身長2メートルの日本人形がチェーンソーで襲ってくるゾ!『恐怖人形』

久しぶりの更新。体調を崩していてなかなか映画も見られなかったです。

そしてこの映画はマジですごい。早く地上波で放送すべきだと思いますね(実況向き)。2019年の邦画『恐怖人形』。

若者たちが集められたキャンプ、謎の招待状、迫りくる殺人人形―といえば聞こえはいいのですが、なんだろう。このすさまじさ。ものすごくめちゃくちゃなストーリー、とにかくでっかい日本人形、棒読みの演技が重なるとこんなハーモニーが生まれるのですね。結果としてわたくし、だいぶ感動しております。

このドラマの新しいところは、日本人形を人間(2メートルくらいある気がするが)サイズにして、オカルト×スプラッターという斬新な組み合わせを作った点に尽きます。結果としてはほぼオカルトではないのですが、心霊写真のような、どことなくいかがわしさが混じったホラーです。日本人形なんだから人智を超えた力で襲ってくるかと思いきや、なんと肉弾戦だし。

ストーリーをまず振り返りたい。

冒頭からすごい。人形に向かって「大きくなあれ、大きくなあれ」と言っている女の子が出てきます。まずこの「大きくなあれ」の意味がマジでわからない。人形に大きくなってほしいなんて思ったことないもん。おそらく「人間になって、一緒に遊ぼうよ」みたいな意図の発言なのでしょうか、それにしてもホント、困惑するレベルの意味不明であります。

で、本筋なのですが、主人公の由梨と幼馴染の真人はお互いを意識しつつ、付き合うまでには至らない関係。カメラが趣味の由梨と行動する真人ですが、「おまえってさ、ずっと太陽追いかけてるみたいだよな」と突然言い出してさらにずっこける。太陽を追いかける女ってなんだよ。キラキラしてて眩しい女の子ってことか。と、後で気付いたのですが日向坂46の子が主演だからこそのセリフなのでしょう。

しかし由梨も「…そうかもしれない」とか言い出すのでもう、頭がとっとこハム太郎になりそうです。

そんな由梨と真人に怪しげな封筒が届くのですが、内容は10万円あげるからパーティにおいでという謎の招待状!奨学生の真人はお金になびき、由梨も付き合うことに。しかしこの男、5秒前に「いたずらだろぉ~」とか言っていたくせに、すぐに意見を変えるご都合主義であります。

そして当日、家を出ようとした由梨の家の前に、なぜか日本人形が置いてあるのであります。このシーンで「はっ!」って言っていてすこし笑ってしまった。いわゆるハッとするシーンで「はっ!」と明確に言う人、久しぶりに見た。

招待状指定の駅前に到着したら、既に6人の男女がいます。チャラ男の涼太、頻尿キャラの徹、ギャルの玲奈、お嬢様風のまどか、何か事情を知っていそうな美咲、ひとりだけおじさんの北沢(萩原聖人)が待ち受けているのですが、管理人(黒沢あすかさん)の車に拾われてキャンプ場へ。

撮影した写真に日本人形が映りこみ怯える由梨ですが、10万円はもらえたものの、パーティの主催者は不明、パーティは24時から、しかもキャンプ場は駅まで歩いて半日!だと知らされ、不安が募ります。しかも熊が出没するらしく、その罠が敷地外にはあるそう。(フラグ!)

その後もちょくちょく日本人形が出てくるのですが、徹の立ちション中に背後に立っていたのはイヤでしたね。排尿を覗くのはちょっと…

そして10年前にみんながこの地にキャンプ(子供のサマーキャンプ)にきていたことも明らかになります。謎の少女・日本人形を抱いたよしこちゃん(ガンバレルーヤの顔がチラチラするが別人です)もアルバムの写真に写っているのですが、美咲が「彼女は死んだ」と告げ、一同はシーン。

実は美咲はよしこちゃんと同じ団地に住んでいて、彼女がサマーキャンプ後に突然精神を病んだうえに引きこもり、昨年亡くなったことを由梨に教えてくれるのです。そ、壮絶!いや、状況的にどう考えてもいじめだろうに、誰も覚えていないのがマジで怖い。

さらに全員が当日朝に日本人形を目撃していること、玲奈の撮影した写真にも日本人形が映りこんでいたこともわかります。

まどかが怯えて建物から外に飛び出そうとすると、なんと玄関先にちょっと大きめの日本人形がちょこん。お、大きくなってる…!

そのうえロン毛のおじさままで登場してこちらもビビる。このオカルトの研究者・和田教授はなんとインスタを見てわざわざキャンプ場に来たらしいのですが、オカルト好きの大学教授がギャルのインスタグラムで情報収集してるなんて初めて知りましたね。で、このおっさんもキャンプ場に宿泊することになり、件の呪いの日本人形を預かってくれることに。

しかしこのおっさん、オカルトが実在すると証明するために「俺を恨め!」と言いながら人形にスタンガンを当て、さらには釘を打ちます。あまりの仕打ちに涙を流す人形。その涙?漏水?とスタンガンのせいで唐突に感電する教授ですが、スタンガンってスイッチ押さないと通電しなくない…?目を覚ましたら人形は消えています。喜ぶ教授。ここだけがオカルトっぽいシーンだけど、全然怖くないのがポイントです。もう、コントですよ。

電話がつながらなくなり(固定電話も)、それを修理するために管理人棟に消えた北沢さん。このあたりもフラグっぽいのですが、そんなことより!男性の皆さん、お待たせしました。

ここで突然のベットイン展開。しかも女の子同士。いやー、海外だとこの手のお色気シーンはありますが、この映画は突然チュッチュし出してそのままベッドインしてすぐ事後になってるのがすごい。まだ日本人形がちょこちょこ出張ってくるくらいなんだから、そこまで自暴自棄になるものなのかか。それとももともと同性が好きなんですかね。単なるスケベ?

