個人的に今年一番笑ったホラー「こどもつかい」

こどもつかい

さて、今度は「こどもつかい」を見てきた話。
清水崇監督といったら「呪怨」ですが、私のお気に入りは「輪廻」です。しかし、ここ数年は「戦慄迷宮3D」「ラビットホラー3D」など、技術スゲーけどこれ、怖い?と思わず隣の座席の方を揺さぶりながらたしかめたくなるような映画を経て、「キョンシー」という激渋映画を製作し、そして「7500」では壮大なコントのような雰囲気を楽しみつつ、それでも忠誠心を引きずりながら映画館に足を運んでしまったのであります。

「呪怨」では奥菜恵、伊東美咲、市川由衣などが登場し、「呪怨2」では酒井法子(酒井法子の出産シーンも入っているのだ。なんだか、いろいろ考えさせられるものがある)。
「戦慄迷宮3D」では蓮佛美沙子と前田愛、「ラビットホラー3D]では満島ひかり。
私もまだ見ていない「雨女」は清野菜名(すごくひっそり公開されたイメージ)、そしてこの「こどもつかい」では門脇麦。
どこまでが監督のリクエストで、どこまでが事務所や配給会社のリクエストかはわかりませんが、わりあい演技の湿度が高い女優を起用しているイメージがあります。
そして、この映画はやはり、門脇麦さんを抜きにして語れないと思う。それくらい、素晴らしい。

それにしても、この映画はあくまで「ネタ」として見てもいい。そのくらい笑ってしまった。
「トイレの花子さん」や「学校の怪談」のような子供に訴えかけるようなビジュアルもありつつ、それでいてテーマは『児童虐待』、しかし合間にタッキーのミニコントが挟まるという衝撃的な内容でありました。

登場人物

こどもつかい(タッキー):死霊と化したこどもたちを操り、勝手な大人たちに鉄槌を下す。
駿也:記者として働いており、尚美と同棲している。記者ってこんなに暇なの?と思わせる、謎のキャラクター設定。
尚美(門脇麦):保育士。要領が悪く、怒られてばかりだが子供が大好き。実は妊娠初期。彼女自身、辛い過去を抱えている。子供に呪われ、3日後に死ぬ運命を背負ってしまった。

近藤:駿也の友人。ショッピングセンター?のアンティークショップの店長。子供に呪われた1人。
漣:尚美の働く保育園の生徒。母の愛に飢えており、尚美にそれを求める。

そして衝撃的な内容をあえて語りたい。ネタバレありです。

「こどもつかい」についてダラダラと書く。

まず、子供を虐待している母の話からスタート。おそらく離婚したのか?汚い部屋にいる親子(なぜかこの映画、やたらとブラジャーが干してあるところがうつりこむ)だが、娘が消えてしまう。必死で探す母。しかし、すぐに見つかる娘。どこに彼女は消え、どこから出てきたのか?
そしてその3日後、母は喉の奥にハサミを突き刺され、死体で見つかる。
 このハサミの刺さった死体がベランダに落ちているところはなかなかに怖い。

その事件を調べている記者の駿也。親子の隣の部屋に住んでいる一家の娘に取材をしている。都市伝説めいた証言に、あからさまに眉をひそめている先輩記者。だが、駿也はこの事件が妙に気になる。
ちなみに、彼の職場が新聞社か雑誌社かは明かされていないのですが、一切職場のシーンは出てきません。

駿也の恋人の尚美は、保育士として働いている。気が弱く、とにかく仕事ができない尚美。彼女は受け持ちの漣くんが虐待を受けていることを知る。夜になっても迎えに来ない漣の家を訪れるが、母は出てこない。独断で家に漣を連れ帰る尚美。彼女たちは束の間の家族ごっこを楽しむ。
という、全国の保育士さんが怒り狂いそうな内容。さすがに連れ帰るのはNGな気がするのですが、どうなんでしょうか……???

