アイルランド製ホラー、2021年製作の『ユー・アー・ノット・マイ・マザー』を見ました。
飛び級するほど賢いけれど、顔にやけどのあとがあることから繊細で臆病な性格の少女・シャー。彼女の母親は一度失踪してから戻ってきたものの、奇行が続き… シャーは次第に、それが自分の母親ではないと思い始める…
というストーリーです。
こういう設定の場合にはオカルト映画である可能性が高いのですが… これはオカルトなのだろうか?
一度失踪して不安定になった母は自分の兄弟に劇薬を飲ませて病院送りにしたり、祖母を手にかけたりしてシャーを追い詰めます。
でも彼女は、やはり本物の母ではない。おそらく「悪魔」的な存在のものと入れかわって戻ってきたということがわかります。
これはアイルランドのほうで伝承されていた民話に基づく設定だと思うんですが、たしか悪魔は人間の赤ちゃんと悪魔の赤ちゃんを交換するという伝説があるんですね(まあ、悪魔の子と自分の子が入れ替わるって設定は『ローズマリーの赤ちゃん』からあるから有名か?)。それを見つけて、回避する方法は説話によってさまざまだと思いますが、この作品内では「燃やす」ことで、本当の子供が帰ってくるということになっています。アグレッシブすぎない?燃やしたら戻るってどういうシステムなんだ。
それで、シャーは子供の頃に悪魔にさらわれて交換されたと思われ、燃やされ、そのせいでやけどしたという裏設定があります。(その娘のやけどのせいで、母は近所でも狂人扱いされていた)
このあたりで混乱するのですが、シャーは一度取り換えられたのか?だったらなんで本人がやけどしているのか?まあこのあたりはよくわからないから割愛(説明も丁寧ではない)。
シャーと仲良くなる不良・スザンヌは、死んだ母の幽霊らしき存在に「(シャーの家から)逃げろ」と警告されたりもします。
など、ちょくちょく幽霊をはさみつつ、奇行がすごいママにふりまわされるシャーの映像が続くので、ひたすら胃腸にもたれる感じの内容が続く。いたましい事故が続いてなぜかハイテンションではしゃぎまくるママにドン引きするシャー。
そんなシャーは、ハロウィーンの焚火(アイルランドでは焚火をするそうです)で母を燃やそうと計画しますが、クラスのいじめっ子に反対に燃やされそうになるという大事件も起きます。
しかし、ママ乱入で大格闘の末、母親を燃やすことに成功。
もちろん大騒ぎになりますが、その最中に本当の母親が家に帰ってきて、シャーを抱きしめてくれる… そして幸せな生活を送るシャーとママというラスト。
幽霊が出てくるシーンよりも、ママがシリアスな空気の中でげらげら笑って狂うシーンが印象深い。というよりも、ママのマジ狂いシーンと、重たいいじめの濃いシーンが続くので、重たい方向に平坦な感じがする。面白くない、ということはないんだけど…
そして、あーよかったねハッピーエンド!で片付けられないおばあちゃんの死…
おばあちゃんがこっそりお母さんから悪魔祓いしようとしていたシーンもすごく興味深く見てしまった。「おばあちゃんの悪魔祓い」ってワードだけで、なんかごはん3杯くらい食べられる気がする。