玉木宏の圧倒的俳優力だけがじわじわと滲みだしてくる『この子は邪悪』

この子は邪悪

ジャニーズがわからなくなってどれくらい経つのだろうか。

ここ数年にわたり、デビューが停滞していたジュニアの男の子たちが一斉にデビューしたりユニットを組んだりした時点で本格的にわからなくなった。それまでは顔も名前もなんとなくわかっていたのだが。

それにしても、ジャニーズはすごい。とにかくいろんなドラマや映画やCMに出まくっている。こういうのをゴリ推しという人もいるが、推されるだけの理由は絶対にあるわけで、そこで結果を出さなきゃ即終了の世界で奮闘しているさまはひとごとながらハラハラさせられるものがある。ライバルも多いし大変だろうな、忙しいし寝てないだろうな、とぼんやり考えたりもする。

話を戻すが、名前を知らなくとも、振る舞いやメイクや髪型で「あっ、ジャニーズか」とわかるのもまたすごい(先輩とセットでCMに出ているのもあるが)。

(あと、最近韓流系のアイドルの男の子たちがガッと増えたが、全員それぞれ違うんだけど微妙に似たようなメイクをしているのもなんだかすごいっすね)

今回見た『この子は邪悪』に出演していた大西流星(どうでもいいが、流星という名前の俳優とアイドルって多くないか?横浜・藤井、あともうひとりくらいいたような…と、この子で時々ごっちゃになる)。あっ、この人ジャニーズじゃん?なんかで聞いたことがあるな、と声で気が付く。

ジャニーズ?えっ、ジャニーズ?なぜここに?出てもいいの、コレに?

そう言いたくなるくらい、この映画は異質だ。

2022年製作の邦画『この子は邪悪』。

ちょっとイヤなのが、「あの子が邪悪」なのか「この子が邪悪」なのか「この子が邪悪」なのか、タイトルが混乱するのよ。

はっきり申し上げて、俳優・玉木宏の独壇場である。

玉木宏演じる窪は精神科医であり、かつて交通事故にあった家族とともに暮らしている。長女の花(主人公)は自分が無傷だったこと、自分が事故のきっかけを作ったことで自責の念にかられていた。

しかしある日、植物状態だった母が帰宅する。しかし、その母は、自分の記憶のなかの母ではない…

非常に面白そうではあるが、「仮面をかぶって生活する妹」「精神を病んだ母に苦しむ青年」「精神を病んだ人がごろごろする町内」「大量の飼育されているウサギ」など、映画を構成する奇妙な要素がめちゃくちゃ多いので脳の消化に悪く、頭が散らかっていく。

冒頭はめちゃくちゃ面白そうな感じで興味をそそられた。

のんびりと、だが明らかに呆けてしまった大人たち。彼らはみな、父親である窪の診察を受けた者たちだった。自分の母もそうなってしまった青年・純はその秘密を探るべく、一家の長女・花に近付いていく…

というスタートは、なんともオカルトな感じ。しかし、このテイストは冒頭だけ。残念。

だがその実態は、父親の持つ超能力に起因するものだった。催眠療法を通して、子供を虐待する親とウサギの魂を交換していたのだ(発狂したと思われていた大人たちの中には、ウサギが入っている。窪家で飼われているウサギの中に大人たちの精神が入っている)

そして交通事故で死んだ妹は虐待されていた少女の肉体を得て(その少女の魂は死亡)生還したため、顔が変わっていることを隠す目的で仮面をつけていた。

母親の顔が変わっていたのは、こちらもDVママと植物状態の母と中身を入れ替えたから。

なお、窪医師は体はDVママ、中身は嫁という形容しがたいパートナーと新しい赤ちゃんも作っていました。ここ、お話のなかで一番気持ち悪い。

秘密に気付いた純はウサギと入れ替えられ、同じく秘密を知った長女がショックを受けているところへ純の祖母が突撃。彼女は窪医師を刺し殺してしまう。

その後、よくわかんないけど現状を受け入れることにした(シリアスな顔をして何も考えていないところが闇深い)長女は、新しい肉体を得た母と妹とともに暮らしています。

となりには生まれたばかりの赤ちゃん(弟)。だが、その中身は、果たして…?

(おそらく、死ぬ直前に窪医師の魂が移っている)

ダークファンタジーだなぁ、と思っていたよ。ウサギとオッサンの中身を入れ替えるシーンまではな!赤ん坊と自分の魂を交換した時点で、窪医師のやっていることはDVを振るう両親から子供を救う正義の好意ではなく、ただただ自己満足だったことがわかります。まさに邪悪。

しかし女の赤ちゃんだったらどうするつもりだったんだろ。元精神科医のおじさんが中に入っている女児とか怖すぎる…

私は最後まで見てう~んと思ってしまったのですが、やっぱり玉木宏はすごいと思ったから最終的にはヨシ!

ただ、女性陣は「はぁっ!(驚)」「はぁ、はぁ(思考中)」「ううっ(涙)」みたいな演技ばかりで、具体的な行動を起こすキャラが誰もいなくて、それはそれでしんみり怖い。