イケメン目当てで視聴すると度肝を抜かされる!サスペンスの皮を被った狂気のミステリー『#マンホール』

「この結末を、あなたは予想できない」みたいなキャッチフレーズが成立するのは、それこそ本格ミステリーだけ。

誰も想像できないようなとっぴな設定を振りかざして「衝撃の結末でしょ!誰も想像できなかったでしょ!」と自分からアピールするのは、いささか品のない印象が残る。

この映画も、最後まで見たら「ええ…」と言いたくなるような展開が待っております。ただ、不愉快とか面白くないとかいうことではないんですけども。衝撃のラストという言葉よりも、ものすごい急に話が飛ぶって言葉のほうがふさわしいと思う。

邦画サスペンス『#マンホール』。

この映画は、主演である中島裕翔さんのファン以外には、どのような見られ方をしたのだろう。「サスペンス映画が好き」「マンホールに落ちる極限状態に興味がある」みたいな物好き(私のような)もいるとは思いますが、大半はファンの方が観に行ったのかな? デートムービーでもなさそう。というよりも、デートにこの映画を見たらわりと… ウーン… こういう映画に耐性があるとかサスペンスが好きとか、映画自体が好きとかじゃないと、頬がヒクヒクしそう。

ファンの方にも、ぶっちゃけ優しい映画ではない。主人公は醜くて汚い一面をこれでもかとスクリーンで見せまくる。これくらいで引くわけもないとは思うのですが、限度があるだろってぐらい、設定が濃い。

私は中島さんに全然詳しくないですが、嫌味な役とか無骨な役とか抜群にうまい記憶があるので、後半のほうの演技のほうが好きではあった。ただ、嫌味なサラリーマンをやらせると他の追随を許さない妻夫木聡や、テンションの乱高下でファン(わたし)を楽しませてくれる藤原竜也などと比べると、やや物足りないという気持ちも残る。

爽やかヘタレ青年がマンホール脱出を目指して四苦八苦するというストーリーだと思って舐めてかかると、ケガをする。平面的な映画じゃない。映画を観ている側をこれでもか!と“刺す”映画なのだ。

この映画のユニークな点は、ほぼ一人芝居だというところ。回想シーンや冒頭では他のキャストも出てきますが、ほぼひとり。1人でスクリーンを持たせなきゃいけないのって、ものすごい責任が伴う仕事ですね。

女優陣には奈緒、黒木華。2人とも好きです。そう、「来る。」で黒木華と共演してものすご~い嫌な奴だった妻夫木聡と比べちゃうのよ!ついつい!ごめんなさい!!!

さらなる共演俳優の永山絢斗さんはねぇ… いろいろあったよね… 出演シーンをカットされているのでしょうか?なんで出てきたのかよくわからないくらいチョイ役な感じですが…

監督は熊切和嘉監督。懐かしいわ、「鬼畜大宴会」の監督じゃん…!

 

ストーリーはこんな感じ。

  • 結婚式を翌日に控えた新郎・川村がマンホールに投げ込まれ、脱出を試みる。だが場所は不明、電話がつながるのは元カノの舞1人のみ。
  • 性別を偽ってSNSで助けを求めるも、うまくいかない。
  • マンホールのなかで、突然現れた遺体。それを見て、川村はどこに自分がいるのか理解する。
  • 実は川村は10年前、大企業に就職するはずのクラスメイトを襲って命を奪い、そのまま整形して彼になりすまして人生を乗っ取っていた吉田という男だった。そしてマンホールに彼を落とした犯人は、当時川村(襲われて亡くなったほう)が交際していた幼馴染の恋人だった。
  • 混乱する吉田だが、舞によって無事救出される。しかし、マンホールから出た瞬間、彼を待っていたのは川村の恋人だった。
  • 彼女は吉田の顔をはぎとろうとするも、彼の必死の謝罪に心を動かされ(憐れんだ?)、襲撃をやめる。しかし、彼は反撃に出た。それを止めたのがSNSのユーザーで、吉田がなりすましていた「マンホール姫」の熱狂的なファンの少年だった。川村の恋人を殺そうとしていた吉田をマンホールに突き落とし、少年はマンホールのフタを閉めてしまう。
  • ラストシーンでマンホールのフタがガクッと動くシーンがあるので、もしかしたら何かの暗示?続編作るの?それともガス爆発?

