「コドモのコドモ」から垣間見える、性教育の難しさ

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2008年の邦画「コドモのコドモ」を見ました。こちらはホラー映画じゃないのでありますが、とても気になっていた作品だったので見ることにしました。「小学生の妊娠・出産」をテーマにしている映画です。

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小学5年生の女の子が妊娠・出産するというセンセーショナルなテーマを扱ったさそうあきらの同名コミックを、同じ原作者の「神童」に続いて萩生田宏治監督で映画化した異色ドラマ。衝撃的な設定を通して、命の尊さや性教育の是非、そして仲間を思いやり、自分たちで奇跡を成し遂げる子どもたちの力強い姿を真摯な眼差しで綴る。主演はオーディションで選ばれた新人の甘利はるな。

小学5年の春菜は、幼なじみで仲の良いヒロユキがいじめられているのを見るとすぐに助けに入る勝ち気で元気な女の子。ある日、ヒロユキと一緒に公園に行った春菜は、興味本位から“くっつけっこ”という遊びを始める。その後、担任の八木先生が行った性教育の授業で、“くっつけっこ”の意味するところを知った春菜とヒロユキ。ほどなく春菜は妊娠を確信する。そして、お腹も次第に大きくなっていく春菜だったが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=330985

ネタバレ

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小学生の春菜は、同級生のヒロユキと「くっつけっこ」をしたことで妊娠。性教育の授業を経て、自分が妊娠していることを確信する春菜。しかし、家族には内緒にしたまま、級友たちの助けを借りて春菜は子どもを産むことを決意する。
という、非常に簡単な話です。

春菜と同じ立場ながら「生まない」ことを選んだ姉の友達。
クラスのイケメンを巡ってもろくも崩れていく、女の子の友情。
夏休みのけだるい空気。
いつも優しくて、いつも味方でいてくれるおばあちゃん。
「天然コケコッコー」にも似た、誰もが経験したことあるようなノスタルジックな小学校時代の空気に、「妊娠」「出産」というセンセーショナルなテーマが絡んでいきます。

この映画に関して本気で怒っている方もいるようで、「小学生の妊娠を扱うなんて、なんたる破廉恥な」という人もいるようですね。しかしながら、これは子供向けの映画ではないですし、そもそも性行為を煽るような内容でもないですし(そんな描写もありません)。だいたい小学校でこういうことをしている子はやや珍しいですが、一定数いるものですしね。
(一概には言えないですが、治安の悪さが大きく関係している気がする……。ちなみに、うちの小学校では「付き合う」「カップルになる」ことすらありませんでしたね)

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この映画においては、性教育の難しさや、子どもたちが春菜を守りながら「妊娠や出産は、いやらしいものではない」ということを学んでいく姿がキモなのではないかと思います。
担任の先生を演じている麻生久美子さんの演技がまた見事で、いつもキリキリしていて余裕がなくて、「セッ○スはいやらしいものなんかじゃないの」と言いながらあけっぴろげな性教育をして親に怒られて、生徒には「エロー」とはやしたてられて。むくわれないけれど、決して味方になりたくない感じの女性を熱演しています。
いや~、性教育って難しいんでしょうね。あけすけにしてもやりにくいし、包み隠してもやりにくい。先生って大変なんだなあという思いが芽生えました。

実際のところ、この映画を見ていて「オチは想像妊娠って話なんじゃないかしら」と最後まで疑っていたのですが、本当に出産シーンがあります。しかも、子どもたちだけで出産をするという衝撃的な場面です。普段はふざけてばかりいるおデブの少年は息を飲み、父親であるヒロユキは春菜の手を握り、友人たちは励まし、産婦人科医の息子と学級委員長が子どもを取り上げます。医者の息子の男の子も、「産婦人科医って、エロ、エロって言われる」「俺は絶対に産婦人科医になんてならない」と言っていたのですが、春菜の出産を通して考え方を変えます。このシーンがいいなあ、と思う。

この出産シーンで終わっていたら感動的なのですが、続きがあります。マスコミに追われ、街の噂になり、ヒロユキは引っ越しを強いられます。これが現実なのだと思わせつつ、それでも家族や友達と支え合って生きていくというファンタジー。小学生の妊娠と出産をテーマにしているから過激でしょ、というポーズではなく、子どもたちの目を通して出産について考えさせられる映画であります。