美しくて奇妙で退屈な幽霊の物語『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』

渋谷パルコは映画館が上階にあったと記憶しているんですが、オッシャレーな映画ばっかりやっているイメージ。

この映画もオシャレだな~と思ったら、日本だとパルコが公開に関わっているのだと知る。

アメリカ映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』。

ケイシー・アフレックがシーツをかぶって幽霊を演じています。まぁ、この響きだけでどういう映画かわかりますでしょう。なんかオシャレ。とがってる。カッコイイ。美しい。みたいな。

いいところは、このシーツ姿の幽霊がかわいらしいようで切なく、むなしく、手ごたえのない夢のようなお話… 淡々とした幽霊の日常を一緒に追体験しているような感じ。

一方で、お話が非常に長いのよ。登場人物が話し出すと、その語りがむちゃくちゃ長い。しかも、中身はわりとしょうもない(このしょうもなさがリアリティ濃いともいえるか)。

ぼんやりしている時間もすごく長い。テンポが独特。

  • 若い夫婦の夫が死んでしまい、悲しむ妻。幽霊になってそれを見守るしかない夫。しかし彼は家から出ることができない。
  • 気が付くと、知らない別の家族が自分の家に住んでいる。皿を投げて脅かして彼らを追い出すが、次の瞬間にはまた新しい家主がおり、若い男女がホームパーティをしている。
  • 彼らが去った後、家は取り壊される。
  • 幽霊は気が付けば跡地に建設されたオフィスに立っている。彷徨う幽霊。屋上から飛び降りる。
  • なぜかタイムスリップして、昔のアメリカ(開拓時代?)にきてしまった幽霊。野宿をしていた家族はあっけなく殺される。
  • 今度は、なぜか生きていたころの自分を見つける幽霊。妻と自分の姿を見守る幽霊(幽霊を見つめる幽霊も出てくる)。
  • そして妻が塗ったペンキの跡を撫でさするうち、そこから何かが飛び出してきて、家の扉が開く。幽霊のシーツははらりと落ちて消えてしまう。幽霊はいなくなる。

うーん、整理してもよくわからないような気もしますが、雰囲気が重要な映画だから見るのが一番だと思います。

私が好きなのは、隣の家にも幽霊がいて、窓越しに挨拶をするんですね。

で、相手が「なーんだ。あの人かと思ったのに」みたいなことを言うんですね。

男の幽霊が「誰を待ってるの?」と聞いたら

「………忘れちゃった」

と返すのが、すごく空虚な感じ。ものすごく怖い。

まちすぎてからっぽになるっていうのが良く伝わってくる場面。顔も何も見えていないのに。声すらないのに。

センスの塊の映画です。ただし、退屈ではある。美しくて退屈というところが、なんかふかーい感じがしますね。