「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」

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この映画はいいよね。何度でも言う、この映画はいいよね。2014年のニュージーランド映画「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」。
一見地味なこのお話がなぜ松竹から配給?とは思ったのですが、やはりそりゃあ面白いからであった。
ニュージーランドのコメディアンが脚本を執筆し、製作し、出演までしているこの映画。
「インド・オブ・ザ・デッド」もそうだけど、「ショーン・オブ・ザ・デッド」に次ぐホラーコメディとして評価されるべき映画。ゾンビじゃなく、あえてあまり手垢のついていないヴァンパイアコメディをテーマにして、ここまでわちゃわちゃ面白くできたのはすごいなあ。

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各地の映画祭で人気を博したニュージーランド発の痛快ホラー・コメディ。何百年も生き続けているヴァンパイアたちがシェアハウスをしながら現代社会の中でお気楽な毎日を送っているさまを、彼らの日常生活を密着取材しているドキュメンタリー作品の体裁でコミカルに描き出す。監督・主演はマルチに活躍するニュージーランドの人気コメディアン、タイカ・ワイティティとジェマイン・クレメント。

ニュージーランドの首都ウェリントン。陽気な379歳のヴァンパイア、ヴィアゴは、1軒の屋敷をヴァンパイア仲間4人でシェアして暮らしていた。彼らは日が暮れると起きだし、夜な夜な外へ繰り出しては遊び歩く愉快な日々を過ごしていた。そんなある日、長老ヴァンパイアのピーターが大学生のニックにうっかり噛みつきヴァンパイアに変えてしまう。こうしてシェアハウスに新たな仲間として加わった新米ヴァンパイアのニックだったが、ヴァンパイアのルールに無頓着で何かとトラブルの種に。ついには、人間の親友スチューを勝手にシェアハウスに招き入れてしまい…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=350622

登場人物

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ヴィアゴ:379歳のヴァンパイア。神経質で几帳面、口うるさいダテ男。かつての恋人は現在老婆になっているが、それでも彼女の家の窓を眺めるのが日課のピュアなヴァンパイア。

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ディーコン:183歳の問題児。ヴァンパイアでいうところの「反抗期」らしい。トラブルメーカー。(ちなみに写真はさぼっていた皿洗いをさせられているところ)

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ヴラド:862歳。中世からヴァンパイアで居続けている古めかしい男。元恋人が大嫌い。かつては残虐な君主として知られた。

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ピーター:メンバーのなかでも最高齢のヴァンパイア。ミイラのようなルックスで、たびたび暴走する

ニック:最近ヴァンパイアに仲間入りした男。ルールを守れず、みんなに迷惑をかけまくる。
スチュー:ニックの友人の温厚な青年。彼の手助けで、ヴァンパイアたちも現代に順応し始める。

ヴァンパイア映画であり、モキュメンタリー映画でもあり。CGもふんだんに使われていますがゴアなシーンもありますし、ギャグもたっぷり盛り込まれています。

ネタバレ

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(合成感がスゴイ宣材写真)

ネタバレは簡単に。

シェアハウスで共同生活をしながら、夜な夜な外出するヴァンパイアたち。実はヴァンパイアたちは巧みに人間世界に紛れています。子どもの2人組のヴァンパイアちゃんもいます。さらに、ヴァンパイアだけじゃなく、魔女やオオカミ人間、ゾンビたちも存在している世界です。

彼らはなんとか日常生活になじんでいますが、ディーコンの「使い魔」のような存在である人間の女性が彼らの生活をサポートしています。彼女は、いつかヴァンパイアにしてもらうために彼らの言うことを聞いているのです。でも、ヴァンパイアが増えすぎると危険だから、という理由でなかなか噛んでもらえず、じりじりする人間女性。
そしてある日、頼まれて友人を彼らの“エサ”として捧げることになります。とはいえ、彼女はあっさりしたもんですが。しかし、そのうちのひとり、ニックがピーターの手により、ヴァンパイアとして蘇ります。

ちなみに、ピーターが逃げ惑うシーンも入っているのですが、これがかなり怖い。
廃墟(のようなシェアハウス)をウロウロ、鍵があかない。焦る。とりあえずカバンを開けたらそこからヴァンパイアの顔と手が出てきて彼につかみかかるし、猫の体をしたヴラドがニヤニヤしているし、逃げたら集団で宙をかっきって迫ってくるし。面白いだけじゃなく、かなり怖いのがイイ。

しかも別の人間の首に噛みついたディアゴが「間違って頸動脈噛んじゃった!」と血がブシュブシュ噴き出させるシーンはそれなりにゴアです。

しかしこのニックが問題児であり、人間の友達を勝手にシェアハウスに呼ぶし、酔って「俺はヴァンパイアだぜ~!」と叫びまくってヴァンパイアハンターにピーターが襲われるし、今度はそのせいで警察も家にやってきます。警官に催眠術をかけて切り抜けるのですが、このシーンもまたおかしい。
ニックは騒動の責任をとり、シェアハウスを追放されます。

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でも、ニックの友達であり、人間でもあるスチュー。
この人がもう、めっちゃくちゃいいやつなのです。
パソコンやガラゲー、スマートフォンを与えて現代文化について教え、ネットショッピングやインターネット、スカイプをも教えます。さらに趣味の空手を教えてあげたり、みんなで遊んだりと楽しい時間を過ごして「ニックはいらん!スチュー大好き!」「スチューだけは噛まない!」とファンになる彼ら。
この現金ぶりがちょっとかわいいのであります。

そして、ヴラドの元恋人が主賓である毎年恒例のパーティに招かれたヴァンパイアたち。「自分が主賓じゃないなんて!」とヴラドはへそを曲げたので、ヴィアゴとディーコンが参加。ですがニックはもちろん、スチューまでそこに来ちゃってます。人間だとバレたらまずい!と言いつつ、すぐにバレちゃう展開。
しかしそこにキメキメのヴラドが遅れて颯爽と登場し、パーティを引っ掻き回して退散。

ここから急展開ですが、やっと皆が団結して仲直りしたかと思いきや、その日はたまたま満月。オオカミ男たちに偶然会ってしまい、自分で自分を制御できない状態の変身した彼らに殺されてしまう(!)スチュー。悲しむヴァンパイアたち。

でも、実はスチューはオオカミ男化して、助かっていました。そして、スチューを通して今まで犬猿の仲だったヴァンパイアとオオカミ人間が仲直りする、という大団円オチなのです。ラストは彼らがカメラを通して映画を見ている人たちに「君たちはこの映画を忘れる…忘れる…」と催眠術をかけているシャレたシーンで終わり。
そういえば、ヴィアゴも年老いた元恋人をとうとう噛み、おばあちゃんヴァンパイアにしてあげてカップルとして暮らしています。「年の差カップルだからいろいろ言われるけど、へっちゃらさ」と笑うヴィアゴ。

全体的に、笑えて、怖くて、ちょっとドキドキして、でもハッピーな映画。スチューが死にかけてから生き返るまでの映像なんて、わざわざ再現フィルムのように撮影して「※これは再現映像です」と挿入されています。
DVDを買ってもいいくらい面白いし、洒落てるし、ファッションもかわいい。
今年この映画を見ないで、何を見る!ってくらい素晴らしい。劇場に行けばよかった~!