「エクリプス」

エクリプス

2017年のスペイン映画「エクリプス」を見ました。
結論から言うと、非常に素晴らしい映画です。思春期の女子高生が主人公ではあるのですが、家族を巻き込んで呼び出した悪魔に脅かされ続けるという恐ろしい内容。
怖いだけではなく、孤立していく女の子のチクチク胸が痛い感も素晴らしいです。

登場人物

ベロニカ:父が死に、バーを切り盛りする母の代わりに、妹弟3人の面倒を引き受けている。そのせいで、遊びに出かけることにできず、ロサとも距離ができていく。亡くなった父に会いたくて、父を呼び出す儀式をしてしまう。

イレーヌ:おしゃまな次女。
ルシア:口が達者な三女。
アントニート:末っ子の男の子。メガネでかわいい。

ロサ:主人公の友達だが、ディアナと仲良くなり、彼女をハブるようになる。
ディアナ:派手好き・男好きの女の子。ベロニカは彼女を嫌っている。

ネタバレ

1991年6月15日。警察に通報が入る。ある家で、何か恐ろしいことが起きたようだ。

3日前。妹弟の面倒を見ているベロニカ。彼女は日食の観察をさぼり、ロサと降霊の儀式を行う予定だった。だが、そこにディアナが来てしまう。彼女は、彼氏がバイク事故で死んだらしい(その霊を呼びたかったのか?)。

ベロニカは父と話したいと、儀式を始める(料理人なのか、パエリア持っている写真のパパ)。ベロニカは儀式中に突然倒れてしまう。
保健室に運ばれた彼女だが、彼女にはまだ、生理が来ていないこともわかる。

学校の窓のそばには、盲目のシスターが立っている。彼女は「シスター死神」と呼ばれている。

※「日食」「カラス」が、効果的に使われています。

指をケガしたベロニカ。突然、手が震えてご飯が食べられなくなる。しかも、その記憶もない。
ロサは彼女から離れていき、別の友達に夢中になる。

落ち込むベロニカ。勝手におもちゃが動いたり、風呂に入れていた弟が目を離したすきにヤケドしていたりと、不思議なことが続く。夜、突然テレビがついてさらに驚かされるベロニカ。
深夜には、妹と弟たちは棚に隠れている。何かがいるというのだ。ベロニカが目を凝らすと、裸の父がそこに立っていて、「ベロニカ、ベロニカ」と名前を呼ぶ。ベッドに戻れば、そこから生えてきた手が彼女を押さえつける。

儀式をした地下室へ行くベロニカ。シスター死神と出くわすが、彼女はベロニカのしたことがわかっているようだ。彼女は、父と交信したのではない。妹3人を守ってやれと言われるベロニカ。

下の部屋から、ベロニカにクレームが入る。部屋が揺れていて、振動がひどすぎるというのだ。だが、そんなことはしてない。さらに、ベロニカの部屋の下にある部屋の天井に、奇妙なシミが出てきているという。

夜、またおもちゃが鳴り出したり、天井からつるしたお守りが揺れたりするが、それが見えているのはベロニカだけのようだ。
怖くなったベロニカは居間で妹たちと寝るが、ドアの外に誰かがいると全員がパニックになる。
だが、それは母だった。母とケンカになるベロニカ。彼女が父親に会いたがる気持ちを、母も受け入れることができない(お母さんもつらそう)。

ベッドの上で騒ぎ始めた妹たちに、迷惑するベロニカ。だが、「うでちょうだい」と言い出した2人は、彼女の腕をもりもり食べ始める。弟のアントニーは、彼女の首を絞める。
ママは枕元に立ち「早く大人になりなさい」と呟く。そして、子宮に手かざしをする。

飛び起きると、ベロニカに初潮が来ていた。

ベロニカのそばにいる何かは、アントニートを連れて行こうとしているのだろうか。
ベロニカや妹たちのマットレスは、ひっくり返すとめちゃくちゃカビまくっている。

またシスター死神を頼るベロニカだが、彼女もベロニカと同じ、見たくないものが見えていた。だから、自分で目を潰したのだ。ベロニカが解放されるには、もう一度儀式をやりなおし、扉を壊すしかない。

だが、ロサを頼ろうとするも、彼女は男の子たちと遊んだりパーティしたりするのに夢中で、ベロニカを突き放す。後悔の表情を浮かべつつも、ロサはベロニカを引き留めない。
母もベロニカを理解してくれない。彼女は、自分でやり直すことにする。妹や弟たちの助けを借りて。

アントニートに、儀式の際に必要な魔法陣?を書く作業を任せるベロニカ。当然、アントニートは脱線していく(2~3歳だし…)。
妹2人とベロニカで、降霊術をやり直す。しかし、悪魔は帰らない。
歌うといいということがわかり、ベロニカは妹たちとかわいい歌を歌う。しかし、盤は破け、部屋にあったガラスは転がっていく。そして、ガラスが転がっていった先のドアをノックする。

ベロニカはその自分の部屋に行くが、マットレスの内側から伸びてきた手につかまれる。マットレスの中からは、続けて人の形をした何かが這い出して来る。
通報するベロニカ。だが、アントニートが捕まってしまう。

閉めきりになった風呂場に突入するベロニカだが、ビデに頭をぶつけてしまう。目を覚ますと、アントニートがいた。妹たちを探し、脱出を試みるベロニカだが、気が付いたら、彼女は何も抱いていない。アントニートはまた消えてしまった。

何かを察した母は走って戻ってくるが、妹2人しか見つけられない。
アントニートを探すために家に戻ったベロニカだが、彼女の後ろにぴったりついている悪魔。棚の中にいるアントニートは、ベロニカの言うことに耳を傾けない。
「お姉ちゃんがいいというまで、誰にもついて言ってはダメだよ」
という教えを守り、「ベロニカ、ベロニカ」と言い続けている。
そして、彼女は、自分の体の中に悪魔が入っていることを理解する。
(アントニートのヤケドも、彼女がやったこと?)

自殺しようとするベロニカだが、悪魔に首を抑えられ、口の中に侵入される。
警察が突入するが、そこには1人で浮き上がり、体を反らせて苦悶の表情を浮かべるベロニカの姿があった。ベロニカはそのまま、絶命する。

刑事は落ちている写真を披露とするが、彼女の顔の部分だけが燃え、焼け焦げていく。

感想

友達との関係性の変化、家族への苛立ち、大人になることの不安。
こういった感情とオカルトは親和性が高いですが、悪魔の憑依や儀式のせいで脅かされる子供たちを描いており、その丁寧さに好感が持てる。
次々と、というほどでもハイテンポでもないのですが、嫌なアプローチがいろいろ出てきて、心が休まりません。特に、妹たちに体を食べられるシーンや父の裸のシーンはコワイです。
惜しむべきは、DVDのジャケットでは内容がよくわからないところかな。ベロニカが殺人鬼なのか?と思っちゃったよ。