「地下に潜む怪人」

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2014年のアメリカ映画「地下に潜む怪人」を見ました。
この映画はホントーに、邦題が悪い。原題は「AS ABOVE,SO BELOW」です。直訳すると「上のように、その下の」という意味なのですが、どう意訳すればいいのかヒジョーに難しい!でもこのタイトルが言いえて妙なのです。
ちなみに、カタコンベ(地下墓地)ホラーであり、POV映画でもあります。オカルト要素が強い作品であり、「ディセント」的なヒトたちは出てきません。ただ、得体のしれないものに追われ、友人が得体のしれない何かに侵食され、得体のしれないルールに振り回されるお話。私はこの映画は好きですよ。

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あらすじ

考古学者であるスカーレットは、父の遺志を継ぎカタコンベに隠された秘密を解き明かすことにする。しかしその行動が、思わぬ悲劇を招くのであった。

ネタバレ

主人公・スカーレット自身が撮影しているカメラ映像から話が始まります。
不法入国したらしいスカーレットは、ある遺跡に侵入しています。国の情勢が悪いのか、この遺跡は爆破されることが決まっている様子。しかし、父の研究を引き継ぐためのヒントがここに隠されている!とはりきり、壁をガンガン壊しまくるスカーレット。牛?の彫像を見つけ、そこに刻まれた文字を撮影する彼女ですが、そこにお父さんの首つり死体が現れて、彼女の名を呼びます。そして起こる爆発。

といってもスカーレットは無事に帰還しており、研究を続けています。
彼女の探しているのは「賢者の石」。賢者の石は、錬金術の基本?でもあり、この錬金術の研究に父娘は没頭している様子。研究が成功すれば不死の魂が手に入るそうです。
ですがこの研究のせいで父は異常と言われるようになり、自殺したそうですが、彼女はそれを信じていません。
そうそう、POV視点が彼女の手持ちカメラから、このスカーレットに密着したドキュメンタリーのカメラに切り替わります。そのカメラマンがベンジーという男性。

スカーレットは以前トラブルがあって以来疎遠になっていたジョージを訪ね、助けてもらうことに。ジョージとは、彼がトルコで拘留された時に助けに行かなかったことで溝が生まれてしまったのですが、なんとか和解します。

謎を解くため、2人とベンジーは博物館に侵入。お目当ての石板をひっぺがし、その裏側を洗剤を混ぜた液体で拭いてから火であぶり、文字を浮かび上がらせます。

そして、その石板のメッセージからその秘密がカタコンベにあることを突き止めたスカーレット(ちなみにフランスに滞在中という設定)。通常のツアー(カタコンベのツアーってのがあるそうですよ。人骨ゴロゴロしてるところを歩くツアー)に参加して様子見をしてみますが、いかにもおどろおどろしい雰囲気です。
「止まれ!ここが死者の帝国だ」
と記されているこの不気味な場所。
「パピヨンという男に道案内を頼め」とすれ違いざまに男が口走りますが、そいつはすぐに姿を消してしまいます。この男の正体とは?

さて、クラブでこのパピヨンという男を見つけて、案内をしてもらうことに。ちなみにこの人、非正規のガイドです。
登山家であるゼット、パピヨンのガールフレンドのようなスージーも加わりますが、ジョージは閉所恐怖症のためにツアー同行を拒みます。ジョージの弟は洞窟の湖の中で水死したそう。そのトラウマのせいで、狭いところがダメなのです。
なお、ここでパピヨンの手にヤケドの跡があることが判明。これは伏線です。
あと、全員のヘルメットにカメラが装着されているというのも一応、大事な設定のひとつです。

ですが、いざ出発しようという時に警察が突然現れて、ジョージも巻き込まれて一緒に中に入ることになってしまいます。まるで、呼ばれるかのように……!

そして、「真っ白の女の人が壁をさわさわ」している幻覚がベンジーのカメラに映ります。

進めないところが出てきたので、骨の山の隙間を這って進むことにする面々。しかしちょっぴりデブなベンジーがここでつっかえてしまい、大慌て。結局この道は崩れてしまったうえ、ループが起こります。さっき通った道に戻される彼ら。「ここに入ったら、生きては帰れない」という禁じられた道を進むしかありません。

しかし、進んだ先の道にはパピヨンがいつも壁に落書きする形でサインが残っています。
「ここに来たことあるんじゃないか!」
「なんで迷わせるようなことをするのか!」
と怒られますが、彼にはとんと覚えがありません。

ここからは「急に電話がなってるわ!この音は何!」とか、古びたピアノが突然現れたり、死んだと思われていたパピヨンの友達であるラ・トープくんが(行方不明だったらしい)が現れたりと超常現象が続きます。「出口は下だけだ」という、男のメッセージとは果たして何の意味があるのか?

