「絶叫のオペラ座へようこそ」

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「絶叫のオペラ座へようこそ」を見ました。2014年のカナダ映画です。
ステージの上で殺戮が起こるのは、なんとなく「ラストサマー」のミスコンを想起させるし、「スクリーム2」もそういえば演劇シーンがあったっけ(※すみません、後から気が付いたのですが「ラストサマー2」と表記しておりました。ラストサマー2は孤島リゾートで殺し合いするから演劇シーンなんてないぞ!)。
とにかく、ホラーミュージカル風なのも楽しい。犯人が最後までわからないところも(まあ、勘のいい方ならなんとなくわかるでしょうが)、ミスリードを誘う場面も多いのも、いかにも愛すべきホラーファンが作ったんだろうなと思わせる内容です。
ただねえ。この映画、日本人からはブットビ映画なんですね。去年見た「叫」(外国人が樹海で撮影してみたものの、明らかに日本語は変だし海外で撮影しているのまるわかりだし、そもそもカンフーシューズを愛好している人は日本にそんなにいないと思います。しかも樹海には……)以来、トンデモ映画だぜ!
※「叫」はアメブロのほうで紹介しています。
そこを覗けば、スリリングでポップなホラー映画です。

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あらすじ

オペラ歌手の母を惨殺された過去を持つ、カミーラ。
彼女は歌手への夢を諦めきれず、ミュージカルのサマーキャンプの裏方として働きながら、ミュージカルへの出演を直訴するが……。

ネタバレ

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こちらの作品は実話がもとらしいです。ホントかね?

カミーラのママは実力派のオペラ歌手。
しかし、楽屋に突然侵入してきた仮面の男に殺されてしまいます。(この扮装は「オペラ座の怪人」に出演していたため。なお、この「オペラ座の怪人」は一貫してこの映画の芯となりつづけます)
仮面をつけた謎の怪人を恋人のプロデューサーと間違えてイチャイチャした挙句、首にナイフを刺されるママ。しかも首を刺された上に、口にナイフを突っ込まれます。返り血で血まみれになるバラ……。
前途洋々と思われたカミーラのキャリアは、突然閉ざされるのです。

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そして10年後の夏。ミュージカルのサマーキャンプが開催されます。
そこに向かうバスの中、そしてキャンプのなかでも、いたるところでミュージカル調に話が進行。「演劇なんて」「ダンスと歌なんて」と言われ続けている子どもたちが唯一輝ける場所として、このキャンプは描かれます。
なお、王子様的なポジの青年もいるのですが、こいつがぴちぴちの短パンなのが実に気持ち悪い。そして生徒たちを苦々しげに見ている、管理人らしい爺さん。
(イジワルキャラの管理人は、なぜハゲているのに横の髪は長く伸ばすのか?もともと長髪だったのかな)

なお、ここでは子どもたちの延々と自己紹介パートが続きます。「ゲイは陽気(※本来は同性愛者だけでなく、陽気な人を指すらしい。ホント?) 私たちはゲイ~♪」と歌い狂う子どもたち。なお、「私は本物のゲイ♪」って人もいますけど。

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なお、大人になったカミーラは弟のバディと共に、キャンプのキッチンで働いています(兄かな?名前しか出てこないので、血がつながっていることしかわからなかった。もしかして双子という設定かもしれない)。
血のつながらない父親代わりの元プロデューサーがキャンプを運営しています。
といっても、その運営は火の車。

そして、今年の夏の発表会の演目は「オペラ座の怪人」。
母が死んだ時の作品ですから、カミーラも思い入れが違います。このミュージカルに出たい、歌いたいと歌い上げるカミーラ。そこにプロデューサーの歌、さらには生徒たちの歌が重なっていきます。まったくメロディも違うし、歌詞すらも違うのですが、この重なりようがすごく気持ちいい。
それにしても、主人公が非常にかわいい。ホントに美人さんです。このアリー・マクドナルドちゃんは「デビルズ・フォレスト 悪魔の棲む森」に出演していたようですが、見たけど全然覚えてないわ……。ただ、かわいいとおもった記憶はあるような気もする。

生徒しか受けられないオーディションに潜りこむカミーラ。
もちろん見とがめられますが、彼女のことをほのかに好きな舞台スタッフに協力してもらい(この男子の影が薄すぎて泣ける)、オーディションを受けることができました。審査をするのは演出家でチャラいアーティと、ゲイの舞台監督デヴィット。カミーラの歌唱力と美貌はアーティの心を捉え、彼女は舞台出演できることに。しかも主役です。しかしながらWキャスト。大事な初演に出演できるのは、カミーラ?それともライバルのリズ?