保育園でも尚美を「ママ」と呼ぶ漣。尚美は戸惑う。そんな2人の前に、こどもつかいが姿を現す。
ジャングルジムの上に直立不動というストロングスタイルタッキー。

しかし、翌日、漣の母は死んでいたことがわかる。しかも、尚美がドアノブを回していたその扉の裏で、首を吊っていたのだ。漣は施設に行くことになるが、尚美にすがりつく。
「私はあんたのママじゃない!」
混乱した尚美は、しつこい漣を突き飛ばしてしまう。漣はひたすら暴れまくる。
両方の気持ちはわかるが、どちらにも感情移入しにくい展開にひたすら困惑。

駿也が偶然再会した、昔馴染みの近藤。彼はアンティークショップで店長をしていた。かなり繁盛しているようだ。しかし、彼は不思議な歌を口ずさむ少女につきまとわれていた。
近藤は万引きした少女を注意したそうだが、その時以来、7人の子供の亡霊が彼の前に現れるようになった。
近藤は帰宅して子供と遊んでいるが、自分の本当の子供が別の場所にいることに気が付く。次の瞬間、彼は子供たちに窒息させられる。息子の誕生日ケーキのために消灯している合間に絶命する近藤。その口には、人形の指が入っている。
と、この近藤のシーンが長めに続きます。何かが視界で動く→おそるおそる近付く→霊がいる→おののく→霊は消えて、みんなが怪訝な目で見ていることに気が付くというお決まりの展開。ではありますが、7人の子供たちはやっぱり怖いです。白目なのはコンタクト?と思いましたが、後でCGだとわかりました。ふと、ホラー漫画家の千乃ナイフ先生が書いた「死太郎くん」って漫画を思い出す。

駿也は偶然近藤のバッグを持っていたが、彼がビデオカメラで万引き少女を脅し、いたずらをしていたことを知る。
万引きが見つかって「さあ、服脱ごうか」(ニタニタ)みたいな展開がテンプレすぎて、なかなか気分が悪いです。

駿也が録音していた子供たちの歌を聞き、聞き覚えがあると感じる尚美。
2人はその歌を解明しようとするが、突然その横に漣が現れる。
尚美が呪われたことを駿也は確信する。

ということで、ここでおさらいなのですが
・子供は一瞬いなくなり、すぐに戻ってくる
・子供が恨みを抱いた大人の前に姿を現す
・その3日後に、必ずその大人は死ぬ
・子供は消えずに、そのまま生活を続けている
という、ややこしい展開。「ハーメルンの笛吹き男」をイメージしているのでしょうが、子供たちを連れてかないんかーい!まあ、子役の確保が大変だもんね。と無理やり納得。

尚美は自身も虐待児であった。そして、こどもつかいの力を借りて、母親を殺していた。

子供たちが口ずさんでいる歌はサーカス団のイメージソングだった(客引きの時に歌っていた)。
意味が分からないと思っていたが、方言ではなく、英語だったのだ(だから対して内容に意味はないっす)。

サーカス団があった土地に行き、そのサーカス団を立ち上げた地元の有力者の息子に話を聞きにいく駿也たち。老人は病院を経営していた父が、子供の頃から憧れだったサーカス団を立ち上げていたことを話す。そして、そのサーカス団で火事があり、7人の子供が死んだことも分かる。
彼らは廃病院に行き、真相を知るために中に入ることを決める。
しかし、病院の院長がサーカスを作るってすごいですね。

そして、やたらと雰囲気はいいけれど廃病院にはあまり見えない廃屋にたどり着く2人。
そこで人形遣いの写真を見つけるも、その人は外国人だった。駿也は、この人形遣いが持っていた人形に目をつける。それは、こどもつかいにそっくりだった。
しかし、尚美の前にこどもつかいや7人の子が現れ、襲い始める。

さて、ここでこどもつかいのファッションを堪能できるのですが、
・カッコイイ帽子&ロン毛
・左目に黒いシミという若かりし頃の大槻ケンヂスタイル、口元にも腹話術の人形風の線が入っている
・軍服の短ランに極太の赤と金と白のラメズボン
・黒猫を踏んづけてブーツにするという謎設定、ベルトにも猫のはく製(鳴く)
・それに黒マント
・肩にはからすのぬいぐるみ
・猫のしっぽ風のアイテムを振り回すと、スイスの民族楽器アルプスホルンのような笛(しかも黒ファーつき)にトランスフォーム
という、着こなしがクソ難しそうなコスチュームで登場するタッキー。
しかも人形も火事に巻き込まれているため、帽子をとったら頭部が焼け焦げているのです。というよりも、髪の毛が焼けて、頭皮はなぜか無事。あっ、タッキーの髪の毛がないように見える……とヤキモキしてしまいました。 しかし、芸人のゴー☆ジャスさんに激似のファッションであります。