どうですか?そんなに簡単に整形できるわけないだろ(ダウンタイムえぐそう)!顔の骨を削って目と鼻と唇も変えて頬骨とかアゴとかも削ったりしたのか…??身長と体形はどうしたんだ!とプラカードを持って練り歩きたくなる気持ち、私もわかりますよ。

そもそも、「この人みたいにしてください」って芸能人じゃない人(一般人)の写真を見せて施術してもらうパターンあるのかな?あるのかもしれないけど、この映画のシチュエーションに絞ればどう考えても怪しいネ!

 

この映画を観て、不満な点はいくつかある。

まず、ストーリー。最初の時点でもう、犯人はこの人ではないのかな?と想像がついてしまった。そもそも携帯電話を回収されていないという点、ひとりにしか電話がつながらないという点で怪しすぎと映画中に思ってしまう。多少ひねりはあるのですが、大体の人がストーリーの仕組みに違和感を覚えそうではある。

また、薬を盛られて廃墟のなかのマンホールに落とされ、足をケガしていることに気付くシーン。いや、それ以前に数メートルの距離を頭から落下しているはずなのに、わりとピンピンしているのがものすごい。硬い30代。あと、起きて少ししてから足を動かしてみて「痛い!ケガしてる!?」と気付くのも不自然ではある。足から血がダラダラ出てたら、その痛みで先に目が覚めそうだけどなあ。薬に鎮静剤の効果があったのなら、まあまあそういうこともあるのかも…?いやないかも…?とは悩まされる。

 

主人公の性格設定もけっこうキツイ。怒りっぽい、傲慢、浮気症のクソ男として描かれているのにも理由があるにせよ、前半は電話がつながっている元カノを終始イライラ怒鳴り、「警察は役に立たない!」とプリプリして捜査に協力すらしない。無能すぎる… 前半はとにかく、イライラのもっていきどころがないのよね。

X(Twitter)を利用して助けを求めるという設定はまあまあ面白くはあるのだが(だからタイトルにハッシュタグが入っているのだろう)、そんなに珍しいものではない。「電車男」っぽいわちゃわちゃ感は良く出ていて、これは編集がうまいんだと思いました。

ただこれだけSNSをぽちぽちしておいて、充電をまったく気にしないでいいというシチュエーションもよくわからなかった。

 

もうひとつ、気になったのは「マンホール」そのもの。

なーんか、全体像がよくわからない。どのくらいの広さがあり、どんな状況なのかがよく伝わってこないのは、情報量が多いからだと思う。水たまり、泥、瓦礫、ガス管なんかがあるのはわかるのだが、ぐちゃぐちゃで汚くて、それなのにまったく閉塞感がないし、狭そうにも見えない。のであまり主人公の気持ちに共感できない。「今にも命を落としそう」な緊迫感は欠けている。

途中、水たまりから泡がわいてきて泡パーティ状態になり、そこでライターをつけたらガスに点火して爆発!…するもなにも状況が変わらない、というシーンには驚愕しましたね。ケガもなし。マンホールに影響もなし。ポン!って泡が弾けただけ。

車のトランクの中とか棺桶の中とかチューブの中とか井戸の中とか穴の中とか、それこそ下水道の中とかで助けを求める映画などなど、極限状態の映画はたくさん存在するのですが、そのどれよりも広々としたスペースと快適なネット環境があったのはちょっと変な感じがしました。

 

ただ、ラストで体の骨が折れてぐにゃぐにゃになった姿や、錯乱して顔に泥を塗りたくって叫ぶ姿まで見せた中島さんには俳優根性を感じたのも事実。小学生の中島さんファンの女の子とか見たら、真夜中にうなされると思う。

軽やかなイケメンサスペンスかと思いきや、どっしりした狂気の演技と設定でもって思いっきりしばかれた気がする映画でした。要は、つっこみどころ含め面白かったってことだ。

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