「クラウン」

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2014年の映画「クラウン」を見ました。アメリカ/カナダ映画であり、製作はイーライ・ロス。
最近レンタルがスタートして、こちらのブログでも紹介済の「ストレンジャー」よりは、私はこちらの方が好み。
抗うことができない邪悪な存在を描いています。イーライ・ロスはこの手のオカルト映画より、直接的な暴力やスプラッター演出が持ち味という印象がありましたが、この監督たちに着目したのはさすがという気もする。素晴らしい映画だ。おぞましくて、気持ち悪くて、震えがくる。ピエロ映画といえばキング原作の「it」がおなじみですが、みんなのトラウマだよ、これは。夜中にしれっと放送して欲しいわ。

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あらすじ

若手映像クリエイターのジョン・ワッツとクリストファー・フォードが手がけたフェイク予告編がイーライ・ロスの目に止まり、彼のプロデュースで実際に長編映画として製作されたホラー・ムービー。

息子の誕生日に手配していたクラウン(ピエロ)がドタキャンとなり、父のケントは急遽クローゼットの中からクラウンの衣装一式を見つけ出すと、自らクラウンとなって誕生パーティを盛り上げ事なきを得る。ところが、いざ衣装を脱ごうとしても身体と一体化して脱げなくなってしまう。なんとそれは、子どもたちを襲う伝説の悪魔の呪いがかけられた禁断の衣装だった。徐々に悪魔に支配され、子どもたちを狙う狂気の殺人鬼へと変貌していくケントだったが…。

http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=351905

ネタバレ

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主人公の息子の誕生日会から物語は始まるのですが、もう冒頭からシビれる。
ピエログッズやケーキに描かれたピエロなどが次々映し出され、同時に子どもたちの「ギャー!」「キャー!」「アーッ!」などの悲鳴がかぶさり、4連続くらいして「CLOWN」という映画タイトルが出ます。シンプルだけどカッコイイなあと思わせられ、自然とハードルが上がるんですよ。でも、このハードルを飛び越えていくんですよ。この映画。

誕生会にピエロが手違いで来ず、落ち込む少年・ジャック。
ママのメグからパパのケント(主人公)に電話がいき、よきパパであるケントはどうにかしてあげようと思います。ケントの仕事は不動産業。その日も、亡くなった客の家を改装している(おそらく、再度売り出すため)最中だったのですが、その家に置かれていた衣装箱に、ピエロの衣装とカツラがあることに気が付きます。
人の家のものを勝手に身に付け、誕生日を盛り上げる父。しかし疲れてそのまま寝てしまいます。

次の朝、起きてピエロの化粧を落とそうとするケント。しかし、化粧は一向に落ちません。
仕方なしに職場(改装中の家)にピエロの格好のまま出かけ、そこで化粧を落とすことに。なんとかメイクは落ちましたが、カツラとピエロの鼻(赤くて、ドラちゃんのしっぽみたいなやつ)はとれません。そして、服ももちろん脱げません。なんとか脱ごうとナイフを刺しこんだり、電ノコを使ったりする主人公。しかし皮膚が切れるわ、電ノコが壊れるわで、結局脱げず。

そのまま家に帰り、歯科で働く(おそらく、歯科助手?)の妻に鼻をとってもらうことに。それでもやっぱりとれないのですが、無理やり剥がすメグ。痛々しい音と共に転がる鼻。これを飼い犬・シャドーが食べちゃいます。

でも服は脱げないし、カツラは髪の毛と一体化しています。そのまま過ごすケントですが、急に食欲が旺盛になり、台所にある食材を無茶苦茶に食い散らかします。
そして次の日、今度は髪の毛を切って染めて元の色にしようとするケント。相変わらず食べまくり。ちょっとぽっちゃり体型になった?そう、ピエロのように……。

衣装のことを探ろうとするケント。衣装箱から情報を探します。
そしてピエロの衣装を扱うお店に行き、この衣装のことを知っていそうな人を探し出します。

この衣装を扱うおじいさんこそ、家の持ち主(故人)の弟だという事実もわかるのですが、その人と対面するケント。イーライ・ロスの趣味なのか監督の趣味なのかはわかりませんが、芸者柄のカップでお茶することになります。オシャンティーですね。

そして恐ろしい事実が明らかに!
ピエロはそもそも、子どもを食う悪魔だった。
そのピエロが道化に進化して、子どもたちに親しまれる存在になった。
というじじいの説を聞いているうちに、眠くなるパパさん。
そう、薬を盛られていたのです。
このじいさんに首を切られそうになりますが、なんとか逃げることに成功。

