アリゲーターとハリケーンの襲撃!シンプルだけどこってり怖い『クロール -凶暴領域-』

クロール

2019年のアメリカ映画『クロール -凶暴領域-』を見ました。なんちゅうタイトルなんだ。とはいえ、ストーリー自体は非常にシンプルで、意外にも「キャッ!」と叫びながら見られちゃうスリリングなパニックホラーであります。

監督は『ヒルズ・ハブ・アイズ』や『ピラニア3D』のアレクサンドル・アジャ。ホラーファンの間では『ハイテンション』が有名か?私は『ホーンズ』が好きだけど。この監督の映画、最近追いかけていなかったのですが、久しぶりに巡り合うとやっぱりいいですね。バカバカしさと怖さのさじ加減が絶妙というか、普通に怖い。未見の映画みちゃお。製作にはサム・ライミもいます。

ハリケーンの襲来、家を飲み込む濁流、さらにアリゲーターの襲撃。

こう書くと次々事件が起こりそうな気もしますが、わりとシンプルな話なんですね。ひたすらワニが怖いだけなんですけど、ただ、なぜか飽きないのがアジャ監督らしい。

うじゃうじゃアリゲーターが出てくるのですが、どいつもこいつも飢えすぎです。

主人公のヘイリーは大学で水泳をやっているのですが、行きづまっている最中。そんななか、ハリケーンの襲撃を受けた地域にいる父と連絡がとれないと姉から聞かされ、単身迎えに行くことに。

しかし、実家の地下室にいたのは足をケガした父親!な、なんとアリゲーターくんは既に地下室に何匹もおり、主人公を襲撃しようと身を潜めていたのだ…

増水のせいで地下室からは脱出しなきゃいけない、でも正攻法じゃダメ。ハリケーンのどさくさに紛れた強盗(といっても若い男女)が近くを通りかかるも、アリゲーターに襲われて次々と死亡!

途中で姉の元カレが噛み殺されたりするシーンもあったのですが、とにかく脱出に成功。しかし増水は止まらず、アリゲーターも止まらない!

二階に逃げ、さらに屋根の上に逃げようとするヘイリーとその父親ですが、ハラハラしつつも気になることが。ヘイリー、さんざん腕やら足やら噛まれまくっているのですが、全然食いちぎられないし、痛そうじゃないし(噛まれた瞬間は痛そうだけど、その後はわりと普通)、硬い女だなあと思わされる。

お父さんも硬いなあと思っていたら、あっけなく腕を嚙みちぎられましたが…

最終的にはシャワールームにアリゲーターを閉じ込めた(ここでクロールした以外はあんまり泳いでないです、ぶっちゃけ)シーンは緊迫感がありましたが、まぁ、大方の予想通り親子ともに助かって終了。

あと、愛犬のシュガー(シュナウザー!かわいい!!)も助かってよかった。わりとホラー映画では活躍しがちな「犬」ですが、シュガーちゃん吠えるのみ。かわいかったですね。

この映画の軸となっているのはパニックホラーではあるのですが、もうひとつ、ヘイリーとその家族の関係性もポイントになっています。

ヘイリーは水泳選手として活躍するにつれ、コーチ代わりの父親と家を空けることが多くなり(大会とか遠征とか)、そのせいで父と母が離婚したと思い込んで引け目を感じていたのです。姉のベスは母に似ていて、わりと母の肩をもつほう(なお、母はもう彼氏がいる)。ヘイリーは父にかわいがられていたので、孤独になっていく父を見て余計に苦しい…という背景があるのですが、この映画の途中で「離婚したのは子供のせいではなく親のせいだ」とはっきり明言してトラウマから解き放ってあげるシーンがあるんです。

こういうシーンを盛り込んでいることで、ヘイリーがどんな女の子なのか(家族思い、負けず嫌い、頑固だけど愛情深い)、父親のデイブがどんな人なのか(子供を愛している、たくましいけど不器用)がわかりやすくなっていたんじゃないかなと。それ以外はかなり説明を省いてある(どうしてアリゲーターがいるのか全くの謎。まぁ、地元の川に生息していたのでしょうが、台風の後にどうなったかも描かれない)のですが、家族の回想シーンを出さずにここらへんを示せるのはすごいなあと思いました。

サメ映画もいいけど、アリゲーター映画も怖くていいですね。久しぶりにパニック映画で素敵な作品だと思いました。