さて、オーディションの合格者を集めての初めてのレッスン。
「今回の演出は顔を白くする……」「ああ、ブ○カケですか?」というすさまじい会話がありますが、なななななんと!
アーティのアイデアは、オペラ座の怪人を歌舞伎風にしよう!というもの。いやあ、これは明らかに失敗だと思うんだ。

レッスンのの直前にカミーラの大事なママの写真が破かれるという事件もありますが、その証拠として手が汚れているのが、カミーラと主演を争っているリズ。
この女も性格が悪いですが、カミーラも負けません。

そして女好きのアーティは、カミーラに迫りまくります。なんと小さなステージ(段ボール箱のようなサイズのもの)を持ってきて、幕を開けたらそこにはカクテル!なんてオシャレな演出も。よっ、シティーボーイ!
お酒を飲みながらキスをねだるアーティですが、実は男性と付き合ったことがないカミーラはそれに応じることができません。そのせいかリズの扱いが良くなり、カミーラは悔しく感じます。負けられないカミーラは、うまく演じられないリズにあてつけるように、怪人と絡むヒロインの演技をアーティとねちっこく演じて見せます。そうなると、カミーラの扱いが良くなります。

つまり、キスさせたり、胸を触らせたり、セ○クスさせたほうがヒロインというゲス展開。舞台スタッフ君はカミーラのなりふりかまわない感じに幻滅しますが、カミーラはどうしても主役が欲しい!と、とうとうおちちまで放り出します。手に持っていた帽子をポトリと落として衝撃を表現するアーティ。マンガみたい。
しかし、いざコトを始めようとすると、カミーラはどうしても勇気が出ないのです。アーティはあきれて、カミーラももうこれ以上できない!と半分諦めます。

でもその夜。舞台上にいるアーティの上に、照明がドンドン落ちてきます。
(「金田一少年の事件簿」を思わせる展開)
ここで照明の金具がアーティの足の甲を貫通してしまい、動けなくなったところに、電ノコの歯(円状で、周りにギザギザの刃がついているもの)を使って幕を切り裂き、登場する怪人。いやあ、この仰々しさがホラーっぽいけど、同時にバカバカしい。アーティはこいつに襲われてつま先もとれてしまい(!)、死亡してしまいます。

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次の日、自分は主演になれないのだとキャンプを出ていこうとするけれど、止められるカミーラ。なんと彼女が主役に選ばれたことがわかります。これには裏があり、彼女が死んだオペラ歌手の娘だから。実は死んだママは業界では有名な実力派だったらしく(ホントか?)、それに興味を示した演劇評論家が発表会を見に来てくれることになったのです。
しかし、同時にアーティの死も明らかになり、パニックになる子どもたち。でも「ショーが中止になるぞ!それでもいいのか!」「1日黙っているだけでいいんだ!」というプロデューサーの鶴の一声で、彼らは我慢します。とはいえ「人が死んだのに、歌ったり踊ったりしていいの?」とまっとうな質問をする小さい女の子。それでも発表会は強行されます。このウヤムヤの間に、電話線をこっそり抜くプロデューサー。

そして、地下らしき謎の場所で、出演者たちの写真に傷をつけながらデスボイスで歌い狂い殺人を予告する怪人。この人の正体は果たして……??

可能性としては
①いかにも怪しい管理人のおじさん
②いかにも変態なカミーラのことを好きすぎる舞台スタッフ(ストーカー)
③殺され役かナイト役か、はたまた殺人鬼なのか?な弟
④いかにも実はワルそうなプロデューサー
さあ、犯人はわかったカナ?

と、本番前のシーンになっていくのですが。
なんと、歌舞伎メイクがどうみてもKISSだったり、セットやBGMや小道具が中国風じゃねーかだったりという違和感ありありの作品です。

ちなみに初日の主役を外されたリズは舞台裏をコソコソ。
なんと、舞台上に血の入ったバケツを釣り上げてぶっかけ、彼女に恥をかかせようとしています(展開は「キャリー」そのもの。まあ、ペンキかもしれないけど)。

しかし舞台が始まるとその裏では、顔を釘だらけにされて殺されている衣装係・ホイットニーが発見されます。そして、それを見つけたオペラ座の怪人役であり、王子様キャラのアホ男・サムも殺されます。
サムは最後、舞台監督でゲイの男の子とキスをしたりもしていたのですが、死んじゃいましたね。こういうオバカキャラは意外と生き残るかと思いきや、残念!

