「パージ:アナーキー」

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さて、パージの続編「パージ:アナーキー」です。2014年アメリカ映画。時間軸としては前作の1年後のアメリカであり、「パージ」の富裕層中心のエピソードとは異なった話。一般人夫婦と貧困層の親子、そしてパージをする側だったはずの男が巻き込まれて、奇妙なロードムービー状態になるという感じです。最初から「人情」や「家族愛」についてねっとり説いてきます。

あらすじ

1年に1晩だけ殺人を含むすべての犯罪が合法となる近未来のアメリカを舞台に描き、全米でスマッシュ・ヒットしたバイオレンス・スリラーの第2弾。パージの日を巡って様々な立場の人間が繰り広げる暴力とサバイバルの行方を群像劇スタイルで描き出す。監督は前作に引き続き「ニューヨーク、狼たちの野望」のジェームズ・デモナコ。
その日は、1年に1度のパージ日。パージ開始まであと数時間と迫っていた。病気の父を抱え、娘のカリとともに低所得者が集まる地域に暮すシングルマザーのエヴァ。まともな防犯設備もない自宅で不安な夜を迎えようとしていた。別居に向けた話し合いが進む夫婦シェーンとリズ。買い物を終え、家に向かう途中で車が故障してしまう。亡くなった息子の仇をとるため、この日を待ちわびていた男レオ。完全武装し、装甲仕様の車で街へと繰り出すが…。

http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=353046

登場人物

レオ:1年前に死んだ息子の仇を討つため、加害者の男をパージしようとしている。戦闘能力が異常に高いのには理由がある。シニカルだがお人よしであり、エヴァたちを見捨てられない。
エヴァ:病気の父を抱えながら娘と暮らしている。とても貧しい。
カリ:エヴァを励ましながら暮らしている娘。パージ制度を嫌い、反乱軍に陶酔する一面もある。
シェーン:妻のリズと別居予定。車を壊され、パージのターゲットにされてしまう。
リズ:夫に口うるさく振る舞ってしまう。ごくごく普通の女性。

ネタバレ

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2023年。また、パージの日がやってきた。

ダイナーでアルバイトしているエヴァ。父の薬代のために店長に給料の値上げを交渉するが、うまくいかない。シングルマザーとしてキツイ日々を過ごしている。

街では、銃を売る男も出てきている。

隣の部屋の男に声をかけられているエヴァ。ダイナーでもモテていたが、この隣の男もかなりしつこい。カリは祖父と共に、パージへの抗議映像を見ている。
父と薬を飲む・飲まないで大喧嘩するエヴァ。父は死期が近いことを悟っており、無駄なことはしたくないという。だが、娘と孫のションボリした顔を見て慌てて謝る。

ショーンとリズは、喧嘩をしながらドライブしている。急いで家に帰る前に、スーパーに立ち寄る。しかし、その駐車場でいかにもいっちゃってる集団と目が合う。ゴテゴテとメイクをした男、仮面をつけた男たち(パッケージの集団です)。ショーンは、彼らのことが頭に残って仕方ない。

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レオは、銃の準備をしている。彼はパージに出かけようとしているようだ。元妻が彼を訪ねてくるが、止めることはできない。

カリは部屋で活動家の映像を見ている。じいさんはこっそり部屋を抜け出し、正装で車に乗り込む。

ショーンとリズの乗った車は、突然止まってしまう。

エヴァはカリとねぎらいあう。仲が良い親子だ。

夫婦は、車が壊されていることを理解してパニックになる。しかも、その場所はダウンタウン。もっともパージされやすいエリアなのだ。

エヴァはパージを前に落ち着かない。

ドーベルマンを連れた男たちや、火炎放射器を積んだ車。スクールバスで街へ繰り出している集団もいる。

エヴァは、自分の父が部屋にいないことに気が付く。残っていたメッセージには、恐ろしい話が綴られていた。父は自分を売ったのだ。金持ちはパージをする時、リスクを追わないよう貧者を買い取る。彼は自分を10万ドルで売りつけ、娘の口座にその金を振り込ませたのだ。金持ちに囲まれているじいちゃんが見える。
しかし、その瞬間、大きな音が部屋を襲う!隣人の男が壁を破って入ってくる。「守ってやるぞ~!いや、アブナイのはオレか!」と笑いながら、男はエヴァとカリに迫る。彼は力ずくで親子を強姦してやろうと思っているらしい。

レオは特別に加工したらしい車を走らせる。前方で車が燃えているのが見える。

エヴァとカリを襲っていた男が撃たれる!軍人たちだ。「獲物2人を確保!」と言う声が飛ぶ。髪の毛をつかまれ、外に出される親子。
その様子をたまたま、レオは車の中から目撃してしまう。「ほっとけ、ほっとけ……」しかし、彼は出ていって親子を助けてしまう。

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そこに、ショーンとリズもたまたま居合わせる。レオの車にたまたま隠れてしまった夫婦。レオは図らずも、4人の“お荷物”を背負うことになってしまう。
マシンガンで撃たれるも、装甲車になっているレオの車は走り続ける。

街は酷い状態だ。
「なんで軍隊が……?」
悩む間もなく、さすがに車がオーバーヒートしてしまう。
エヴァはダイナーで働く友達の家に行くことを提案する。車を渡すから、そこまで自分たちを送って行ってほしいと提案するのだ。レオはそれを受け入れる。夫婦たちも行動を共にする。