結局、駿也と尚美は病院内を逃げまくるも追いつめられる。それを助けてくれたのは、先般のじいさん(サーカスを立ち上げた院長の息子。なお、病院長は既にこどもつかいの呪いで死んでいるらしい)。じいさんが何気に一番カッコイイ役なのである。

尚美は思い出す。自分は母を殺す時に、人形の指を母の荷物にすべりこませるように指示されたと。母はその直後だけ優しく、遊びに行く約束をしてくれた。だが、送り出したはずの母の死体は洗濯物の山の中から見つかった(なお、顔に線路のいたずらがきが描かれていた)。
そして、漣が自分に渡したおまもりの中にも、人形の指があったことを確認する。

駿也と尚美は子供のためにも頑張ると誓い合う。
と、このシーンが正直、すごく長い。駿也が「俺ってそんなに頼りないのかよ!」と今、このタイミングで言うことか?ということで尚美を怒鳴ったり、いわゆるイイオトコシーンなのでしょうが、これはファンの人向けなのかな?
そして妊娠の話が出たのですが、そもそも駿也と近藤が話しているシーンで、駿也が近藤に「子どもができた」的なことをぽろっと言ってしまうわけであります。そこがあまりにさりげなさすぎて「子どもができたって聞き間違いか?」と思っていたら本当だった。しかし、妊娠しているから手出しされずに助かったわ!とか、そのお腹の中の子をもらっていくぞ!とか、君の子供に生まれ変わるよ……とか、別にそういう展開もナシ。謎の妊娠設定。というより、全然つわりもないし元気だし、そのわりに転がったり走ったり忙しいし、元気な妊婦でしたね。

近藤の店にやってきた2人だが、こどもつかいに尚美がさらわれてしまう。
駿也はエスカレーターを転がり落ち、なぜか異常に汚れて(血なのか汚れなのかよくわからなかったけど、コントで小爆発あった後みたいだったよ)しまう。そのまま店で人形を探すも、とことこ歩き回る人形に翻弄され、レジではミニコントまで披露。
「ケガしてますね。ティッシュお持ちしましょうか?なーんてウッソー」みたいな、見ているだけで脳ミソがひきつる会話(でも、客席には笑っている人もいたので、人生いろいろだと思いました)の後、駿也はこれまた異常に長い猫のしっぽのようなものにからめとられ、首吊り状態になる。

その頃、尚美は夢の世界のなかで、真実を知る。
人形遣いのトミーは皆に愛されていたが、実は子供たちをさらって監禁していた張本人であり、子供たちの体に絵をかき、人形にしようとしていたのだ(本人もブリーフ1枚で体に絵をかきまくり、蝶ネクタイはつけっぱなしの変態紳士ぶりを披露)。
ちなみにトミーさん、ヘンリー・ダーガーの絵を所有しておりました(わかる人だけ震えて!)。
しかも子供たちの親がサーカス団に押し入って来たら、パニックになってガソリンをまき、証拠隠滅を図ろうとする(まあ、自分だけ生き残れてもパンツ一丁でボディペイントしている時点で……)。尚美にもつかみかかるトミーさんだが、それをこどもつかい人形が刺殺してしまう。
皆から愛されているトミーさんがド変態だったなんて……と思いつつ、こどもつかいの人形がなんで動くんだっけ?という疑問は解消されない。「トミーさんは人形に命を吹き込む名人だったから」ということだったらしいですけど。
そして事件の後、街の大人たちはけっこう死んだらしいのですが、その理由も考えてみればよくわからない。優れたエンターテイナーであるトミーさんをチヤホヤしたから?それとも死んだ子供たちにとって悪人だった?うーん、でも悪い人という描写はないんですけどねぇ。

そして、尚美は少年を1人だけ助けることができた。
が、その後に死んだはずの母親に責められ、追いかけられ、髪の毛を掴まれる。
(ここでCMでも有名な7人の子供がアパートのいろんなドアから顔を出すシーンが出てきます)

