最後というわりに意外とすぐ出られそうなんですけど…『CUBE 一度入ったら、最後』

邦画リメイク『CUBE 一度入ったら、最後』を見ました。

原作は97年に制作された名作で、シチュエーション系デス・ゲーム映画のはしりでもあるような。

ただ、多くのホラーファンがこのリメイク映画に期待していないんじゃないか、と私も推測していました。だいたいすべってしまうものですし、こういう企画。

で、実際に見てみるじゃん。開始5分で笑ってしまった。柄本時生が最初に登場してまず死ぬんですけど(どのような映画か提示するために殺される役)、突然部屋から飛び出してきた鉄柱に腹を抉られるという死に様なのです。

壁面から飛び出す鉄柱。素早く飛び出し、一瞬のうちに引っ込む。

立ち尽くす男。まず、真四角にキレた腹部の服がぺらりと落ちる。

四角く血がにじんでいく腹。そして、その腹部もそのままずるりと床に落下する。キューブ上にくりぬかれた胴体が転がった…。

いやぁ、どういう理屈なのか。こんなキレイに型抜けないだろう。物凄く鋭い刃がついているとしても、体が吹っ飛ぶだろ。

もう、この時点でツッコミを入れてくれい!という合図なのでしょうか。ちなみに原作通りに話を運びつつ、ラストは現代風にアレンジされています。

  • トラップのあるなしを見抜くのに、部屋に書かれた数字に素数があるかどうかが関連している
  • 端の部屋=出口を目指す→「999」の番号がある部屋=出口を目指す
  • 途中で最初の部屋(遺体がある)に戻ってくる
  • 醜い仲間割れがある

上記のポイントは原作通りだったかな。いや、改悪されているところもあるんだけど。

たとえば

  • 子供が混じっている(オリジナルでは障害のある成人という役どころから変更)
  • 主人公に弟の自殺を止めなかったという醜い過去がある
  • それぞれに事情がある(悪事を重ねた社長、被虐待児など)ため、選別された理由を察して!的な印象付けがある
  • CUBE側の“人物”が存在しており、姿を現す
  • 生存者がオリジナルよりも多い

あたりですかね。

あ、あとこれはオリジナルと関係ないけど、箱の壁面がチカチカピカピカ光る時があって、わりと目が痛かった。目が弱い人にはつらい!

今の時代、障害のある役どころを健常者の俳優がやることにヘイトが集まるかも?という危惧から、虐待を受けて育ち大人を憎んでいる子供=純粋たる、救われるべき存在として描きたかったのかもしれませんね。この子供だけ生き残るんですけど、出口がうっすら見えていたのがまた少し笑いを誘う。富士急ハイランドのお化け屋敷みたいな出口… と言ったら失礼だけどさ。そして原作と同じく、脱出する時に真っ白な光に包まれる生存者…みたいな演出もねぇ。

オリジナルは好きなんだけど、この作品の真っ白はそれを越えてない気がするぞ。だって感動もワクワクもよかったねぇも何もないもん。白っ!って感想しかない。

トラップの種類が豊富になっていたのはユニークではあるんですが、機械の触手に貫かれて死亡!とか、レーザーに当たって死亡!とか、火が出るとか刃が出るとか、どちらかといえばSAWシリーズのような、死にざまショーをやりたかったのかなという印象。

そしてCUBEのいいところのひとつに「箱の外の世界を一切見せない」のもあると思うんだけど、今作では思いっきり回想シーンで出てくるし、なんならその回想シーン(弟の自殺シーン)の盗撮映像まで流れるんだぜ。興ざめ! この盗撮も思いっきりカメラ目線なんだもん。監視カメラ目線とかじゃないの。横にカメラマンおったやろってくらいはっきり映っているのもなんだか気持ち悪い。

さらに!登場人物の事情についてですが、

  • 弟の自殺を悔いている主人公
  • ほとんどしゃべらない謎の女
  • 被虐待児
  • 普段の言動は厳しいけれど主人公を助けて死んでしまったツンデレ男
  • 口の悪い悪徳社長
  • 社長に罵られてキレて殺人に走ったアルバイター

などなど、クセが強すぎて… キャスト、こんなにクセツヨ集団でしたっけ? もっとねちゃねちゃと嫌な喧嘩をしていた気がするんだけど… 思い出補正??

最後。ラストシーンにも関係しているのですが、ず~っと口数少ない杏ちゃんが実はロボット?AI??であり、CUBEとして生存者や脱落者のデータを収集していることが明かされます。

おそらく、撮影中はまばたきをしていないのかな?(まばたきで撮影モードになるという設定があった) 表情も変わらず、ずっと違和感があったものの(主張しなさすぎ、喋らない、驚かないなど)「コロナ禍だからあんまり撮影に参加できなかったのかな」なんてのんきなことを思っていたんだ。違いましたね。

そう考えるとすごい演技だ!という気もするし、なんちゅう話なんだ…という気もする。ベッタベタのSF。悪い意味でマンガみたい。

最後。主人公は少年をかばって死にかけるのですが、実は生存していてまだサバイバルが続く…という匂わせがあります。えっでもだいたいのシステムが理解できているならもう脱出容易くない?それともアップデートされるのか??

それにしても、最近私が見る映画のなかの菅田将暉はずっとブルブルガタガタハァー…ハァー…している。『キャラクター』もそうだったけど。

『ディストラクション・ベイビーズ』と『帝一の國』よかったんだけどな。普通の役といったらなんだけど、等身大の青年の役をやっているところをもっと見たいですね。

文句ばっかりで申し訳ないが、俳優さんたちの演技はしっかり堪能できる(やっぱり斎藤工はうまいなあとか)ので、ファンの方にはうれしい映画ですね。

追記。あとで思ったんだけど、これ藤原竜也案件だったんじゃないか。想像したらめちゃくちゃしっくりくる。