「殺人ワークショップ」

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みなさんは殺したいほど憎い人はいるのでしょうか?いないことを祈りたいものですが、 「人を殺す」ことがテーマのこちらの作品、2014年の「殺人ワークショップ」を見た!
白石監督の作品で、劇場で見られなかったことをやや悔いてはいたのですが、無事にDVDにしていただいて嬉しい。

ラストまで見るとシミジミとこみあげてくる、この映画の面白さ。ホラー映画ファンなら見ておいて損はありません。
色んな意味で面白すぎる。

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なんだこのおもしろパッケージは……!?

あらすじ

「シロメ」「カルト」の白石晃士監督が、自身が講師を担当したENBUゼミナールの俳優コースの実習作品として手がけたサスペンス・ホラー。主演は「オカルト」の宇野祥平。

奇妙なメールに誘われ、闇の殺人ワークショップに応募したアキコ。だがそこは、殺し方を教えるだけでなく、実際に殺したい人間を参加者みんなで殺しに行く実践型ワークショップだった。

http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=349703

「オカルト」でウザすぎる霊視男を演じていた宇野さんですが、この映画でもその奇妙な存在感を発揮しています。
しかし、宇野さんがハゲていることに時代の流れを感じるなあ。

ネタバレ

俳優になりたいからと演劇のワークショップに行きたいと恋人に打ち明けたアキコ。しかし「俳優ってツラか」「ワークショップってなんだよ」と、ボコボコに殴られます。
そして、殴られ終わったアキコはこのタイミングで唐突に送られてきた「殺人ワークショップ」のメールに惹かれ、それを受講してしまうのです。

この、冒頭の暴力シーンが非常に長い!「ブス!」と言いながら頭を何度もひっぱたかれ、蹴られ……。
このDV、私は幸いなことに体験したことがないけど異常にリアル。新宿駅でよく見るやつ。女の子がガラゲー折られてる時の雰囲気そのものです。

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殺人ワークショップに集まっていたのは合計6人。
ホストを殺したい派手なギャル。
心をもてあそんだ嘘つきの恋人を殺したい女性。
自分の親友をいじめ殺した男たちに復讐したい男性。
いたずらに、ただ人を殺してみたい青年。
妹を殺したい女の子。
そして、恋人を殺したいアキコ。

さらに、そこに現れたのが関西弁を話す怪しげな講師。
彼は生徒たちに殺人に至る動機を語らせ、お互いに殺し合うレッスンをさせます。ここでも生徒はボコボコ殴られます。
「自分はこんなことをしなくてもうまくできる」と話す猫殺しが趣味の青年を縛り上げ、生徒たちに殺させる講師。それを拒否したギャルも、講師が殺します。
逃げ出そうにも講師は「逃げたら殺す」ことを明言しており、彼らは仕方なしに「共犯者」となります。

監禁される生徒たち。
ワークショップの教室でトイレをさせられ、寝させられます。それでも夜中に逃げ出そうとする女(この人は、妹を殺したい女性です)。彼女は他の生徒の制止も聞かずに逃走しようとして、講師に殺されます。

この時点で、生徒たちは3人になってます。
親友のために殺しをしたい青年。
恋人を殺したい女性。
そして、アキコ。

まず、青年の殺しへ。
ひとりで親友のいじめっ子(といっても大人なんだけど)2人と対峙する青年。
彼は友達の写真を破られ、遺骨を灰皿にばらまかれて、怒りのままに2人にとびかかります。
ただ、1対2だから圧倒的不利。そのせいで、後からかけつけたアキコたちが加勢したものの、青年は相討ちで死んでしまいます。

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次は恋人を殺したい女性。彼は廃墟に監禁されています。しかし、女性は彼の姿を見ると許しちゃうわけです。
恋人を逃がす女性。追う講師。アキコは彼女を見逃し、追いかけさせてしまいます。
講師は青年をボコボコにしていますが、女性はそこに取りすがり、共に死ぬことを決意します。
しかし、そこに颯爽と現れたアキコ。女性と青年は講師によって死に、アキコの手によって講師も死んでしまいます。
ちなみに、このロケ地である廃墟が異様にカッコイイ。

殺人ワークショップは、思わぬ形で終わってしまいました。
しかし、アキコはその足で自分の家に帰り、同棲していた恋人にナイフを突き立てるのです。
何度も、何度も。
「私がどんなに苦しかったか、わかる?」
わかるはずないと思いながら、問いかけるアキコ。
そして最後は、彼女の横顔やら正面やらのアップがあり、講師が渋谷の雑踏に消えていくシーンが導入されます。
実は冒頭では渋谷の雑踏(スクランブル交差点)から現れるシーンがあるので、対になっているシーンですね。

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物憂げな宇野さんである。

「どういう展開をするのだろう?」
「どう終わるのだろう?」
と考えてしまうのですが、いい感じに想像を裏切ってくれます。

「人を殺したい」。
その気持ちがいかに重い荷物であるかを、一瞬のうちに感じ取ることができる映画。