「マギー」

magi

2015年のアメリカ映画「マギー」。
「娘として守るのか、ゾンビとして殺すのか」というキャッチフレーズからもわかるように、ゾンビ化している娘を殺すかどうするか悩み続ける話。
完全に個人的な見解ですが、テーマのわりにパンチがないお話。ゾンビに襲われる恐怖ではなく、生存者の中にもゆるゆるとゾンビに感染するものがおり、彼らは時間をかけて変化していく。彼らは施設に預けられるが、そこでは人間らしい死は迎えられない。死にゆく者たちをかばい、隠蔽する家族が後を絶たないなか、主人公も選択を迫られるひとりとなる。
グレーの空、暗い部屋、陰鬱な中で揺れ続けるブランコと真っ白なマーガレットの花。と、景色はキレイだし雰囲気も陰鬱でなかなか良いのですが、肝心のシュワルツェネッガーがシュワルツェネッガーなので……とはいえ、主演はアビゲイル・ブレスリンちゃんにほかならないのですが。
スピーディな展開やコミカルな会話なし、ひたすら鬱々としているお話です。あと、親子愛の描き方が少女漫画みたいだった。

あらすじ

アーノルド・シュワルツェネッガーが徐々にゾンビ化していく最愛の娘を守ろうと苦闘する父親を演じる異色のゾンビ映画。共演は「リトル・ミス・サンシャイン」「ゾンビランド」のアビゲイル・ブレスリン。監督は本作が長編デビューのヘンリー・ホブソン。
感染するとゾンビ化してしまう恐ろしいウイルスが蔓延する近未来。ある日、アメリカの田舎町に暮らす16歳のマギーも感染してしまい、感染者を隔離する特別病棟に収容される。しかし父のウェイドはマギーを捜し出し、我が家へと連れ帰る。マギーのゾンビ化がゆっくりと進行する中、彼女を隔離しようとやって来た地元警察とも激しく衝突するウェイドだったが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=355091

ネタバレ

農作物を燃やしている畑。ラジオのニュース。病院に車を走らせるウェイド。
ゾンビウイルスに感染した娘を引き取りに病院に入るウェイドだが、その特別病棟には気を滅入らせるには充分な雰囲気が漂っている。

娘のマギーを連れ帰るウェイド。途中に立ち寄った雑貨店では、ゾンビ化した男がいる。彼が誰なのかもわからない。

農場に娘を連れ帰り、再婚した嫁や息子、娘と再会させるウェイドだが、ゾンビとなったマギーによそよそしい妻。ぎくしゃくしている家族。

マギーはひとり、ブランコに乗っているがそのまま転倒する。指が変な形に折れ曲がっており、妻はそれを見て悲鳴を上げる。マギーはパニックになり、指を切り落とす。トマトを切ったまな板の上に、黒い血だまりが残っている。

森に走るマギー。だが、そこにゾンビの親子が現れる。ウェイドが彼らを射殺するが、それは彼の隣人のゾンビだった。

夜、その隣人妻のボニーがやってくる。彼女は感染を隠すため、夫と子をかくまっていたのだ。ウェイドの案内で死体を見つけ、号泣するボニーはそのまま警察に連れていかれてしまう。

診察を受けるマギー。彼女の瞳は白く濁っている。知り合いの医師に薬を処方してもらうが、彼からアドバイスを受けるウェイド。そのうち、マギーは食べ物を拒否して、人を食べたくなってしまうだろう。彼女にするべき対処法は3つある。①病棟に隔離②隔離所で投与される薬を打つ。だが、これは痛みを伴う。それでも家族と一緒にいられるだろう③ひとおもいにやる。ウェイドは現実を受け入れられない。

マギーとウェイドは久しぶりに一緒に時間を過ごす。

だが、真夜中。マギーは自分の腕に何かを感じる。蛆がわいていたのだ。それを払い落とし、彼女は泣き出す。

マギーの友達のアリーが家にやってきて、彼女を誘い出す。マギーが好きだったトレント(彼もゾンビ化している)も彼らの集まりにやってくる。若者たちは、感染者を隠すことについて話し合う。マギーとトレントは疎外感を感じる。彼らはこっそりキスをする。

マギーは帰宅して、妻と一緒に過ごす。「食べ物のニオイがする」というマギーだが、妻は誰も何も作っていないことを知り、(つまり、マギーは妻のニオイを嗅いで「お腹が減った」と言ったということになる)マギーがいよいよゾンビに近付いていることを知る。

マギーに、トレントから電話が入る。彼は隔離所に連れていかれることになったのだ。連れていかれたトレントを、止められなかったマギー。

マギーは家に戻り、衝動的に銃を持ち出して森を走る。だが、檻の中に入っていたキツネを見て立ち止まる。

ウェイドが帰宅したところに、マギーも戻ってくる。だが彼も血まみれだ。妻はウェイドに「マギーを隔離病棟に入れるべきだ」というが、彼は反対する。ウェイドは視察に来た警察も追い返す。

ウェイドはマギーを連れ出し、彼女のために植えたというマーガレットを見せる。
その一方で、彼はマギーのために隔離所で使われている薬を入手する。

だが、マギーは瀕死状態にあった。彼女は内線電話を使って、義理の弟と妹に感謝の気持ちを伝える。

ウェイドはマギーを見張りながら居眠りする。その父のニオイを嗅ぐマギー。彼はマギーが立ち去った後、目を開ける(マギーの奇行を寝たふりをしてスルーした)。
ウェイドは銃の準備をする。
だが、マギーは家の屋根の上に立ち、手を広げている。ママの記憶。美しく咲くマーガレット。彼女はそのまま飛び降りる。マギーの瞳には、どんどん地面が近付いてきているのが見える。そして、すべてが真っ白になっていく……。

感想

・シュワちゃんじゃなくても成立する映画だし、ゾンビじゃなくても成立する映画ってのがどうも……おそらく、この映画の話を最初に聞いた時点では「シュワちゃんVSゾンビ!?面白そう」だった人が多いのではないだろうか?ゾンビぶっとばしてほしかった。
・ただ、アビゲイルちゃんは相変わらず演技がうまい。
・娘のためにマーガレット植えるとか、娘と思い出の曲を聴いて語り合ったりするなんてリリカルですね。最後、まっしろになるのは「アイアムアヒーロー」と同じ終わり方。こっちも白目になるってば。
・全体的に景色とか空とかはキレイなのですが、それ以外の見どころが私は見つけられなかったぞ。あと、あんまりポスターとかチラシのビジュアルが素敵じゃないですね……。