1年に1番だけすべての犯罪が合法化される日。それが「パージ」。
この設定いいじゃん!しゃぶりつくそうぜ!とばかりに、めちゃくちゃ続編を作っている。それも「パージ」。
ちょっと整理してみよう。
オリジナル → パージ
イーサン・ホーク主演で、シンプルな作り。ある金持ちの一家がパージの危機に晒される。
2作目 → パージ:アナーキー
貧困層メインに、金持ちが貧乏人を狩るシーンが挿入されるなど、悪趣味度アップ。
3作目 → パージ:大統領令
政治的な陰謀が絡んでくる作品。政治家とそのボディガードの話になるので恐怖は薄まる。
テレビシリーズ → パージ(シーズン1)※アマゾンプライムオリジナル 未見ですサーセン
4作目 → パージ:エクスペリメント
パージの前日譚。実験段階のパージを描く。ギャングがヒーローになるまでを描く。
5作目 → フォーエバー・パージ
パージをやめない虐殺者たちを相手にメキシコ脱出を目指す移民の話らしい。未見
それで今回見たのが、4作目の『パージ:エクスペリメント』。2018年製作。
今回の作品では「パージは増えすぎた国民の人減らし(貧困層・移民層を合法的に殺そうとしている)」ことが明言されるわけですが。それはナイスアイデア!とも特に思えないが…
個人的にいいなあと思ったところ。
舞台がニューヨーク州スタテン島だということ。島、ってのがまずいいですよね。島ホラー大好き。また、たしか吸血鬼ドラマ『ストレイン』でもキープレイスとして描かれていましたが、風景がほどよく都会で、ほどよく田舎なのもいい。
俳優もいい。
ギャングのディミトリを演じているイラン・ノエルのルックスがとにかく素敵(俳優さんとしてすごく魅力があると思う)、ヒロインのナヤを演じるレックス・スコット・デイヴィスの美しさもたまらない。脇役たちもこんなにイケメンだらけのギャング集団はないだろう…と言いたくなるくらい、ビッとしていてかっこいいのだ。
ただし、ナンダカナーという面もあります。
ずばり、ギャングを善人として描いているところ。普段はドラッグ売りさばいて大儲けをして、周辺の治安を乱して生きているディミトリ。でもナヤを守るため、町の人たちを守るために立ち上がって軍隊と戦い勝利するのですが、最後「あんたのおかげで助かったよ!」「ありがとう、あんたはヒーローさ!」と皆が口々に言うのがね… 美化しすぎじゃない?
そんなに手のひらクルクルしますかね? ドラッグのせいでケガをしたり、死んだり、中毒になったりしている人もたくさんいるだろうし。その人たちの家族や友達、恋人もいるだろうし。それをサッパリ忘れられるもんですかね。
ストーリーを軽く振り返ると
- パージの実験をすることになったステイン島。島に残ると5000ドル、実験に参加して積極的に犯罪に加担するとさらに課金される
- ナヤはそれに反対してデモを起こすが、弟のイザヤは大金目当てに実験に参加。
- ディミトリは傍観するも、部下が反乱を起こす。
- 政府は殺し屋を投入して、貧困層を一掃しようと企む。仲間をむごたらしく殺害されたディミトリは復讐のため、そして元カノのナヤを守るために彼女の家(貧困者用の団地)に潜入 ← このあたりからアクション要素ましましになり意識が散漫に
- イザヤと因縁のあるヤク中が乱入してきたりと揉めるも、ディミトリは殺しのプロたちに勝ち、一部の住人たちは生き残ることができた。
- しかし、政府はパージを全国規模で実施することを決める…
という感じ。実験に参加するならカメラが内蔵されているコンタクトを装着しなければいけないのですが、それを目に入れるとゾンビ感が出てくるのが面白い。
彼らはれっきとした加害者のはずなのに、なぜか自分の意思を失い政治家に操られるまま犯罪を繰り返すただの人形のように見えてくるのです。
ちなみに、パージといえばコスプレや仮面も見どころのひとつ。今回はアイコンになるようなコスプレはありませんでしたが、ちょっと精神を病んでいらっしゃるようなオババコンビがティアラをつけながらぬいぐるみ満載のカートを押して夜を練り歩くシーンは怖かった。
しかもこのオババコンビ、ぬいぐるみに時限爆弾をつけて無差別テロまで始めるんだぜ。すげぇな。オババの技術力に胸を打たれた、そんな映画でした。