ブリーフ1枚で何度もループさせられる魔境『ココディ・ココダ』

ココディココダ

2019年のスウェーデン/デンマーク映画『ココディ・ココダ』を見ました。DVDジャケットデザインは超カッコイイですが、猫は合計数分しか出てきません。ものすごーく低予算臭がする・説明が一切ないままズンズン話が進みすぎて途中でわけがわからなくなるので、前半で見るのをやめてしまう方もいるかもしれない。でも、最後まで見てほしい。

簡単に言ってしまえばループものであり、何度も何度も知らないチンドン集団に殺される夫婦の話なのですが、ゆるゆる感が80年代ホラーみがあってだんだん見ている側も狂うような感覚がある。

ストーリーはわりとシンプル。仲のよい3人家族が旅行中、突然母の具合が悪くなって病院へ→そのまま泊まる→次の日は娘の誕生日。病院でお祝いよ☆ あら、娘が息していないわ! という謎の衝撃展開。

しかも、冒頭、家族はウサギのメイクをしているんですよね(イースターバニーの扮装か??)。このメイクもすげぇシュール。

で、推測ではありますが、夫婦は離婚はかろうじてしていないものの、娘の死で噛みあわなくなってしまった。でもなんとか立ち直ってキャンプに出掛けた。という感じの展開です。

森の中で適当にキャンプをしていた夫婦(それはどうなんだ…治安とか野生動物とか)ですが、嫁が森で放尿していたら突然「カンカン帽をかぶった愉快な白スーツおじさん」「ボサボサのオシャレツインテールで犬を連れたキチ姉さん」「豚の死体を抱いているぽっちゃり男」に囲まれます。あと、ちょこちょこ白猫が現れます。この猫の登場シーンはわりと鮮烈。森で白猫ってあまり見ないもんね。ちなみに人相がけっこう悪くてかわいい。

嫁はパンツ丸出しでチークダンスを強要され、旦那はテントの中に犬を放たれてブリーフ1枚にナイフというバイオの初期装備よりヒドイ装いで戦いますが、銃で撃たれて終わり。

夫婦が死ぬと、ものすごく引きの絵になります(ドローンで空中撮影しているような感じ)。これがいかにもバッドエンド、ゲームオーバー感があってすき。

で、この襲来&死がひたすら繰り返されます。

実はこの世界、旦那が見ている夢らしく、旦那は何度も目を覚まして(リスポーン地点に戻って)車で逃げるのですが、嫁が尿意を訴えてグズグズ、結局つかまってしまいます。

3~4回は死んでから、今度は嫁目線。

起きたら周囲に雪が降っていて、旦那も誰もいない。車を見ると、運転席にでっかい石が積んである。フツー、妨害って車が壊されてるとか車がなくなってるとかじゃない。石があって動かせないってすごい発想。そのまま彷徨う嫁はある家にたどり着き、そこで影絵の劇を見せられることに。娘を失った夫婦を思わせる影絵のストーリーに打ちのめされる嫁。

しかし、またリスポーン地点に戻って、旦那目線になります。えっ、嫁は…??

旦那は今度こそ慌てて車に嫁を詰め込み、バッチバチのボッコボコに喧嘩しながら車を走らせます。しかし途中で動物をはねてそのまま沼に車ごと突っ込み、呆然。そしてようやく夫婦は抱き合って泣く… という、言葉で説明するともうひくつきながら笑うしかない話。

夫婦にはお互いに心の壁をとっぱらってめちゃくちゃに大喧嘩して気持ちをぶつけ合う必要があったんだよ、ということなのでしょうか。

そしてラストに伏線回収もあります。冒頭に娘が欲しがっていたオルゴールが出てくるのですが、その側面に奇妙な3人組のイラストがプリントされています。オープニングでも出てきます。このプリント、私は単にオシャレなキャラ紹介かと思ったのですが、ラストで娘がこのオルゴールを見つめて意味ありげにしている雰囲気があるんですね。

つまりこれは娘による、夫婦仲を元通りにするための荒療治だったのか!娘は自分が欲しいオルゴールに書かれているキャラクターを夫婦の夢に登場させて、なんとか生きる気持ちを呼び起こしたのか!いや、わからんけど。真意は。

それにしても、嫁の意見や見解がまったくなく、ひたすら森に放尿しに行こうとしているキャラとして描かれていたのはかわいそうだったかも。旦那もパンイチだし。