とにかく、下へ下へと進む面々。ここでベンジーが怪我をしてしまい、大騒ぎ。
さらに突然超音波のような高音が聞こえてきて、全員が耳を押さえます。

さてさて、この「ひたすらループ」「変な音や声が聞こえてくる」というのは、洞窟やカタコンベホラーの醍醐味ではありますが、ここから唐突に謎解き場面も出てきます。

トリックを解かなければ先に進めない。先に進むには、正しい石を引き抜かなければならず、それができないなら死ぬ(天井が崩れる)という展開があります。
水星・金星・地球……(水金地木土天……のアレです。海王星と冥王星の順番って今どうなってるんだ)のあの順番をもとに、当時の天体学の歴史を考慮しながら石を引き抜くスカーレットとジョージ。見事に成功しますが、先の部屋にあったのはまったく腐乱していないミイラ死体。しかも、身分がかなり高そうです。なぜ、ここに死体があるのか?
この部屋には水がたまっている謎のスペースがあるのですが、そこを潜って別の部屋に行くと、お宝部屋につながることが判明!
たくさんのお宝に興奮するパピヨンたちと、賢者の石のヒントを探すスカーレット。
あまりの異常現象に、映画を見ているこっちも賢者の石のことをすっかり忘れていたのでありますが、このお宝の横に刻まれた壁のメッセージの中に、石がはめ込まれていたのをスカーレットは発見。スカーレットはそれをほじくりだしますが、パピヨンたちはその横でお宝を持ち出そうとします。「それは罠よ!」と叫ぶスカーレット。しかし、時すでに遅し。天井が落ちてきます。

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ここからパニック映画のようにバタバタ走り回ることになりますが、スージーが落石に挟まって大怪我。しかし、スカーレットは賢者の石を持って呪文のようなものを唱え、石をちょっと削って傷口にふりかけたら、治癒します。

次に抜け道を探すことにするのですが、どんどん悪い方向に進んでいる印象。地獄の門に記されている碑文がある、いかにも悪夢まっしぐらの道を進まねばなりません。
さらにあったはずの出口(入ってきたところ)が消えてるし、ライトは消えるし、途中でいなくなったパピヨンの友達を発見するも、暴れ出して大変なことに。
こいつがスージーの頭をつかんで壁にバンバンしたことで、スージーの顔がぺったんこになります。ここでスージー離脱。

また下に降りることにする彼ら。しかし、途中でベンジーが落下してしまいます。この死には、途中で彼が見かけた白い不気味な女(ちなみに、こいつはパピヨンと出会ったクラブにもいた)が関係しています。ベンジーもここで離脱です。
一方、死んだ弟・ダニーの幻覚を見るジョージ。「俺のせいじゃない!」と叫ぶ彼。まるで、スカーレットが自殺した父の幻覚を見た時と似ているのですが……?

ここで、突然目の前に炎上した車が登場。パピヨンのヤケドと関係しているのでしょう。彼は絶叫しますが、そのまま炎上する車に引きずり込まれ、車自体が渦を巻くように小さく小さくなっていき、パツンと消えてしまいます。そして、そこにはパピヨンが足だけ地面の外に出して死亡している、逆犬神家状態のの死体が……!
掘り出そうとするも、どう考えても無理だわと諦める彼ら。

「どうなっても人生は最高だった」と言い、いちゃいちゃするスカーレットとジョージですが、どんどん追い詰められていきます。
顔が歪んだ人間なのかもわからない者。KKKのような頭の先がとんがった黒マントを着た、謎の男(ちなみにこいつ、なぜかイスに座ってボーッとしている)。
こういうものを刺激しないようにしながら逃げようとしますが、ここでジョージが突如動き出した石像に首をガブガブされてしまい(もう謎だらけのコイツラの正体がわかりませんが)、大怪我をします。

スカーレットはふと気が付き、賢者の石を戻しに行きます。実はこの石、ニセモノ。本当の石は違うところに隠されていました(じゃあ、スージーは何で良くなったのやら?)。
ジョージのために!とダッシュで行って戻ってするスカーレット。
しかし、頑張ってクライミングしたらドロッドロの血だまりの中に落ちたり、パパの死体をまた見つけたり、床にでっかいお口が現れたりと、とにかくテンポが速い展開です。

ジョージと共に残ったゼットは、知らない人たちに囲まれてにじりよられそうになり、ジョージを引きずって逃げるはめに。この場面も怖いです。暗視カメラ越しに見える、知らない人たちのにじりより。笑えない怖さ。

ここらへんで、スカーレットは気が付きます。
上に行くためには、下に逃げるしかない。
そして、外に出るためには自分の罪を告白して、懺悔して、そして穴に飛び込めばいい。
どういうこと?と言われても私もわかりませんが、この映画を見ていると「そうか、ガンバレ!」としか言えない圧倒的なパワーがあります。なんだろう、でたらめと思いつつも、すごい熱量があるから飲まれてしまう(個人的見解)。

それぞれの懺悔。スカーレットは自分の父の自殺を止められなかったこと。
ジョージは、弟の死は「自分が助けを呼びに行ったから死んだんではないか、あの時に自分が助けていれば死ななかったのではないか」という懺悔。
なぜかここまで生きているゼットは「子どもがいるけど、認知していない」というギョエーなカミングアウト。
そして3人は手をつなぎ、穴に飛び込みます。

物凄い衝撃と共に、彼らは穴の底に転げ落ちます。これで合っていたのだろうか?と戸惑う彼らですが、さらにそこで穴を発見。
そこは、地上につながるマンホール。ただし、コインの裏表のように、エッフェル塔も、樹や街灯、建物も下に向かって伸びています。
穴からなんとか出る彼ら。ここでマイクが壊れてしまって、ゼットは何かを話しながら去っていき、スカーレットとジョージが抱き合うところで終わりです。
なお、エンディングの画像スライドショーはかっこいいですよ。

そもそも、賢者の石とは何だったのか?
カタコンベにいた彼らは、賢者の石を守るための存在だったのか、それとも悪魔だったのか?
なぜ、地下の世界は上下が逆転しているのか?
など、ものすごく謎がたくさん残っているのですが、この映画に関しては説明がない方がいいと思います。ホラーにはこじつけなんていらないのだ!
血ではなく、骨で怖がらせてくれる映画という点では「ディセント」と共通点があるのかもしれないですね。個人的には必見のホラーです。