「嗤う分身」

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2013年のイギリス映画「嗤う分身」。原題は「THE DOUBLE」です。
ドストエフスキーの小説を映画化したのですが、大好きなアイゼンバーグくんが出ていたので見ました。
この人の存在の「ダサさ」みたいなものは、他の俳優さんにはありませんよね。
すごく居心地悪そうな雰囲気を常にまとっている人だと思う。

基本的にはアイゼンバーグくんがCGで1人2役を演じているのですが、演技がすごくうまい。つぎはぎ感もないです。あと、ミア・ワシコウスカはすごくキュートです。

あらすじ

監督デビュー作「サブマリン」で高い評価を受けた英国の俊英リチャード・アイオアディ監督が、「ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグを主演に迎え、ドストエフスキーの『分身(二重人格)』を映画化した不条理ドラマ。共演は「アリス・イン・ワンダーランド」「イノセント・ガーデン」のミア・ワシコウスカ。

内気で要領が悪く、驚くほど存在感の薄い青年サイモン・ジェームズ。仕事でもプライベートでも何ひとつ良いことがない、冴えない人生を送っていた。当然、秘かに想いを寄せるコピー係のハナにもまるで相手にされないサイモン。そんなある日、彼の会社に新入社員がやって来る。期待の新人と紹介されたその青年は、サイモンとまったく同じ容姿をしていた。おまけに名前はジェームズ・サイモン。すっかり混乱するサイモンをよそに、人当たりの良いジェームズはどこでも要領よく立ち回り、すぐに周囲の人望を集めていく。そんなジェームズのペースに巻き込まれ、ますます自分の居場所がなくなっていくサイモンだったが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=347076

ネタバレ

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うだつのあがらない男・サイモン。
電車でも「そこは俺の席だ」と言われてあえなく譲ったりしています。

そんな彼が好きなのは同じ会社のハナ。
彼女の家の近くに住み、ゴミを漁り、覗きもしています。
しかしある日、彼女の家のほう(主人公は向かいに住んでます)を見ていたら、自殺しようとしている男を発見。
この男、実はハナのストーカー!

死んだ男に付きまとわれ「じっと見つめていたら、私があなたにキスするとでも思った?」と怒鳴ったというハナ。
彼にとっては耳の痛い話ですが、2人の距離が縮まります。
自分のテレビを売って、彼女へのプレゼントを購入するサイモン。

ちなみにここでかかるのがかの有名な「スキヤキ」。
この映画ではなぜか、日本の昭和歌謡がBGMとして使用されています。

さて、サイモンは影が薄いので会社でも警備員に止められるし、社長にもボスにもイマイチ覚えてもらえません。
しかしそこに現れたのがジェームズ。 主人公はサイモン・ジェームズで、新しく現れたのがジェームズ・サイモンであります。

謎のジェームズという男はサイモンとは違い、明るく社交的。
しかし仕事はサイモンのほうができますし、まじめです。ジェームズは女好きで、サイモンの仕事の手柄を横取りしたりします。

ジェームズはサイモンのように振る舞いません。
ダイナーではその時間帯にメニューにないものを高圧的に振る舞って作らせ、クラブで喧嘩をしたりもします。サイモンもそれに巻き込まれつつ、奇妙な解放感を味わいます。

サイモンに恋のアドバイスをするジェームズ。ですが、ハナはジェームズにときめいてしまったよう。ここでは「ブルーシャドウ」がかかります。
彼女をとられるわ、サイモンが教育係をしていた上司の娘に手を出してしまうわ、仕事の手柄までとられるわでどんどんポジションを失っていくサイモン。

反対に、ジェームズは出世して部長になります。
サイモンは部屋の鍵をたかられ、自分の家を連れ込み部屋にされてしまいます。

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サイモンはハナが好き。ハナはジェームズが好き。ジェームズはいろんな女の子に手を出しています。奇妙な関係。

しかもサイモンはハナに、彼女のゴミを漁っているところを見つかります。
さらにハナはジェームズが女の子を彼の部屋に連れ込んでいるところまで見てしまい、絶望。

自殺未遂をしたハナ。彼女は妊娠していたのか?
なお、ここで会社の警備員だった役者が医者としても登場します。
彼女はサイモンがハナのゴミのなかから、彼女が破り捨てていた絵を拾い出し、それを復元したスクラップを発見。

サイモンの母親は要介護であり、彼が施設に入れています。(彼の性格が暗くなったのも、それに関係しているのかも?)
しかし母親の死を知り葬式にかけつけると、そこにはジェームズが!

サイモンとジェームズの立ち位置がかぶさり、1つの席にどちらが座るのか?という競争が明確化していきます。

サイモンは既にいない人間の側に押しやられていきます。
仕事も家も、大切なものは彼に奪われてしまったのです。

しかし、彼は気が付きます。サイモンとジェームズは双子のように同調しており、片方がケガをしたら、もう片方も同じような衝撃を受けることを。

サイモンはハナのマンションから飛び降ります。
しかし、彼はマンションにはられたネットの上に飛び降りたので無事。
でもジェームズにはその衝撃がダイレクトに伝わり、サイモンの家の中で死んでしまいます。
ハナもようやく、サイモンの存在と愛に気が付いたようで一緒に救急車に乗ります。

意識も虚ろの中、
「君みたいな存在は少ない」
と話しかけられるサイモン。
彼は
「僕は特殊でありたい」
とつぶやき、目を閉じます。

ラストのセリフは「僕はオリジナルでありたい」でよかったんじゃ?
特殊というと、どうしても特殊性癖が浮かんできてしまいました。