さらに尚美は大人たちが並べられている空間にたどりつき、子供たちのおもちゃになるように命じられる(とはいえ、立ち尽くしているのみだが)。
そこには冒頭の虐待母や近藤の姿もあった。ちなみに、トレンチコートにブリーフのみという絵にかいたような昭和の変態もいました。

だが、こどもつかいが連れてきた漣くんに心から謝罪し、漣もそれを許す。漣は中指を回収してこどもつかいに返す。そのせいで、彼の力が弱まってしまう。
そしてそこに現れたのは駿也……ではなく、サーカス団を立ち上げた病院長の息子のじいさんだった!
彼は尚美の身代わりとしてそこに留まるという。彼自身が、尚美が救出したサーカス団火事事件の生き残りの少年であり、こどもつかいの人形を捨てて村の呪いを断ち切った張本人だった!
しかし、突然じいさんが「話は聞かせてもらったよ」みたいな感じで登場するので、どういうことなのか驚きました。じいさん、なんでこどもつかいの世界にリンクしたんだ。そして、その役は多分主人公のやる役だと思うのね。

尚美と漣は、子供の姿に戻ったじいさんや自我を取り戻した子供の幽霊たちに助けられ、現世に戻る。

駿也は襲われ続けていたが、そこに尚美と漣が裏世界から戻ってくる。突然、やる気を出して自分の首を絞めているしっぽを引っ張る駿也。こっちの世界にやってきたこどもつかいはバランスを崩す。尚美がマントをはぎとり、滑空していたこどもつかいはますますバランスを崩す。
もう距離感がわかんねぇよ!いつまで空中に留まるんだよ!ずっと滑空してるけどスピードどうなってんだよ!とイライラするなか、蓮がこどもつかいを突き落とし、彼はバラバラになり、人形に戻る。

駿也と尚美は引っ越しをしている。それと手伝っている漣(彼が引き取られたのか、それとも施設にいるのかは明言されない)。尚美のお腹は大きくなっている。駿也はこどもつかいの人形をまだ持っていて、それをトランクに入れてテープでぐるぐるまきにしている(ただし、捨てるシーンは描かれない)。
突然、漣は引っ越しの手伝いを抜け出してどこかに向かう。ある団地の一室の前に、彼はこどもつかいの人形の中指を置く。彼が立ち去った後、虐待をされているらしき子供が顔を出し、指を拾う。その子供は引っ張られるように、また部屋の中に姿を消してしまう。

どこかの世界でこどもつかいの人形が大きなオルゴールをまわすなか、こどもつかいの本体は崩れた顔もそのままに、人形のようにこわばった体を動かさないまま、サーカスの歌を歌い続けている。

とにかくホラーにしては怖いシーンが少ない。意外にも「後ろからバッ!と幽霊が出てくる」みたいな、驚かせるシーンは一切なし。突然大きな音で驚かせるのもなし。おそらく映画を見るであろう若いファン層を考慮したのでしょうか。ホント、そういうものすらないという悲しみ。
そして、ちょっとしたギャグっぽい会話とか、こどもつかいの人形だと思ったら別の人形だったゼ!びっくりさせんなよ!と人形を軽く殴る、というような、表情筋が死滅しそうなぬるいシーンも多くて泣きそうになる。

あと気になったこと。こどもつかいのキャラクターが、見た目がボリュームあるのはもちろん、黒猫とカラスの能力を両方使える、みたいな設定(黒猫がやや多め)がちょっとこってりしているというか……ホラーでは既視感がありすぎる動物をダブルで使う意味とはなんだったのだろう。それでいて、「黒猫がじっとこっちを見ている」「カラスに囲まれる」といった、動物を交えた攻撃とかはないし。
ただ、この「不気味なイケメン」枠って、たとえば少年隊の東山さん、及川ミッチーさん、稲垣吾郎さんあたりが演じてきた印象が強いですけど、今後誰が踏襲していくのだろう?というのは気になる。30代で王子様キャラ(もちろんタッキーも王子様だけど、どちらかというと健全なイメージが強すぎて)で、コスプレをしてもそれを着こなして自分のものにすらしちゃう男性俳優って、今後誰になっていくのでしょうね。

と、関係ないところで話が完結した。