ようやくじいさんが漏らした真実。
「これはピエロの衣装なんかじゃない、悪魔の肌と髪なんだ」
つまり、主人公がそれを身に付けたことによって、徐々に悪魔になっていってしまう!
それを食い止めるには、殺すしかない!というのであります。

そのじいさんを拘束、家にお持ち帰りして家族に助けを求める主人公。
ですが、家に来ていた友達が「カツラをいいかげんにとれよ~」と髪の毛をつかんできます。それを突き飛ばしたら骨が飛び出るほどのケガをさせてしまうし「このじいさんが黒幕だ!」とわめき散らすし、そのじいさんはケガしてるしで、妻からも妻の父からも冷たい目で見られるケントです。
息子も窓から(´・ω・`)という顔で見ていて、ちょっとショックなパパさん。

そのまま家を飛び出すケント。どんどんとピエロ化が進んでいきます。
ここでゲーッと吐くシーンがあるのですが、ピエロだからでしょうか。ゲロがカラフルなんですね。どういう理論?

自殺するしかない!と感じながらも「子どもを食べたい」と思い出す主人公は森の中に逃げます。
しかしキャンプ中の子どもと遭遇。主人公を見つけて、ピエロだとわからずに「お腹へってるの?」と話しかけるキッズ。そう、この映画の子どもって基本的にいい子が多いんですよね。それだけにかわいそうですけど、「ハラヘッタ……クワセロ……」という主人公は、お菓子を差し出した子どもの手をかじってしまいます。泣きながら逃げる子ども。

森の中でホームレスのほうに暮らすケントですが、公衆トイレで歯がぽろぽろ抜け落ちたり、足が巨大化してドタ靴状態になったり(グーフィー並みに足がでっかくなる)、その足をビニール袋で覆って移動したり。とにかく「食べたい」「食べちゃダメだ」のせめぎ合いで苦しみまくります。
仕方なしにモーテルに泊まりますが、人懐っこい子供に優しくされて「食べたいっ!食べたいっ!」となるものの、理性でもって「あっちへ行け」と命じます。
しかし、すごーくしつこくて親切な子供なので、部屋にまで押しかけてきます。

なお、この時点でケントの肌は白くかさつき、服と皮膚が一体化していきます。歯は尖り、まるでキバのようです。

ケントの行方不明を心配する妻・メグと「あの男から子どもを守れ」と言う妻の父親(おじいちゃん)。
ちなみに、鼻を食べた犬は具合が悪そうですが、明らかに顔が白くなって(本来は黒っぽい犬)、ウーウー唸って悪魔化しています。

自殺しようと銃を咥える主人公ですが、引き金を引いても血が出るだけで死ねません。今度はレインボー柄の血が吹き出します。よく考えたら、ゲロも血もレインボー。カツラもレインボー柄だけど、浮かれている感じがするよね。レインボーって。
ここで、目元と口元にピエロ独特の線が入り始めます。ただ、皮膚がぱっくり切れていることからくる線なのであります。この線も何とも痛々しい。

最終手段として、電ノコを2つ並べてその間に倒れ、首を自らちょんぎろう!とギロチンのようなものを自作するパパさんなのですが、ピエロの悲鳴を聞いて前述のしつこい子供が助けに来てしまい、巻き込み事故でこの子がケガ。倒れてしまいます。その子に駆け寄るものの、なんとなく背中の切り傷の血をぺろっ……と舐めてしまうケント。
妻がケントを探し回ってようやく見つけますが、その時には既に時遅し。メグに従いモーテルから帰るケントですが、部屋の中には子どものものらしき骨だけがバラバラになって残っています。

妻に自身を地下室に繋がせる主人公。
メグは衣装屋のじいさんに会いに行くことになります。
このじいさんにも関わっていると思われる、「拘束具のついた謎のイス」。
そして「そのイスにしばりつけられながらも暴れる悪魔のようなもの」の映像。
これは果たして……??

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ちなみに息子のジャックは少しいじめられっ子の気質がありまして、この日も泣かされて帰ってきます。
そのままパパを見つけ、懇願されるままに(既に悪魔に支配されており「縛ってくれ」といった父の意志は消えてしまっている)鎖を解くジャック。

ジャックをいじめているコルトンくん。彼は自宅でオンラインゲーム中です。
禁止されている武器を使うわ、自己中心的なプレイをするわでギルドでも嫌われ者らしいコルトン。そのコルトンの前に、パパクラウンが現れます。
最初は威圧的に振る舞うコルトンですが、ゲーム内の様子や会話(音声で会話できるように設定してある)とリンクするように追い詰められるコルトン。
ゲーム内では現実世界でのいじめをバラされ、死体蹴りされまくり、「お前は死んだ」と宣言されます。そしてそのゲーム画面が映っているモニターにコルトンのものらしき内臓と血がドバドバと飛び散ります。

