズは撃ち返し、その弾はヘンリーを貫く。

ゾーイはヘンリーを自分の部屋に引き戻す。しかし、彼はそのまま呆気なく死んでしまう。

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黒人の男は隠れてしまう。
そして、通りの向こう側からたくさんの男女が現れる。彼らは仮面をつけており、女の子は白いドレスを、男性は学校の制服のようなブレザーやセーターを身に付けている。もちろん手には、銃やナタ、オノなどを持っている。代表の男が仮面をとって話しかけてくる。イケメンだが、その表情は冷酷だ。
彼らはいわゆる上流階級の若者で、高い教育を受けている。彼らは貧乏人やホームレスを殺して回っているのだ。魂の浄化を与えるため、「街を掃除している」というのだ。黒人の男はホームレスだ。「立場をわきまえないブタ」とまで彼のことを罵る青年。

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男を差し出せという青年。タイムリミットは重機が到着するまで。それに間に合わなかったら、セキュリティシステムを破壊して中に侵入し、家族全員を皆殺しにするという。「僕たちは、パージがしたいだけなんだ……」

そして、屋敷は停電状態になる。ニヤニヤしながら屋敷を取り囲み、ベタベタといちゃつき、ブランコで遊ぶ若者たち。

チャーリーは、黒人を自分のクローゼット裏の秘密基地に誘導する。両親は、家族を守るために男を捜すことにする。
ジェームズたちを罵倒する仲間を、青年は容赦なく殺す。
「こいつは友人だった。でも、あなたは違う」「ブタが追い出せなきゃ、あなたが死ぬ」彼は、仲間よりももっとむごい方法で彼を殺すと予告しているのだ。

単独行動をしているゾーイ(この家はめちゃくちゃ広いのです)。
チャーリーのラジコンを見つけ、ゾーイは彼の秘密基地に隠れると言う。黒人の男と鉢合わせしてしまう!慌てるチャーリーだが、案の定姉は人質にされてしまう。しかし、ジェームズが男に飛びかかる!父は彼を押さえ、母は腹を刺す。

しかし、ふと妻は気付く。「間違ってる!」いつからこうなったのか?ゾーイも「今していることを見て、二度と前みたいに戻れない」と言う。黒人の男は「俺を外に出せ」と言い始める。
とうとう、重機が到着する音が聞こえる。

「あなたが正しかった」と怯えるメアリー。「いや、俺がずっと間違っていたんだ」と、覚醒するジェームズ。息子を地下に避難させる。そして彼は妻に「戦おう」と告げる。

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「野性を解き放て!殺戮の開始だ!」窓やドアが破られ、若者たちがどんどん入ってくる。メアリーは裏口へ、ジェームズはそのまま家の玄関付近に留まる。
ナタ女に遭遇するが、ジェームズはすぐに殺す。彼らの戦闘能力は、そこまで高くはない!

だが、メアリーのあとをつける若者の姿が見える。

チャーリーが見つかる!だが、ジェームズが息子を助ける。

青年たちは、ゾーイに目を付ける。彼らはゾーイを見つけたら生け捕りにして、なぶりものにしようとしている。その声が彼女にも届き、ゾーイは身震いが止まらない。

1組のカップルとジェームズが鉢合わせになる。オノしか持っていない男とショットガンを持っているジェームズ。銃で首を絞められるが、ビリヤード台に合ったボールでブン殴り、女を射殺する。男はピンボール台に頭を叩きつけ、追加で現れた男は素手でしめ落としてオノで殺してショットガンを奪い返す。仮面がはがれおちた女の子の顔が見えるが、まるで少女のようだ。
しかし、そこにリーダーの青年が現れる。青年はジェームズの腹を刺し、「魂は浄化された、パージされた」「あなたは家族を犠牲にして、何を守ったんだ?」と語りかける。死にかけている彼に「記憶に残るパージをありがとう」とうやうやしく語る青年。額にキスをする。青年が消えた後、夫は何とか立ち上がる。

青年たちのなかには、いたずらに破壊を続ける者たちもいる。

チャーリーは、地下のモニタールームにいる。誰かが新たに現れ、庭にいる若者たちを殺していく。大人の男女2人のようだ。彼らは誰なのか?

メアリーは新カップルと鉢合わせる。だが、彼女は弱い。すぐに捕まってしまう。「ジェームズ!」助けを呼ぶメアリー。しかし、彼らを助けてくれたのは近所の夫婦だった。カップルを殺して、彼らはそのまま去る。

チャーリーやメアリーは、死にかけているジェームズを見つける。ゾーイも現れて、父親に謝罪する。しかしジェームズはそのまま、死んでいく。
そこに登場したのは、近所の仲良しさんたちだ。メアリーにクッキーを差し入れしてくれた夫婦、犬の散歩中にジェームズと会話したアジア人、近くを通りかかったら挨拶してくれる夫婦(妻は黒人、夫は白人の夫婦)。彼ら5人は助けに来てくれたようだ。「お困りのようだから、助けることにしたの」

「おたくは私たちの獲物だから」

彼らはメアリーも子供たちも縛り上げて殺すことを宣言する。絶叫するメアリー。「黙らなければ、チャーリーから殺すぞ!」そう言われても、興奮を抑えられない。
彼らはジェームズ一家をずっと憎んでいたのだ。セキュリティシステムを導入させ(といっても無理やり加入させたのではなく、彼らは納得して導入しているはず)、自分たちからむしっておいて完璧を気取っているところが鼻につく、と。メアリーは彼らに懇願する。だが、聞く耳を持たない彼ら。
「パージをさせて、アメリカ人としての義務よ」

彼らは祈りを捧げる。「アメリカに祝福あれ」

メアリーと特に仲のよかった女は、「私からよ。その後は順番」と彼女ににじりよる。
と、そこにずっと隠れていた黒人の男が現れる。彼は見事な腕前でアジア人を殺し、他の人間を降参させる。
「どうする?」黒人の男はメアリーに尋ねる。
「やるなら早くやって、苦しませないで」
「イヤよ」
「早くやりなさいよ!」
「残りの夜は平和に過ごすの!それに文句ある人いる?」

全員で、テーブルに着席して7時を待つ。決まり悪そうな隣人たち。
銃を奪おうとした親友の女を、思いきり銃身でどつくメアリー。鼻が折れたのか、大量に出血する。歯も折れたようだ。

そして7時になった。「全員さっさとうちから出ていって」
隣人たちはそそくさと出ていく。黒人も去ろうとするが、メアリーは声をかける。
「待って。あなたは大丈夫?」
「……ありがとう」
「お元気で……」
黒人のホームレスが立ち去るのを、見ているメアリー、ゾーイ、チャーリー。

パトカーのサイレンがそこかしこで響き始める。この年のパージは終わったのだ。
メアリーの親友ババアがあからさまに彼女のことを妬んでいたり、金持ち高校生が正義をこじらせてホームレスを殺したり、主人公のジェームズが自分の価値観の誤りに気が付いたりと、わりかしベタな展開が多いのですが、そのベタ故にとても見やすい印象。ジェームズだけが死ぬという展開も想像できなかったですが(全滅エンドかと思った)、かなりセンセーショナルな内容とはいえ、子どもが殺されるシーンを流すような映画ではなかったことに後から気が付きました。

個人的には、仮面や女の子のドレスが70~80年代のホラーらしくて好き。
アメリカへの風刺がたっぷりなのも含めて、非常にアメリカらしい映画であります。