さらにカミーラと楽屋が一緒の女の子も、怪人に襲われます。「蒸気で喉を潤すため、シャワーを出しっぱなしにしておく」というカビが繁殖しそうな習慣を守っている女の子ですが、その蒸気のせいで怪人の姿が見えず、むざむざと殺されてしまいます。

その死体の山を次々発見するリズ。

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キッチンには襲われているプロデューサー。
怪人の格好をした殺人鬼はギターをつまびきますが、そのギターの弦のところに包丁が刺さってます。なんでギター持ってんだかは私も知らん。ジョジョにいたよね、こういうアホ。
と、ここで犯人がようやく仮面を脱ぎます。犯人は……やはりバディでした。

「(カミーラを舞台公演から)遠ざけようとしたのに!」とカミーラに言うナディ。
実は母が殺された時に、公演後の舞台上にいたカミーラ。しかしバディは楽屋に隠れていたのです。実はママを殺したのは、他ならぬプロデューサーだったこと。その原因は母の浮気だったこと。(ママとプロデューサーは交際していた)
それをバディは目撃してしまいました。
しかし隠れていたところをプロデューサーに見つかっており、恫喝されたこと。怖くて怖くて、10年間真実を言えなかったことを告白します

しかし、バディはプロデューサーのおっさんに逆にやられて、バスバス刺されます。
そしてその頃、キャンプのゴミ箱から生首が見つかります(この死体、誰だっけ?)。

舞台裏ではカーミラとおじさんの最終決戦。殺人鬼はバディでしたが、黒幕はおじさんだったんですね。おじさんもママを殺したことは内緒にしておきたい模様。いやいや、もうごまかせないだろ……と思うんだが。
殺人があったサマーキャンプになんて、人が来ないでしょうしね。

と、カーミラは電ノコでおじさんを殺そうとします。しかし電源が入っていないというミス!!しかしそこにたまたまいたストーカー舞台スタッフが助けてくれて、おじさんを殺すことができます。いや、殺してよかったんだろうか?緊急事態だからいいのか?話し合いとかさぁ、いろいろあるんじゃ……。まあ、ホラーだからいっか!
とにかく、電ノコが刺さって、悲惨な最期を迎えるおじさんであります。

そして、舞台上では場をつなぐためのはずが、汚い恰好をしたリズ(バケツの細工をするために、黒ずくめ)とゲイ舞台監督でアリアの奪い合いをしています。
しかし最後に、リズは自身の細工した血をかぶってしまうというオチ。

しょうもない舞台はナンダカンダで幕が閉じたような感じになるのですが、そこで管理人が立ち上がってスタンディングオベーション。いかにも怪しげな管理人のおじさんは、単なるいい人だったのであります。

そして、少し時間が過ぎて。なんと、この「オペラ座の怪人」リバイバル公演が行われてます。といっても、歌舞伎アレンジはナシですが……残念だなあ(棒)。

著名な評論家はすっかりカミーラがお気に入り。彼女はスターへの道を登っていっているのです。
そしてひとりきりの楽屋。電球が切れそうになっているのでつけかえると(こんなこと、歌手がやることでもないような?)カガミがばりーんと割れてしまい、中から怪人がつかみかかってきます。
と、ハアハアする彼女。そこに「スタンバイよ~」という呑気な声がかかります。

ラストがたしか夢オチだったように思うのですが、途中の印象が強すぎて覚えていない……ゴメンナサイ(見返す機会があったら確認しときます)。
ただ、メモに「なんだこの話」と最後に書いてあるんで、夢オチだと思われる。

この映画は概ね高評価のようで、「ミュージカルをやる子どもたちのマイノリティーさかげんもイイ」とか、パロディやオマージュがつまっているのがいいとか、そんな感じに捉えている方が多いみたいですね。
「glee」もそうだったけど。でも、アメリカなんて演劇の授業があるくらいですから、そこまで下に見られるモンなんかね?単に空気よめない自己陶酔型が集まったのか?

ぶっちゃけ、こんなに影のある弟がいるんだから何か意味があるんだろうな(そして、いかにも怪しげな管理人とかストーカーくんとかは犯人じゃないんだろうな)とは思いましたけど、スラッシャー要素もあり、キュートでポップな曲もたまらなく楽しい。まさに舞台向きとも言えるような気がする。
これだけ荒唐無稽なことをやりつくしているのだけれど、それでもカッコイイ。日本のホラーもこういうの作ってくれないかな。ちょっと楽しそう。