こういう時に男同士で突然イチャイチャし出したら驚きますが…(実際、こういうシチュで異性愛者の人が同性愛に走ることってあるのだろうか??)

で、事後にとうとう身長2メートルくらいになった日本人形に襲われるカップル。2人とも斧で頭をかち割られます。日本人形に斧って… と思っていたらこの先おとなしく見ていられないゾ!

主人公はようやく、自分たちがよしこちゃんの人形を燃やしてしまった(とはいえ、由梨と真人は止めていた)ことを思い出し、真人と話し合います。しかし、ここで突然謎の歌が流れてきて、「え?誰か歌い出した??」と画面を凝視。ようやくBGMだとわかり、たまげました。シリアスなシーンに邪魔。

その一方、この映画でもっとも謎のキャラ・徹はとにかくずーっとおしっ〇しているのですが、立ちション中にじわじわ日本人形が近付いてきて絞殺されるという謎の殺し方で退場。おしっ〇の跡に血が飛ぶという、斬新だけどあんまり見たくない演出が光ります。

美咲は北沢を探しに行くも、死んでいるのを発見。そこで肉刺しフォークで襲われ、森へ逃げるも罠で負傷してそのままめった刺しに。

由梨にフラレた涼太はまったり歩いて登場した日本人形に剣道初段の腕前で対抗(とにかく角材で叩きまくる)しましたが、反撃されてしまい…!?

玲奈たちの様子を見に行っていた真人と合流する由梨ですが、その手が血まみれなので涼太と逃げる→涼太に襲われそうになってまた真人と逃げるというフラフラぶりを見せた後、隠れていたら涼太がくるが扉を開けたら手遅れだったというお決まりの展開。その後、真人は由梨をかばって切られてしまい、彼女はひとりで逃げるはめに。

そしてすっかり忘れていた和田教授と出会い助けを求めるのですが、彼は人形の味方に!しかし、さすがに日本人形も和田教授のほうをチェーンソーでお仕置き。ちなみに由梨が行く先行く先に今まで殺された人の遺体があるんだけど、これは人形がわざわざ配置したのかしら。建物の角からバターン!と倒れてくるのです。

結局捕獲された由梨が目覚めると、そこはお誕生日パーティの会場。遺体が並ぶなか、中央にはおそらくよしこちゃんらしき髪の毛フサフサのミイラが… そしてバースデーケーキとともに現れる恐怖人形。ちなみに人形はろうそくの準備まで頑張っていてえらいなあと思いました。

なぜか刺されたのに生きていた涼太は、カナヅチを使って鉄琴でバースデーソングを奏でた日本人形に頭をかち割られて死亡、なぜかこちらも生きている真人はチラチラ様子を伺っています。

で、犯人は?って話なんですけど、そもそもこの話はオカルトなのか殺人鬼モノなのかがあいまい。しかし、どうやらみんなを殺していたのは人間っぽくないか?という印象が強い。おそらく「いかにも怪しい管理人さん」「怪しい行動をとったようにも思える真人」よりも「なぜキャスティングされたのかわからない萩原聖人」あたりが犯人かなと思っていたら、やはり犯人は北沢(萩原聖人)。よしこの父親だった萩原聖人の復讐劇だったわけですが、このあたりの泣かせる演技はやはり素晴らしい。若いキャストに比べると格段に演技うめぇ。

結局まだ生きている(硬すぎない?)真人と脱出に成功した由梨を追いかけてくるフラフラの北沢。チェーンソーをもって走ってきますが、それを射殺したのがなんと管理人さん。猟銃を撃てるというフラグはあったのですが、このシーンから急に人間味が出てハキハキ話し出したから驚きました。なお、この管理人さんにも女の子の子供がいる(いた?)というフラグが立っていたのですが、もしかして熊の罠で死んだと言われていた人のはこの管理人さんの娘だったのかしら??

そして「こんな時なのに、お日様…」と太陽を見ながらつぶやく由梨。ごめんなさい、この子、何を言ってんだ?

ラストは、写真コンテストに真人の写真で入賞した由梨と彼のハッピーエンド。彼氏の写真をコンテストに出すってすごいね。しかし、今度はフランス人形に「大きくなあれ、大きくなあれ」とつぶやく少女が…というすごい終わり方です。

しかし北沢さん、日本人形の着ぐるみを用意して、サイズ違いの日本人形もいっぱい手配して、ターゲットの家の前に1体ずつ置いてまわったのか。マメだなあ。

もう、脚本も演出もむちゃくちゃなのですが、これを意図してやっていたなら天才だと思います。意図してやっていなくてもいい。笑えるけど、怖い。怖いけど、笑える。ホラー映画の本質を捉えているカルト作と言えるのかもしれないですね。