「私は今夜ウイルスになる!致死率100パーセントのウイルスにね!」と叫ぶスナイパーの女が、建物の屋上から銃をぶっ放している。

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静かに行動しようとした矢先、ショーンがワナにひっかかってしまう。なんとか逃げ出し、今度はビジネス街へ。軍隊がまだ追いかけてくる。さらに、ショーンとリズをターゲットにしている若者たちもバイクで彼らを追いかける。

軍隊のトラックを見つけるが、どうやら反乱者のリーダー・カルメロが彼らをせん滅させたようだ。生き残りの男も、レオがシメ殺してしまう。

「何で私たちを助けた?」
「いい戦いぶりが、ある人を思い出したから」

パージをしようとしているレオを、エヴァとカリは止めようとする。

車にのったチンピラたちに追いかけられる彼ら。火炎放射器をぶっぱなしてくる危ない奴らだ。シェーンとリズは、勇敢にも粘って銃を撃ち続ける。彼らの車を横転させて炎上させるも、シェーんは腕を撃たれてしまう。

友達の家へ到着するエヴァたち。だが、街のカメラは彼らの姿を逃していなかった。

友人のロレインの家は豪華だ。彼女の両親と妹、その夫がいる、だが、なんだかギスギスした雰囲気が否めない。ロレインは薬を酒で流し込んでいるし、妹はロレインにからかわれて震えている。妹の夫といちゃつくロレイン。

レオは「この家はおかしい、すぐ出ていくべきだ」とエヴァに告げる。しかし、エヴァはこの家には車はないことを白状。彼を騙していたのだ。しかし、エヴァはレオを止めたくて必死だ。パージをやめさせたいのだ。

居間では、ブチ切れた妹がロレインを射殺する。ロレインと妹の夫は浮気をしていたのだ。阿鼻叫喚のリビングから、全員が逃げ出す。

そこにまた軍人が現れる。エプロンをかけた肉屋のような風貌の男は、マシンガンを武器にレオを探している。周辺にはバイク男たちももちろんうろついている。
全員が捕まってしまう。

パージを「ゴミ拾い」だと語る謎の男。「パージが目的じゃない。金だよ」
何者かに引き渡される男たち。

「商品が到着しました」
彼らは気が付いたらステージ上にいる。ピアノ、ドレスを着たセレブ、優雅な司会者……。彼らをパージする権利が、オークションにかけられる。
お金持ちの男、姉妹、初パージの息子を応援する父。富裕層はオシャレな狩りの格好に着替えて再登場。レオやエヴァたちは、庭を模したようなセットのなかに放り込まれる。

だが、レオは4人を隠したまま、静かにハンターに反撃を開始する。素手で首を折り、武器を奪い、その武器で別のハンターを殺していく。暗視ゴーグルも奪い、次々ハンターは血祭りにあげられる。息をのむ観客たち。
司会者のババアはどこかに電話をかけている。「私たち、5人も殺されたのよ!」

生きては逃げられない、抵抗する!
その言葉通り、ショーンは殺されてしまう。リズに「愛してる」と言い残し、彼は死んでしまう。リズは号泣する。

ハンターたちは退却し、周辺はSPたちに囲まれた絶対絶命のなか。
反乱軍が到着する!リーダーのカルメロ以外にも、「パージ」に登場した黒人ホームレスの姿も見える。レオ、エヴァ、カリは逃げることにするが、リズは残ってパージに参加すると決める(反乱軍に参加する)。

司会者ババアの車を奪って、逃走する3人。レオはババアをひっつかみ「俺を覚えておけ」と脅す。逃げ出すババア。
彼はそのまま、自分のパージを遂げるために車を走らせる。1年前、子どもを轢き殺されたこと。その相手は無罪となり、今も家族と暮らしていること。彼を殺さなければ気が済まないこと。
エヴァとカリは彼を止めるが、彼は加害者の家に入っていく。

システムは既にレオがダウンさせていた。ぐっすり寝ている男を叩き起こし、責め立てるレオ。謝り続ける男。次の瞬間、銃声が聞こえる。

血まみれで外へ出てきたレオは、そのまま誰かに撃たれる。軍隊にいた、ブッチャー姿の男だ。実はレオは巡査部長であり、この軍隊の男も彼に見覚えがあったのだ。レオは待ち伏せされていた。レオはパージの掟を破ったのだ。だから、執拗に狙われた。その掟こそ「人の命を救うな」。
「市民の殺しじゃ足らない分を軍隊が補っているんだ」
やはり、軍隊が貧困層を間引きしていたのだ。
「ヒーローはいらないんだ」

次の瞬間、謎の男は射殺される。撃ったのは、エヴァでもカリでもない。レオの息子を殺した、加害者の男だった。レオは彼を殺さなかったのだ。だからこそ、助かったのだ。
その瞬間、サイレンが鳴り響く。

エヴァとカリは男を促し、病院へとレオを運ぶ。車の中、カリの手を握りしめるレオ。
全ては終わったのだ。
誰も思い出していませんが、自分の命を差し出して10万ドルを稼いだじじいのことも思い出してあげてほしいとは思いました。
異常に強い男が弱者を守りながら、自分の弱さを克服するお話……として考えれば、こちらも前作に負けず劣らずベタ。前作に比べて悪者のバリエーションが増えたぶん、悪役のキャラクターは薄まりましたね。理不尽なオークションのシーンは「ホステル3」を思い出させる悪趣味具合。こちらはハッピーエンドなので安心して見られるのですが、軍隊やらスクールバスに乗り込むパンクおじさんたちやらバイクに乗りこんでメイクばっちりのキチ集団やら、人が多いわりに印象が薄かったかなという感じです。前作の金持ち学生たちの方がよっぽど印象に残りました。あの仮面、なぜ使いまわさなかったのかなあ。