さて、ジャックの愛犬でもあるシャドーは悪魔犬になってしまい、獰猛になり、妻やジャックを襲い始めます。
その結果、首を切り落とされ、ショワショワと溶けていくシャドー。かわいそう……。

さて、ここで入院していたじいさんが真実を話してくれます。
この衣装は、アイスランドからやってきた謎の衣装であること。
着たら悪魔になってしまうこと。
実際に、じいさんはこの衣装を着て悪魔化してしまい、兄に助けてもらったこと。
兄は弟を助けてくれた後、衣装を守り、そのまま死ぬまで守り抜いたこと。
しかし、それを主人公が着てしまったことで悲劇がまた生まれたのだということ。
ちなみに、じいさんは悪魔化してから人間に戻るまでの記憶はなく、目覚めたら衣装はなくなっていたそう。
しかし、兄は弟を助けるために、冬の間死にかけの(罪もない)子どもを1人ずつ捧げ続けたというのです。
(すみません、捧げるペースをメモし忘れました……どういう謝罪だこりゃ)

妻が見た映像の中の、イスに拘束された悪魔。これは実はじいさんだったのだ!

悪魔を滅ぼす方法はない!ケントを殺すしかないんだ!という、穏やかじゃないじいさん。躊躇するメグ。
とりあえずケントを追いかけることになります。

ピエロがいても怪しまれず、子どもがたくさんいるところにケントはいる!ということで、ゲームセンターとアスレチック施設が一緒になったようなキッズアクティビティを訪れる妻とじいさん。

ここで、唐突に子ども目線のエピソードも挿入されます。
弟を探すため、チューブのようなパイプのようなアスレチック(名称がわからない)の中に入り込む少年。キョロキョロしていると、弟がピエロらしきものに襲われているところを見つけます。兄はピエロを引きつけ「逃げろ!」と叫びます。その直後、飛び散る血!!!逃げてチューブを滑り降りる弟。その滑り台をつたって落ちてくる、大量の血液。
遊んでいた親子は悲鳴をあげながら逃げ惑います。このあたりの描写は実に不気味。

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ブラックライトに照らされたプレイランドで再会する、妻と夫。しかし夫は既に悪魔そのものであり、優しかった頃の面影はありません。
「子どもを1人よこせば、旦那を帰してやってもいいぜ」と言われて息を飲むメグ!
その直後に警察がやってきますが、間違ってじじいを逮捕していきます。じじいショック!

騒然とするプレイランド。駐車場で呆然とするメグですが、ある女の子に「親とはぐれちゃったの。あなた、歯医者の人でしょ?よければ送ってくれない?」と話しかけられます(こんなパニックの時には、もうちょっと慎重に行動すべきだと思うんだ)。
すげぇ悪い顔をするメグ。
ある場所で女の子を車から降ろし、パニックになる少女を放置しようとします。つまり悪魔に彼女を捧げようとするのですが、ふと自分のしようとしていることに気付き、車のドアを開けようとするメグ。しかし、そこに迫りくる何か……!
警察でした。案の定、警察に怒られる奥さん。

しかし、メグは家に帰ると、今度は自身の子どもを襲おうとするケントと対面。
たしかメグは妊娠しているはずなのですが、パパさんはお腹を狙ったりジャックを狙ったりととにかくアクティブ。ジャックと狂ったケントの心が温まらない追っかけっこやら、パパとママのブン殴り合いがあるのですが、とにかく顔つきが悪魔っぽくなりすぎてて怖い。どういう理論かはわかりませんが、眼の部分が盛り上がっていて頬がこけているこの輪郭!コワスギ!
結局夫の頭をぶった切り、それでもまだ動こうとするので引きちぎる(!)という、ホラーファンには夢のような展開だ!どろ~、ジョワ~ッと溶けるケントの顔。ママさんとジャックくんは抱き合い、無事を確認し合います。

もしかしてメグが自分の職場で子どもを調達してきて犠牲にするエンドなのかな?と期待したのですが、そこまでゴアな描写はありませんでした。
しかし、ピエロの服が皮膚と一体化してからの衣装がとにかく気持ちが悪い!何かの皮でつくったのでしょうが、とにかく生々しい感じがあります。CGではなく、血のりや特殊メイクをちゃんと使っている印象で、生臭さがフィルムからも匂ってきそう。メイクも衣装も素晴らしく、熱意がある映画だなあと思いました。
そして、今更イーライ・ロスが出演していることに気が付いたのですが、もしかしてケントのカツラをとろうとして足の骨が飛び出した人だったのだろうか?うーん、それならやっぱりこの人、頭がおかしいです!!!